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眠りひめ
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うわ、めっちゃわかる……。休みの日に誰もいない家であのグループラインの楽しそうな写真見て「楽しそうでよかった」って思う自分と、なぜか胸がチクチクする自分が同時にいる感じ、すごくリアルだった。しかもあとから柔太朗から個別で連絡きて、思わず笑顔になっちゃうとこ、保護者みでありキュンとした。ドラマの話で自然に距離が縮まるの、いいなあ。
ドラマの撮影が雨で延期になり、思いがけず明日は丸一日オフになったと昨夜マネージャーから聞いて、久しぶりにアラームをかけずに眠った。
直前まで何か夢を見ていたような気持ちのまま意識が浮上して、開き切らない目をしかめながら枕元のスマホを手探りで探す。
11時過ぎ。
思ったより寝てしまった。
何件か溜まっていた通知の中から、1番上にあったグループラインを開く。
一番新しい投稿は舜太だった。
『柔と買い物きたよー!』
添えられていた写真には、大きな鏡の前で色違いのジャケットを両肩に掛けられながらすまし顔の柔太朗と、その隣でフィッティングしている店員さん風の無駄にキリッとした表情の舜太が写っている。
『どっちがいいと思う?』
仁人がすぐに、
『変顔ダル笑』
と返していて、その次に太智の
『ちゃんと服見せる気ないやん😂』
が続いていた。
思わず笑う。いつものやり取りだ。
画面を閉じようとしたけど、もう一度写真を開いた。
……似合ってるな。
白いシャツに、淡い色と濃い色のジャケット。
迷う気持ちもわかる。どちらも本当によく似合っていた。
指先で写真を拡大して、柔太朗の加工してないのに透き通るような白い肌や、小さくて整った顔をまじまじと見て、そのおかしさに気付いて慌てて閉じた。
2人が一緒に出掛けるのは、別に珍しいことじゃない。
舜太と柔太朗は今のグループに入る前から一緒の仲だ。
たまの休みの日に連れ立って出掛けることだって何度もあった。
今さら気になるようなことじゃない。
そう思いながら寝過ぎた重い体を起こして適当に歯磨きを終え、今度はソファに寝転ぶ。
テレビをつけると昼の時間帯の情報番組がやっていて、何となく眺めていたけど、10分も経たないうちに消してしまった。
静かだ。
1人きりの家って、こんなに静かだったっけ。
⸻
溜まっていた洗濯物を片付けて、掃除機をかけたあと、冷蔵庫を開ける。
昼飯どうしよう。
頼むのも面倒で、適当にパスタを茹でながらまたスマホを手に取る。
通知はない。
別に誰かを待っているわけじゃない。
それでも無意識に、メッセージアプリを開いてしまう。
ちょうどそのとき、グループラインに舜太のアイコンが飛び込んできた。
新しい写真が1枚。
今度は柔太朗がセレクトショップのショッパーを持って笑ってる写真だった。
続けてメッセージが届く。
『柔が、さっきのジャケットの色どっちか決めたけど、教えてほしい?って聞いてる笑』
『どうでもよすぎる』
仁人が即座に返していて、また笑う。
笑って、そのまま閉じた。
何て返せばいいかわからなくて。
楽しそうだな。あいつらが息抜きできたみたいでよかった。
そう思っただけなのに、なぜかその写真が頭から離れなかった。
⸻
夕方近くに、スマホが震えた。
画面を見ると、柔太朗からだった。
『家帰って、この前はやちゃんに教えてもらったドラマ見はじめたよ』
その下に、泣いている子犬のスタンプがひとつ。
思わず笑ってしまって、すぐに返信を打つ。
「まだ1話だろ」
送った数秒後に、
『しかも最初の15分で泣いちゃった』
「早すぎ」
『はやちゃんほどじゃないけどね』
やり取りはそれだけだった。
たった数分。それだけなのに、スマホを置いたあとも、無意識に口元に笑みが残っていた。