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「少女レイ」

5 - 第5話 透き通った世界で愛し合えたら

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2024年04月04日

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「溺れていくその手に、そっと口吻をした」


5月。

怜が来なくなって、あっという間に夏が来た。

もう3年生になったよ。怜。


私のせいとは言えど、ここまで傷つけるなんて思ってなかった。

私は複雑な気持ちで、蝉の声に耳を傾ける。


夏の朝。みんなの話し声がうるさい。

私がぐっと下唇を噛み、トイレに行こうとした時。


ガラッ。


教室のドアが、さりげなく、目立たぬように開く。


「お、おはよう。奈々ちゃん」


ボブヘアーの少女は、私をドアから覗く形で、こっちを見ていた。


夢かと思った。

肌の白い少女は、外に出ていなかったからか、より一層肌が白くなり、いじめられていたショックで食欲がなかったのか、もともと細かったが、もっと痩せていた。


カバンのキーホルダーは、学校を休む前と何ら変わらない。

水色のくまが、楽しげに揺れていた。


私はもう一度、その人の顔に視線を映す。


はにかみながら私を見つめる、純粋で綺麗なその目は、


怜だ。


「怜っ!!!!」


私は思わず、怜に抱きつく。

抱きしめたその肩は、骨骨しく痩せていた。


「寂しかったよ〜!!!!」


私は怜に抱きつきながら泣いた。

怜は笑いながら、また、私を抱きしめる。

ああ。この声が聞きたかったんだ。


私は心に空いた穴を塞ぐように、惨めな自分を隠すように、怜を抱きしめていた。



それから。また怜のもとに人がたくさん集まるようになった。

慰めの言葉をかける人もいれば、外見の変わりようについて話す人、怜がいなかった間、どんなことをしていたかを話す人もいた。


憎たらしい。私が1番に怜のことを思っているのに。

みんなは、2年生の三学期のことを忘れたかのように、怜にべたべた寄り付いていた。

怜は、それをなんとも思ってなさそうに、楽しげに話している。


なんで?その柔らかい、美しく澄んだ瞳は私に向けられるべきなのに。

ひどい。ひどいひどいひどい。


こうなるのなら、学校に来なくていいのに。

私だけの、怜でしょう?


私はもう一度、犯行に移すことに決めた。


次の日の朝。

私は朝一番に来て、怜の机にゴミを散らばいた。


ひどい。クラスメイトのあいつも、あいつも、あいつもあいつもあいつも。

みんな怜のことを無視していた癖に!!!


そんなひどいやつらは怜に近づく権利はない。


私は憎しみと憎悪を込めて、机と椅子にゴミをばらまいた。


ばらまいた後。私は教室の鍵をかけ、カバンを背負ってもう一度学校の外に出た。

私が犯人だってばれたらすべてが台無しになる。

こんなめんどくさい事をしてでも、怜を私のものにしたかった。

私は、生ぬるい風を浴びながら、玲が来るのをじっと待っていた。

その時。ガシャン。何か物音がして、私は急いでそっちに向かった。

そこには、1匹の黒い猫がすわっていた。

可愛い。私は黒猫に手を伸ばすと、猫は、シャーッと威嚇し、私の手の甲を引っ掻いた。

「いたっ」

手の甲からは、生々しく引っかかれた痕から血が出ていた。

………

痛さとイラつきが混ざり、私は黒猫を蹴る。

猫は、ニャ゛ッと鳴いて、近くの茂みに飛び込んで行った。

私は空を仰ぐ。なんか、変な気持ち。

腹立たしい気持ちを抑えながら、私は口の中が、だんだんと乾いてくるのを、

感じていた。

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