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夏休みが始まった。
優馬は、莉子に会えない日々を寂しく感じていた。
毎日、校舎裏のベンチを通り過ぎるたびに、莉子が座っていた場所に視線を向けてしまう。
莉子から教わった花言葉を思い出し、街で花を見かけるたびに、莉子のことを考える。
そんなある日、学校の先生から莉子の病状が悪化し、入院したことを知らされた。
優馬は、胸が締め付けられる思いだった。
莉子は、いつも明るく振る舞っていたけれど、病気と闘っていたのだと改めて痛感した。
「…行かなくちゃ」
優馬はそう思い、莉子に何を持っていけばいいか、真剣に悩んだ。
今まで莉子が自分に花束で物語を語りかけてくれたように、今度は自分が莉子に物語を届けたい。
優馬は、莉子との会話を思い出しながら、花屋に足を踏み入れた。
花屋の店先には、様々な花が咲き乱れていた。
優馬は、花言葉を調べたノートを手に、慎重に花を選んでいく。
莉子が教えてくれた「希望」のアネモネ、そして、優馬が莉子に伝えたい「君を待っている」という花言葉を持つ花。
優馬は、花屋の店員に「花束を作ってください」とお願いした。
花屋の店員は、少し驚いた顔をしながらも、優馬が選んだ花を丁寧に束ねてくれた。
出来上がった花束は、優馬が思っていたよりもずっと温かく、優しかった。
病院の病室を訪ねると、莉子は窓の外を眺めていた。
顔色は少し悪く、夏の日差しが降り注ぐ中、どこか寂しげに見えた。
「莉子さん、こんにちは」
優馬が声をかけると、莉子はゆっくりと振り返った。
「優馬くん…どうしてここに?」
「先生から、入院したって聞いて…これ、よかったら」
優馬は、少し照れながら花束を差し出した。
莉子は、優馬が差し出した花束を、両手で受け取った。
優馬が選んだ花々を見て、莉子は目を潤ませた。
「この花は…アネモネと、トルコキキョウだ。トルコキキョウの花言葉は…『希望』と『優美』」
莉子は、優馬が選んだ花言葉を言い当て、優しく微笑んだ。
「僕が、莉子さんが退院するのを待ってる、っていう意味も込めたんだけど…」
優馬は、恥ずかしそうに付け加える。
莉子は、花束を胸に抱きしめ、静かに涙を流した。
「ありがとう、優馬くん。こんなに素敵な花束、初めて…とっても、嬉しい」
莉子の微笑んだ後つーっと頬に流れる涙を見て、優馬は胸が熱くなった。
莉子のひたむきさに心を動かされ、無気力だった自分を変えようと決意した優馬。
この日、優馬は莉子に、そして自分自身に、未来への希望を込めた花束を贈ったのだった。
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誤字等ありましたら、教えてくださると嬉しいです。感想なども大歓迎です!
また、今週中に時間をおいてこの小説は投稿し、完結します。最後までどうぞお楽しみくださいませ…