⚠BL
新キャラ
中村 蘭 (α)
佐久間 大智 (Ω)
※2人は番になります。
『お疲れ様。幸』
『おっつかれぃ』
中学に入って、仲良くなった2人。
猪突猛進な、大智。
冷静沈着な、蘭。
真逆な性格の2人だが、とても仲が良く、いつも一緒にいる。
バース性検査の同意書は結局出せなくて、勝手に名前を書いて提出した。
担任の先生に、不審に思われたらしく提出してから、本当にこれでいいんだなと確認された。きっと、母にも電話がいったのだろう。その日の母はいつも以上に元気がなかった。
『そっちこそお疲れ』
『バース性検査、いざ自分がやってみるとちょっと変な感じすんな〜』
『なんで?』
『だってさ、俺らまだ中学生だぜ?』
『男とか女とかですらやっと意識し始めたってのに、第二性まで知ってついていけるかって思わね?』
こちらを見ながら、頬づえを着いて言った。
『そうだね』
確かにそうだ。
中学生が背負うには、まだ理解しきれないことだって沢山ある。
『私は、大智がなんでも一生着いてく。』
『うん。俺だって、一生蘭と一緒にいる。』
『……あのさ、ここ教室。』
『私はそんなこと気にしない』
『大智は?』
『俺も、気にするわけない』
2人は、よく自分たちのことを運命だと言っている。
バース性が誕生してから、「運命の番」という言葉が噂されるようになった。言葉の通りの意味だが、都市伝説に近く、実際に目にしたことは無い。
本能的に相手を運命だと感じる。
俺は、瞬にときめいたことあるか?
『は〜い、みんな席戻って〜』
教室に先生が入ってくる。
『今日の検査結果は、来月に出ます。プリントを配るから絶対保護者の方に見せること!わかった? 』
強調されたこの言葉がグサッと刺さった。
『はい』
『それじゃあ皆さようなら』
『さようなら』
『掃除するから各自指定の場所に行ってねー』
ガタガタと机を一斉に運び、掃除当番じゃなかった俺は昇降口へ向かった。
『幸!』
振り返ると、そこには瞬がいた。
『どうしたの?』
『いや、今日部活ないから、一緒に帰ろうかなって』
もじもじして、恥ずかしそうに話す。
『いいよ。』
『ほんと?嬉しい!』
子供みたいにはしゃぐ彼が少し可愛く見えた。
『それでね!先生が差し入れくれたの!』
『土日に部活あるの結構大変だけどさ、後輩もみんなかわいいし、やっぱ楽しいや』
瞬がひたすら喋って、それに愛想の無い返事をするだけの会話とも言えない時間。
それの状況に嫌な顔ひとつせず、俺がボソッと呟いた言葉に一喜一憂する。ただそれだけ。
『そう』
『幸は?最近どう?』
『俺は、特にないから』
『そっか』
『そ、そうだ』
『あのさ、バース性の検査、どうだった?』
『母さんが、双葉さんから連絡かえってこないって心配したたから、もしかしたらちゃんと話せなかったんじゃないかって。』
『……』
答えられなかった。
いつもの帰り道に、君がいるのが久しぶりでいつもより足取りが軽かった。なのに、結局俺は変われない。
第二性が俺を縛り付ける。
1歩踏み出すのがいつもより怖かった。
ずっと一緒。
ずっと友達。
それ以上にも、それ以下にもならない関係。
きっと君はそれを望む。
たとえ、最悪の結果じゃなくても、君は囚われたままだろうし。
最悪な結果だったら、これから俺たちの溝はもっともっと深くなる。
『俺は、瞬がどの選択肢を選んでも、瞬を一番に考え、最適な行動をする。』
『約束するよ。』
『瞬から人が離れていっても、絶対一人にはさせないから。 』
『安心して。』
あの頃のように手を取って家までの道を歩く。この言葉に嘘も偽りもない。
君のためなら、なんだってするよ。
もう二度と手を放したりしない。
『安心して』
少し痛いくらい引っ張られている自分の腕を見ながら、彼の言葉の意味を考えていた。
俺が橘家を出る日、瞬の表情が険しかった。
行かないでくれと言っているような顔。
事実。前日まで、本当に行くの?と悲しそうな表情を浮かべていた。
家族と住みたい気持ち。
橘家と住みたい気持ちがせめぎ合っていた。
うんめいで結ばれたふたりに入る隙間はない。それは実子でも変わらない。自らの首を締めるようなことをした。
しばらく黙ったままだった幸が口を開いた。
『俺は、今がすごい好き』
『母さんと、父さんと一緒に暮らしている今が何よりも幸せ』
こちらを見ない。
握られている腕が痛いくらいに力を入れている。
この言葉に嘘はないはず。
『瞬、手痛い』
『瞬?』
何度呼びかけても反応しない瞬
『やっぱり、最初っから』
『俺たちのところで暮らすべきだったんだよ』
曇りが晴れたような顔をした瞬は、そのまま俺を自分の家へ連れていった。
『瞬!離して!』
『ねぇ!瞬!』
『うるさい』
肩を強く押された俺はそのままベットへ倒れ込んだ。
『はやく、俺の物にしないと。』
怖い
初めて感じる恐怖
固まっていく身体
逃げなきゃいけないのに金縛りにあったかのように身体が強ばる
瞬が獣のように感じた
『やめて、しゅん』
『おねがい』
必死に抵抗しても、運動部の力には叶わない
『はやくヒートになってよ』
『え』
耳元で囁かれたその一言に、言葉を失った。
『意味ないから』
『今噛んでも番えない』
『は、?』
うなじが見えるように体をひねらされ、瞬は馬乗りになって俺の身体を固定した
『まって、やめて!』
『やめて!瞬!』
ヒートじゃない
だから番にはならない
でも、後悔したくない
だからおねがい
『いや』
ガリ
鈍い音
痛むうなじ
触る舌
荒い呼吸
声が出ない
もう
元には戻れない
『幸』
『愛してる』
その言葉を聞いて、安堵してしまう自分。
『俺の元へ戻ってきて?』
暗くなっていく視界に僅かに映ったのは、瞳孔が開き、頬を紅く染め高揚する瞬。
それと
扉を少し開けて、声を殺すように口元を抑えて見ていた花だった。
『おかあさん、早く帰ってきて、お兄ちゃんが、幸にぃを』
全身が震えてて、上手く言葉を出せない。
『瞬と幸がどうかしたの?』
『わかんない!わかんないけど、幸にぃ嫌がってた。泣いてた』
母の声を聞けた安堵で、涙が出てきて止まらない。
『たすけてって言ってた』
そう言った瞬間、電話の向こう側からガタッと大きい音がして、すぐ行くからねと言われて電話を切られた。
30分もかからないくらいで家に帰ってきた母。でも体感は1時間も2時間も経っていた。
意識を失ってしまった幸を抱きながら、一緒にベットに横になっていた。首からの血はもうとっくに止まっててカサブタになり始めていた。それを優しく撫でては少しの優越感に浸っていた。
玄関から音がした。
そういえば、今日って家に誰もいないんだっけ。
『あ』
花が居るはず。勝手に家から出るような子じゃない。なら帰ってきたのは。
足音が部屋に響いている。
床が抜けるんじゃないかと思うような音。
咄嗟に幸を守るような体制になった。
『瞬!』
扉を開けて入ってきたのは、母だった。
『その手を離して』
『いやだ。』
『幸を離しなさいって言っているの』
俺の幸だ。
やっとこの手の中にいるのに。
こんなにも、落ち着いた表情で、抱きしめ返してくれているのに。今更取られるなんて絶対に嫌だ。
幸を取られないよう、強く強く抱きしめた。
母に向ける視線は、きっと鋭く苛立ちを隠せていなかっただろう。きっともう終わった関係だ。今更何も気にすることなんてない。
ちゃんと幸に想いを伝えられないまま、この手は離せない。
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