テラーノベル
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キャラ崩壊があると思います
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その日は、やけに風が強かった。
体育館の窓が、かすかに揺れている。
ボールの音はいつも通り。
ドン、ドン、と規則正しく響く。
でも、そのリズムの中に、わずかな“揺らぎ”があった。
「もう一本!!」
田中の声が響く。
誰もが動く感じ
はずだった。
その瞬間。
空気が、ふっと軽くなる。
音が一瞬だけ遠のいた。
「……え?」
山口が呟く。
視界の端。
コートの中央。
そこに──
“立っていた”。
オレンジのユニフォーム。
見慣れた背丈。
跳ねるような姿勢。
そして、
笑っていた。
日向翔陽が。
誰も、すぐには動けなかった。
理解が追いつかない。
現実が、少しだけ遅れている。
「……は?」
田中の声が震える。
「え、ちょ……」
ボールが落ちる。
ドン。
その音で、現実に戻る。
影山は、動けなかった。
_目の前の“それ”を見ている。
でも、理屈が追いつかない。
日向は、何も変わっていなかった。
あのまま。
何もなかったように。
そこにいた。
「チィッス」
軽く手を上げる。
「ただいま」
空気が、壊れる。
「ふざけんな!!」
田中が叫ぶ。
「お前!!どう行ってたんだよ!!」
日向は笑う。
「ちょと、寄り道」
山口が震える声で言う。
「……寄り道ってレベルじゃないでしょ」
月島が目を細める。
「……幻覚?」
「違う!!」
西谷が叫ぶ。
「触れるぞ!!これ!!」
田中が日向に飛ぶつく。
「お前マジで!!」
「痛い痛い!!」
でも、そのやりとりは現実だった。
影山は、まだ動けない。
ただ見ている。
日向が、視線を向ける。
その目が、合う。
一瞬だけ。
静かになる。
「影山」
名前を呼ばれる。
「……遅い」
影山の声。
日向は笑う。
「悪い悪い」
その笑顔は、昔と同じだった。
でも、
次の瞬間。
ふっと、揺れる。
空気が歪む。
音が遠のく。
田中の手が、空を切る。
「……あ?」
日向の輪郭が、少し薄くなる。
「待って!!」
山口の声。
「おい!!」
影山が、一歩踏み出す。
手を伸ばす。
届く。
でも、
指先をすり抜ける。
「……っ」
日向は、少しだけ困った顔をする。
「ごめん」
その声だけが、はっきり残る。
「またな」
風が吹く。
その瞬間。
そこには、もう何もなかった。
静寂。
ボールが床に転がる。
コロ……と。
誰も動けない。
でも、
「……今の」
田中が呟く。
「いた、よな」
誰も否定しない。
山口が、小さく笑う。
「……いたね」
月島が目を閉じる。
「最悪」
でもその声は、少しだけ柔らかい。
影山は、手を見ていた。
さっき、確かに触れた感覚。
「……いた」
短く、そう言う。
コートの空白は、まだある。
でも、
さっきより、少しだけ小さい。
どうでしたか?
また、見てくれるとうれしいです!
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