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「ーーっん、はぁっ、らめってぇ♡」
「へばるな、まだイけるだろ」
「しんっじゃうぅ、からぁ…んっ!」
四つん這いになる男の髪を掴み、後ろから激しく突き上げる。
獲物を逃さないようにと、もう片方の手掌で力の抜けた腰に爪を食い込ませる。
所々掻き傷があり、これまでの情事激しさを物語っていた。
「〜っんぅ、さえっ!さえぇ♡♡」
暴力的までな快楽を必死に逃がそうと、背中を大きく反らせて喘ぎ鳴く。
自分の世界に居る、たった二人だけの兄と宿敵が互いの身体を貪り喰い、肉欲を満たす姿がそこにはあった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
U-20杯後、糸師凛はスペインへと旅立った。
糸師冴、実の兄も所属する名門レ・アールにである。
「ブルーロックトップ、U-20杯では日本代表を務めた糸師凜…ってみんなもう知ってるか。」
頭を掻き、周知の経歴をぽつぽつ話す。
くだらねぇ分かりきったことダラダラ話してんじゃねぇよ。 のろいんだよ。
「えー、うちのチームではFWとして活躍してもらう予定だから。そのつもりで」
その言葉が出たとたん何人かの鋭い視線を感じた。
おそらく同じくFWの連中だろう。下部組織とはいえ天下のレ・アール、レギュラー争いは苛烈なものであることは想像するまでもない。
実力、名声ともに世界レベルの新入りを歓迎する奴はそういないだろう。
自分に絶対の自信がないやつ以外は。
しっかりと周りを見渡すと敵意に満ち溢れた表情もあれば、挑発しているのかニヤニヤしている奴もいる。
これでいい、ぬるい環境はこっちらから願い下げだ。
しかし、いくら見渡してもあの無愛想で不遜な兄の姿が全く見当たらない。
興味ないってかよ、クズ兄貴
「残念ながら糸師冴はバスタードミュンヘンに移籍してしまったからな。その分働いてもらう。」
「は?」
✴︎ ✴︎ ✴︎
そう、そこだ、俺たち二人の熱はそこにある。
あとはお前が撃ち抜くだけ。
右脚が収縮しネットを引きちぎる勢いで揺らした。
甲高いホイッスルが鳴り響き、会場は大きく揺れる。
潔世一の論理の極みともいえるサッカースタイルはよく馴染んだ。溶け合うといってもいいくらいに。
激しい興奮が身体を巡る。
「冴!!!!」
余韻に浸ってると、正面からハットトリックを決めたストライカーが飛びついてくる。
既に両足は宙に浮かんでいた。全体重を預けるつもりらしい。
避けられるなんて微塵も考えていない姿に不思議と悪い気はしなかった。
仕方がないので、なるべく衝撃を殺しながら受け止めてやる。
「マジ最高、マジでやばい!! 超絶すげぇわ」
コイツも興奮しているようで、IQが低そうな言葉を繰り返す。
暴言を吐く時の語彙力は何処にいったのやら。
受け止めたというのにまだ抱きついてくる。相撲でも取るつもりか。
まぁ今回の働きはいつも以上に良かったので好きにさせておく。
すると遠くにいた他のチームメイトたちが潔に飛びついてこようとしてきた。
邪魔すんな。今は俺たちだけの熱だ、混ざるな。
脇下に置いた腕をするりと背中に回して潔ごと避ける。
「おい冴!!そりゃないだろ!!」
「愛しいヨイチにハグさせろってば」
「独占欲が強い男は嫌われちゃうよ」
勢いよく地面に転がった間抜けどもが次々に喚く。
うっせぇ。
そんな姿をクスクスと笑うと、潔はあっさり腕からすり抜けた。
そのまま下へダイブする。
頭一つ抜けて丈夫な奴にのしかかり、次は隣に転がる奴とハイタッチを交わす。
いつしか自分以外の全員が寝転んで勝利を分かち合っていた。
「ほら、冴もこいよ」
仰向けになり、両手を広げて誘ってきた。熱が残る瞳に揺らぎそうになったが目を背けて拒否する。
衆人環視のもとでできる行為ではない。
少しばかり不貞腐れたような潔に、これはチャンスと思ったのだろう。近くにいた一人が潔の胸に顔を寄せようと忍び寄ってきた。
腹の底が重くなる。
とりあえず変態を軽く蹴り飛ばし、なんの抵抗もなく抱え込もうとしたバカの上半身に腰掛け地面に釘を刺してやった。
ぐへぇ!と、潰れそうな蛙の声をあげる。
そんな二人を見て周りのチームメイトは声をあげて笑い始めた。
ぬりぃな、と思う。
けれどこんな生暖かい雰囲気も今だけは浸ってもいいと思った。なんせあのレ•アールに勝利したのだから。
移籍してから初めての古巣との対戦。その強さは身に染みて分かっている。
しかも入れ違うように入ってきた弟と、あの青薔薇まで居るのだから正直自分がいた頃よりも強くなっているだろうと予測はしていた。
当然のように性格の相性は最悪の極みだった二人だが青薔薇は潔とプレイスタイルは酷似しており、想像よりも上手く互いにハマっていたので随分苦戦した。
恐らく潔世一という共通の敵に対するにあたって、強制的に化学反応を起こしたのだろう。
だが勝った。俺たちの熱がエゴが上回った。
殺意なんて可愛く思えるほどの視線がうちのエゴイストにまとわりつく。
そんな怨念を当の本人は全く気にしていないようで、いつまで経っても無邪気に笑いかけてきた。
自分に懐いてくる潔に少しばかり優越感が沸いてきて、負け犬に目を向けると更にドス黒い空気があちらに発生する。
舌をいい加減しまえ、凛。
化学反応を起こしたとはいえどちらも獲物を譲る気はないらしく、時々理にかなわないプレイが見られた。
そこをがっつり喰われたのだから心中察する。
そんな奴らにトドメを刺したかったので、潔の腕を引っ張り上げ強制的に立たせ身体をあちらに向けさせる。
どんな言葉をかけるのか普段の語彙力に期待しながら待っていると、流石はブルーロックの魔王。
凛と比べると大変可愛らしい舌先をちょこんと覗かせ、とろんとした瞳で微笑んだ。
✴︎ ✴︎ ✴︎
十分に勝機があった試合だった。
けれど最後の最後で潔世一と糸師冴の化学反応があの場の全てを支配した。
あいつらの熱に敗北した。
控え室の雰囲気は最悪。誰一人として言葉を発さない。
決勝点を誰より近くで見届けたクソ舌は項垂れて着替えようともしない。
一瞥もくれることなく、自分の兄に飛びついていった後ろ姿を目の当たりにしたあいつには、流石の俺も少し同情した。
監督の御高説なんぞ聴くだけ無駄。負け犬の傷の舐め合いも無駄。
さっさと帰って牙を磨くに限る。
そうでもしなければクソの道化は頭が狂ってしまいそうになるから。
勝利の熱に浮かれた瞳で嘲笑う顔がチラつく。
ただ睨むことしかできなかった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
「愛してるぜ、冴!!」
「何度目だ、しつこい」
先程から同じことを繰り返し言いながら今日のMOMは腕に擦り寄ってくる。
いつもより華やかな寮内の食堂では、宴が開催された
ドイツは20歳未満でも酒が飲める。とはいえ母国では禁止されている年齢であるため、断っていたもののつい押しに負けてこのエゴイストはビールを思いっきり飲んでいた。
「もっと飲めヨイチ!!」
そんな姿に気を良くしたチームメイトが更に酒を勧める。
既に酔っ払って判断能力が格段に落ちているため、何の躊躇もなくもう一杯飲もうとするバカの手からジョッキを奪ってやった。
「飲み過ぎだ、」
「えへぇー、さえってやっぱおにいちゃんだなぁ」
「・・・」
あんまりいい兄だとは思ったことがない、弟は何故か反抗的になってしまったし。
少し後ろめたくて目を背けた。
「これからもずっと俺にいいパスくれるお兄ちゃんでいてよ」
「だったら、俺がそう思えるだけのストライカーであり続けろ。マヌケにやるボールはない。」
「はっ、とーぜんだろ」
強気な発言に気をよくした。こいつはその言葉に見合うだけの実力がある。
「んぅー、さえー」
今度は頭を擦りつけてきた。
「ヒュぅー!お熱いね!」
「ここで盛んなよぉー」
他の馬鹿達が冷やかしてくる。流石に少しムカついてきた。
「おい、帰るぞ。」
「えー、まだいたい、」
「未成年は黙って寝とけ」
駄々をこねる馬鹿の手を引きずって寮へ戻る。
全く、こんなに酔っ払っていればいずれ痛い目を見る。警戒心というものを身につけなければ。
こいつに下心があるやつはそれなりいるのだから。
例えば俺とか。
❤︎ ❤︎ ❤︎
とりあえずベッドに放り投げる。
自分より小柄とはいえ一応アスリート。筋肉は勿論ついている、しかも脱力しきっているので大変重い。
「さえぇー、ねむい」
ろくに回らない口で名前を呼ばれる。
妙に色っぽさがあって行為への意欲が上がっていった。
「着替えるぞ」
衣服を全て剥ぎ取る。
「さんきゅ… 」
不快感は無いらしい。
両腕を前で縛り上げる。更に脚を開脚させ膝を折り、タオルで巻きつけて固定し動けないようにする。
縛ったことで体位は限られるがこれで抵抗は難しいだろう。
流石に直撃弾丸を決める脚で蹴られたらヤるどころの騒ぎじゃない。
それにしても全くもって抵抗しない。
拘束中も不思議そうに見つめるだけで、くすぐったいのか時々小さく笑っている。
いくら酔っているとはいえ警戒心が無さすぎる、と心配する。俺が言うのもおかしいけれど。
ぬりぃ母国で育ったせいだろうか、それとも糸師冴を信頼しきっているからか。
多分どちらも正解だろう。
慕われていて、受け止めてくれる存在であると評価されているの気づいていた。
が、それは自分だけでは無い。
サッカーに対する情熱と実力さえあれば性格に著しい問題があっても割と誰にでも懐く。
むしろ何処ぞのドイツ人のように嫌われている方が珍しい。
数ある特別の一つである事実はなかなか面白くないものだった。
まぁ今からすることは嫌いなんかで済まされるほど生易しいものではない。確実に潔世一に刻まれる特別になれる、悪い方の。
脚を開かれて、股が丸見えでもポカンとしている方が悪い。もう和姦みたいなもんだろ、和姦だ和姦。
まずは腹を指で軽く撫でてやる。始めから本丸いくほどせっかちじゃない。時間をかけて確実に堕とす。
「うへ、まっさーじ?気持ちいいわ。ありがと」
こんなマッサージあってたまるか。
序盤から身体をくねらせて頬を赤く染めている。
ちょろすぎるんじゃないだろうか。
しかし都合良く解釈してくれたのでノるに越したことはない。
「たまには褒美くらいやるよ」
「冴のご褒美か…それじゃ明日1on1一緒にシよ」
「サッカー小僧め」
んへへ、と言って満更でもなさそうに応える。
悪いがそれは叶えてやれない、明日はベッドとお友達になる予定だ。
脚の付け根をさすってやる。時々性器にわざと手を当てると身体をピクリと震わせる。エロい。
「…はぁ、ん?」
ようやく違和感が出てきたらしい、吐息に疑問符が混じり始める。遅ぇよ。
「さえ………えっと、何してんの?」
「マッサージ、だ」
「あ、うん?そっか…」
うんうんと言いながら納得しようと勝手に努力しているのでスムーズに物事が進んでいく。
流石にそろそろ次の段階に進みたい。
ゆっくり性器を握りしめ上下に扱く。酒が入っているせいかイマイチ勃ちが悪い。
「はぁっ?え、まって、」
「マッサージ」
「いや無理があるだろ」
ちゃんとツッコミできるまでには正気に戻ってきたらしい。逃げようとする身体を抑えて更に強く握る。
「まじでやめろよ!、ひゃぁ!?」
急な刺激驚いたのか身体が跳ねてベッドが軋む。
「隣のやつに聞こえるぞ」
「ーーっ、んふぅ…っあ」
自分たち以外は食堂にいるので聞こえるはずもないが脅しも込めて呟くと必死になって喘がないよう堪える。
いじらしくて可愛い。
「〜っいやらぁ、やめてぇ♡」
まだ数分も経っていないのにぐったりして陰嚢が欲を吐き出そうと収縮の動きを見せる。
これからが本番だというのにここで果ててしまっては困る。
中途半端に上がったモノを離して次は尻の筋肉をほぐす、固まった大臀筋だとこの後が難しい。
「なぁ、冗談キツいって。マジでやめろよ」
「・・・」
「冴とこんなことしたくない…」
「・・・」
「こんな嫌がらせ、お互い傷つくだけだろ。」
「・・・」
暴れられることは想定していたが、こう冷静に説き伏せられるとは思わなかった。
さっきまでアンアン言ってたくせに。
性的な刺激がなくなると口が回るらしい。もう一度優しく扱きながら尻を揉む。
「〜んぅっ♡、さぁっえ、やめろってぇ♡」
触れた途端に色気を纏った。理性は常に飛ばさせておくに限る。
それにしてもいい尻だ。欲を言うなら両手で揉みたい。
しっとり吸い付く肌とあの脚力を支える筋肉の張りがなんとも言えない触り心地。
機会があれば背面でヤる、と計画を立てる。
夢中で揉み、眺めていると穴がヒクついている。
くぱくぱ、なんていうオノマトペが聞こえてくる程に。
せっかちな尻穴だ。こちらはずっと我慢しているのに。慣らす前から欲しがるとは。
あらかじめ用意しておいた軟膏を手に取り、指に伸ばした。
「指、挿れるからな。」
「ぇっ?!」
にゅぷっと指を挿れる。下準備をしっかりしたおかげか意外と抵抗は少ない。
とはいえ違和感はあるようで先程まで腑抜けて唾液まで垂らしていた顔が歪んでいる。
ようやく本番だと言うのにここで萎えられると困る。
くるくる指を回していると腹側の肛門内に少し膨らんでいる部分があった。
強めに押すと身体がピクリ反応する。
「んぅっ!そこぉ…ぁあ、」
一際強い快楽を感じ取ったのだろう、甲高い声が響く。
どうやら、かの有名な前立腺を発見できたようだ。
指を二本、三本と増やし集中的に攻めていく。
「はぁ、ぁぁん!!」
腰を捻って抗おうとしているものの、迫り来る快楽に耐えられず熱い吐息と嬌声が溢れ出ていた。
もう限界だった。
自分でも若干引くくらい反り立つ昂りをゆっくりと進めていく。
「いったぁ・・・ぁん、はぁ・・・っん!」
「口で呼吸しろ」
痛みを感じているようだが、同時にしっかりと快楽も拾えているらしい。
腰がカクついて、こちらが手を動かさなくても自分ですり寄せてくる。
その動きに合わせて突き上げてやると足先が痙攣したように伸びた。
「ーーぁぁ゛♡♡」
前と後ろを同時に強く刺激してやると呆気なく果ててしまった。
脱力しきった身体で必死に息を吸っている姿にまた興奮してくる。
これだけ丁寧に抱いたのだから、後は好きなように動いてもいいだろうと先ほどよりも強く挿入を繰り返した
疲れきったのだろう。意識は半分途切れ、嬌声は小さい。
ようやく自分が射精した頃には目を覚すことなく、涙の跡が哀れだった。
肛門は赤く腫れていたものの出血はなかった。初夜で貫通した割にはしっかりと感じ入ってもらえたようなので自分に合格点をやる。
次は後ろだけでイけるように。
✴︎ ✴︎ ✴︎
最悪な目覚めだった。
昨日の勝利が霞むほど、酷い目に遭ったのだから。
とりあえず酒は二度とこいつの前では飲まない事を誓う。
隣ですやすや眠っているクソ野郎をぶん殴ってやりたかった。けれどそれ以上に起きた冴と対面することの方が怖くて、目を逸らす。
腕と脚にに残る拘束跡が痛々しかった。
凛には悪いけれど、冴を兄のように慕っていた。
口は悪くて冷たいところもあるけれど、頼り甲斐があって合理的で明確な言動が好きだった。
プレイスタイルも似ているし、サッカーの話をよく聞いてくれてアドバイスの一つ一つが嬉しかった。
けれど犯された。
あの糸師冴に、信頼している仲間に。
悲しくて堪らないのに、裏切られた気持ちでいっぱいなのに、それでも感じてしまった自分が一番情けなかった。
あの一件後、初めての練習試合。
潔世一との熱は生まれなかった。
2ー2の引き分け
決して弱い相手ではない、けれどいつも通りの実力が出せれば勝てる相手だった。
それなのにこの結果。原因は間違いなく化学反応不足
「あの腑抜けたクロスはなんだ」
試合後二人っきりのロッカールーム。
問い掛けを無視して黙々と着替えている。
残り3分。恐らくゴールへのラストチャンスであっただろうカウンター。
そのまま潔が俺にクロスしたボールをアシストで返してやる。
そのまま直撃弾丸を決めて試合終了。
それが俺の読みだった。
が、クロスは別のMFへ行きそのまま相手に取られ、試合終了。
普段であれば絶対にしない選択だった。
受け取ったMFもなぜ冴にパスしなかったのかと問い詰める、当然だ。
あのMFは万が一に備えてもう一度攻撃の機会を作り出せるよう穴を埋めにいったのだ。
BMでレギュラーを取るだけのことはある。あの場ではあれが正解だった。
しかし肝心のストライカーは合理的な最適解を間違えた。
なんの熱もない非合理で想定外のボール渡す。
そりゃ取られる訳だ。
非があるとしたら潔世一だろう。
何が魔王だ。
「ーっ!分かってんだよ!そんなこと、…誰のせいだと思ってんだよ!」
俺だってあんなサッカーするつもりなかった、と歪んだ顔で叫ぶ。
「プライベートと混同するな。お前が俺を憎くても、殺したくても、サッカーだけは必ず信じろ。」
お前は世界一のストライカーを目指すんだろ。
凛と殺し合うんだろ。
こんな理由で躓くんだったら、お前は失格だ。
非情な事を言っているのは自覚している。
「・・・今は、お前との熱は生み出せない。クソ強姦野郎」
しかし、次の試合まで時間はない。
こいつもそれが分かっている。今は俺との化学反応がなければ勝てない事を分かっている。
唇は震え、悔しそうに俯いた。目に薄い水の膜が張る。
予測していたとはいえこんな顔されては心が痛んだ。
大丈夫。ちゃんと対策はしてある。
お前と俺がまた熱を求め合う関係に戻れる方法を。
むしろ前よりも良くなるかもしれない。
「だったら、お前と俺のセックスが当たり前になればいい。」
❤︎ ❤︎ ❤︎
多分間違っている。流されている。
先日、自分を犯した男に跨っているのは絶対におかしい。
自ら服を脱いだなんて、拘束もされてないだなんて。
でもこうするしかなかった。きっと上手くいかないだろうけど、これ以外の方法がなかった。
「やり方は教えた。いったん自分で弄ってみろ。」
淡々とした声が聞こえる。
うるせぇ死ねよ。
先程まで二本指で弄られた穴は熱を持って自分でも疼いているのがよくわかる。
もっと、もっと、全然足りない。なんて思ってしまった自分が憎い。
声が出るたびにクスッと笑うコイツが嫌いだ。
後ろに手を伸ばして恐る恐る穴に沈めた、もう片方は冴の頭のすぐそばに置く。
嫌でも互いの顔が近くなり、思わず顔を逸らした。
よくそんな無表情でいられるものだ。こっちは恥ずかしくって、苦しくって、ぐちゃぐちゃになりそうなのに。
とりあえずさっきの動きを思い出しながら指を回す。
あらかじめ入れておいたローションがぐちゃりと音を立てた。
気持ちいい場所は分かるのに、決定的な刺激がなかなか上手く与えられない。
疼きは増すばかりで一向に進まない。
そんな俺をジットリ見つめてくるので、恥ずかしさが増す。
すると冴の指が頬を触ってきた。妙に艶めかしい動きだった。
「口開けろ」
簡潔な命令を下されて思わず従ってしまった。
二本の指を突っ込んで口の中を弄る。
「っん、ぅふ、ぁぁう」
上顎をなぞられて脳に刺激が直でくる。身体全体の熱が高まったのを感じた。
「この動きをトレースしろ、上顎は自分の前立腺だと思え。」
言われた通りに動かすと先程とは格段に違う快楽が襲ってくる。
二つの異なる場所からの刺激がたまらない。
溢れ出る唾液が指から下へ、腕まで垂れた。
次第に口いっぱいに指を感じたくなって、自ら舌を絡めてしまう。
「しゃぶるの上手いな….」
「ーーっ、うるひゃい」
そんなことを褒めないでくれ。黙っててくれ。
指が三本くらい難なく入るようになると、唾液で濡れた手で頭を撫で始めた。べとべとして気持ちが悪い。
「自分で挿れてみろ」
またもや簡潔な命令口調。さっきはつい従ってしまったが、そもそもこっちは被害者でなんでこんな奴の言うことを聞かなきゃいけないんだ、と怒りが湧いてくる。
けれど口に出せなくて、せいぜい睨みつけることくらいしか出来なかった。
そんな俺をみてこいつは溜め息をつきやがった。
「嫌々すんなら意味ねぇよ、潔。」
「・・・」
「俺とお前のセックスは有意義なものにする必要がある」
「…知ってる」
「あとはお前の気持ち次第だ」
あの夜はなんてことない、当たり前のこと。
冴とのセックスは怖くない、情けなくなんてない。
そう思い込むしか、それを事実にしなければ化学反応は戻ってこない。
覚悟はもう決めたはずだろ。
腰を移動させて反り上がった冴のものを押さえながら自重で後孔に沈めていく。
「ぐっ…んぅ、ぅふぁ♡」
苦しい、痛い、けれど快楽も同時に駆け上って身体を痺れさす。
ナカが馴染み始めると段々自分の気持ちがいい腰の振り方が分かってきた。
イカれた今を忘れられるように、もう何も考えられないよう必死に動く。
「はぁん゛、んぅ!はぁ、ああ゛♡♡」
もうちょっとで終わる。あと少しでイク、今日はこれでお終い。これでもう大丈夫。
早くイキたくて更に動きを強めると、急に腰を掴まれて動けなくなった。
迫り上がる快楽が急に止まってもどかしい。
「!?何すんだよ、冴」
「ディルド扱いしてオナってどうすんだよ」
俺たちが今してんのはセックスだろ、と言って不機嫌そうにこちらを睨みつけてきた。
「俺のことしっかり頭に入れてやれ」
「ちゃんと考えてるって」
「伝わってこない」
確かにさっきは自分がイクことしか考えていなかった。・・・いやお前も気持ち良かっただろ、ナカでデカくなってんの分かってるからな。
「俺とセックスしろ」
してるよ、セックス。
しかし相手はそう思っていないようで、納得させなければ離してもらえそうにない。
こっちにそんな技量はないし、実感してもらえる方法なんて思い浮かばない。
そもそも経験が極めて少ないのだから、そんな知識なんてあるはず・・・いや、ある!
AVだ。
こちらは健全な男子高校生、もちろん何度もお世話になっている。
頭をフル回転させて、一番興奮したシチュエーションを思い出す。
今までお世話になってきた女優さん達にまさかこんな形でまたお世話になるとは。
適応しろ俺、何を冴は求めてる。セックスってなんだ。
そうしているうちにふとあるAVが頭の中に浮かんできた。
確かタイトルは「憧れの先輩とイチャラブな初夜」
終始お互いに幸せそうで、拙いながらに必死に相手を求めている姿に大変興奮した覚えがある。
叶うなら自分の脱童貞もこんなシチュエーションがいいなと願ったことを思い出す。
愛のある理想のセックスだった。
まさかあんな形で脱処女する羽目になるとは想像もしていなかったけれど。
ピースは揃った。あとはトレースして実行するのみ。
「すっ、、すき?、えっと、好きだ」
あのAVは足りないお互いの技量を言葉で補っていた。
素直にお互いの気持ちを伝え合って、求め合う。
前に屈んで唇が触れる程度のキスをする。さっきの挿入するときより恥ずかしかった。冴を近くに感じたから、心も身体も。
「ねぇさえ?お前ももっとうごいて、いっぱい気持ち良くシよ」
目がとんでもない大きさになるまで丸くなり、じっとり見つめてくる。
つい目を逸らして起きあがろうとすると、急に両手を握られて動けなくなる。
いきなり脳天に快楽が走った。
突き上げられた。自分でした時とは違い容赦なく気持ちいいところに当てられる。
どうやらお気に召したようだ。
「ぁあ゛、んん!!さっえ、さえぇ♡♡、きもぢぃ?」
「っ…ああ、いい」
「あっぁ、よっかたぁ♡、すきぃ…さえっ」
じゅぷじゅぷと部屋に粘着音が響く。官能的というより下品と表現した方がしっくりくる程、激しく大きく響く。
「ああ゛っ!じゅぎぃ♡ しゃぇぇ゛♡」
「そうか」
「う゛ん、すきぃ!もっと♡、もっどぉ♡♡」
馬鹿みたいに叫ぶ。興奮してるのが伝わってくるから。
不思議と口に出すことで快楽が増してくるように感じる。理性がどっかいきそうになる。
「ぁぁ!!へぇんに、な、りゅぅ♡♡、しゅき、さえ、さえ」
本当はこんなことしたくないのに、嫌で仕方がないはずなのに、冴が欲しい。
もっと寄越せ。ありったけ。
浅ましい本能に従ってしまう。
でもこれは仕方がないことだから。サッカーの為だから。
気持ちなんていくらでもあとからついてこればいいから。
今はちゃんと気持ち良くならないと、冴と一緒に。
「好きだよ冴」
それに応えるかのように、優しい口付けが与えられた。
「よっ!凛、おひさ!」
会いたくなかった。
あの苦々しい試合を思い出す。
あの時、こいつは間違いなく俺に興味を持っていなかった。
ライバル失格だと思ってしまった。
そんなこちらの心境を全く気づいていないのだろう、馴れ馴れしく近寄ってきてペラペラと喋り出す。
不愉快なことに、潔と話す時間は悪くない。
「冴は次の飛行機で来るってさ。」
知らなかった。また兄のことを、どうしていつも人伝て知ってしまうのだろう。
顔に出したつもりはなかったが、こちらを見て心配そうな表情をされた。
「あー、なんか急に変更なっちゃてさ、俺もついさっき知ったんだよね、ハハ…」
見透かされてしまったらしい。こういう妙に察しのいいところがウゼェんだよ。
初めてのオフシーズンとあり、日本では待ってましたと言わんばかりにCMの話が舞い込んできた。
元々知名度があった糸師冴とブルーロック一位であった潔世一、糸師凛は特に多く一旦帰国して荒稼ぎすることとなった。
年収より多い金額を提示され、この国がサッカーに対する認識が少しでも変わったのだと実感した。
悪くねぇな。
「せっかくだからさ、明日三人でご飯でも行かない?ホテル一緒だし。」
「行かねぇよ」
「そー言わずにさぁ、冴だって一緒に行きたがってるに決まってるって」
「だって凛の話よくしてくるんだぜ、冴って結構家族思いなんだな。」
兄ちゃんが、俺を…。
その言葉に浮かれた自分に腹が立つ。けれど本当は認めてくれているのだろうか。
「なぁ凛、頼むよ。」
ここまで言われては仕方がない。
別に兄に会いたい訳じゃない。こんなに頼まれては、断る方が面倒くさいだけ。
潔のせいだ、潔の。
「酸っぱい料理はやめろ、」
そう答えると、嬉しそうな笑みを返される。
悪くなかった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
「今夜俺の部屋に来いよ、凛」
「行かない」
即答すると不満気に顔を膨らます。
「明日のご飯決めなきゃいけないし、ほら、あとサッカーも一緒に観たいし。」
どうしても今夜一緒にいたいらしい。
仕方がない、断る方が面倒くさい。この魔王は押しが強いのだから。
潔のせいだ、潔の。
「今夜九時なら相手してやる」
✴︎ ✴︎ ✴︎
午後八時をまわった頃、潔の部屋へ向かった。
徒歩二十秒のご近所さん。
あんなに来て欲しいと懇願されたのだから、一時間程度早く着いた方がアイツも喜ぶだろう。
別に行きたいわけでもないけれど。
糸師凛は社会的な常識があまりなかった。けれどサッカーさえ出来ていれば大概許される環境にいたので、今日に至るまで改善されていなかった。
カードキーはあらかじめ持たされていた。
カードキーを渡す=ノック不要
と判断したためそのままガチャリとドアを開けた。
糸師凛は社会的常識があまりなかった。近しい者に対しては特に。
しかしこれが、糸師凛の命取りとなった。
入った瞬間、一定のリズムで刻まれる粘着音と男の甲高い声が耳を貫く。
何をしているかは想像はついた。
けれど認めたくなくて、ゆっくり音のする方へ向かう。
広い部屋のホテルを用意された、同じ間取りなので問題なくバレずに辿り着く。
案の定、寝室でそれは行われていた。
ーー話は冒頭へ戻る。
嫌だ嫌だと言っているけれど、そんなもの薄っぺらい嘘だということは嬌声で分かる。
位置的に潔の表情は見えないが恍惚であることは間違い。
兄は愛おしそうに、欲の混じった目でその痴態を眺めている。
一体いつから?、というかなぜこんなことを?
疑問と戸惑いが尽きないはずなのに、快がる姿が余りにも官能的で思考が飛ばされる。
「さえ♡、すきぃ、ぁ゛だよ♡、だいしゅぎぃっ♡♡」
「いっぱい、シてぇ♡っもっとぉ、ぁぁ゛だま゛じんじゃぁう゛!」
「そうか」
次は好き好き言い始めてた。こんなに言葉にしているのに兄は簡潔な返事だけだった。
もっと言ってやればいいのに、言葉で伝えてやればいいいいのに、俺だったら…
そこで初めて、組み敷く男に自分を重ね合わせていることに気がついた。
既にズボンは人前で歩ける状態でない。
今までにない、サッカーの時とは少し違う興奮を潔に感じる。
「〜んぅ、さぇ、まって!、りんがぁ゛くりゅぅ♡
りんがきちゃぁう!!♡♡」
“ーっ、潔“
急に自分の名前を呼ばれた。あんな声で。
ズボンを少し下ろして触ってもないのにガン勃ちのものを握る。
粘着音と同じリズムで抜いて、自分が抱く側に置き換えた。
クッソ、クソが、
人のセックス眺めてオナるとか終わってんな。
滑稽で仕方がない。が、性的なものであれば人生で今一番興奮している。
「〜ぁあ゛、さえぇ♡♡りんっに、ばれぢゃうぅ♡」
もうバレてる、なんなら今オカズにしてる。
「っは、だったらさっさと俺をイかせろ。」
そう言うと、ズルりと抜いて膝立ちから胡座の姿勢に変える。
「来い」
身体に力が入らないのか、四つん這いになって近づき見つめ合いながら脚に腰を下ろすと、慣れた手つきでぐちゅりと自らの孔に沈めなおしていた。
「すきぃぃ゛、しゃえ♡しゃえっ♡♡」
互いに息を合わせて上下に揺れる。
喰い合うように舌を絡めてまるで一つの生命体のように思えた。
誰も入る隙間はない。
「イってよ、さえ♡♡」
ニヤリと笑って締め上げたらしい。普段から無表情な顔が眉をひそめて苦しそうに耐える。
「っく、」
孔から白い液体が漏れ出した。
「きもち、よかった?うまくできた?」
蕩ける瞳で尋ねる。
「ああ、上出来だ。」
軽いキスを繰り返しながらセックスの感想を言い合う。
「防水シート買ってて正解だったろ」
「っふ、ヤル気満々だって言ったことまだ根に持ってる?」
「別に」
身体をウェットティッシュで拭きながらベッドに横たわり、宙を眺めている。
その間、せっせと片付けて着替えてた兄は無表情で帰り支度をしていた。
「凛が来る前にその顔どうにかしろよ、エロいことしてましたって言ってるようなもんだ」
「ハイハイ」
事後のせいか、気怠そうに適当な返事をする。
「明日は凛と一緒にご飯食べんの忘れんなよー」
「わかってる」
じゃあな、と言って兄は帰っていった。
咄嗟に物陰に隠れてやり過ごす。
「とりあえずシャワー浴びるか、」
帰りたいのは山々だったが、昂ったままの愚息を見られるわけにもいかず物陰に隠れ続ける。
シャワーの音が響いてくる。
さっき散々擦ったおかげでもう少しで射精出来そうだった。
急いで扱く、勿論さっきの情事を思い出しながら。
早く、早く、早く、自分でも息が荒くなっていくのがわかった。今はヌくことに集中する。
潔、潔、潔、
「・・・凛?」
ぴゅるっと射精したと同時に戸惑いの声が聞こえてきた。
集中し過ぎてシャワーから上がったことに気付けなかったらしい。この馬鹿野郎が。
「えっ?いやなんでシコって…っ、え?、ん?」
軽くパニックになっているようで、まともに喋れないらしい。
こちらもパニックになって、何も言えずに固まっている。
しかし、先に冷静さを取り戻したのは凛の方であった。もちろん理由は賢者タイム。
「兄貴とはどういう関係なんだよ」
こちらの自慰を指摘される前に先手を打った。
「・・・見ちゃった感じ?」
「あんなキメェもんみせられたこっちの身にもなりやがれ、なんでセックスしてた。」
散々オカズにしといて何を言っているのか、と心の中で自分に指摘する。
ウルセェ。
「付き合ってんのかよ」
「えっと…それはちょっと分かんないていうか、」
「は?」
あんなセックスしておいて付き合ってない?
「じゃあ、好きなんだろ」
心が通ってなければあんな風になるはずはない。
「う…ん?多分好き?かも…」
意味がわからない、好きかどうかわからない相手にコイツは身体を許せるというのか。
兄ちゃんは絶対潔のことを思っているというのに。
糸師冴があんな顔をするのだから。
途端に怒りが頭を支配する。
せめて恋人同士であれば納得もいったのに、こんな軽い気持ちで股を開くビッチ野郎にどうしてこんな思いを抱え続けていたのか。
「なら、俺が抱いても問題ねぇよな」
「はっ?なにいっ」
言い切る前にベッドへ押し倒した。
当然必死に抵抗される。テメェのフィジカルじゃ意味ねぇよ。
身体全体を使って押さえつける。丁度服を着ていないのでそのまま突っ込んだ。
「いっだぁ゛、ぐぁ…やめ、ろって」
ただ思いのまま動く。どうせビッチだろ、突っ込んどけば勝手に喘げるはずだ。
「やめろ、っぐがぁ!ぁぁ゛、」
しかし思惑は外れていつまで経っても苦しそうに喘ぐばかり。快楽は全く拾えてないらしい。
それでもいい、こいつに傷をつけられるのなら。
「ーくっ!死ねよ、クズ潔」
俺だけ除け者にして、俺の世界にはお前らしかいねぇのに。
しかも遊びかよ、クソが。
「い゛っだぁい゛、あっ!いだい、や、めて…おねがい!!」
「死ね、死ねよ」
孔からは血が垂れ出してきた。慣らしも、潤滑剤も何もしていないのだから当たり前か。
だからといって手加減するつもりはない。
むしろ良かった、血のおかげでさっきより幾らか挿入が楽になる。
一際強く突っ込んでナカに出した。
ようやく興奮がおさまってくる。
精液で色が薄れて血はピンク色になっていた。
「…でていけ、凛」
涙を流しながら睨みつけてくる。明らかに失望した顔だった。
いつものように、名前を呼んで近づいてくる潔世一にはもう会えないことを理解した。
知るかよ。
頬を掴んで唇に齧り付く。また血が滲んだ。
「次兄貴に抱かれてみろ、殺すからな。」
そんな脅しにも屈することなく、鋭い瞳が身を貫いてきた。
「…出ていけ」
もうやりたいことも言いたいことも全部終わった。
軽く服を直して逃げるように部屋を出ていく。
絶対に次も抱いてやるよ