2年3組12番。俺の名は,楽園元知(エデン もとかず)。もともとは佐々木原(ささきばら)という苗字だったが,俺にふさわしくないから変えてやった。この俺の力でな。
クラスメイトからはよく,3組の恥さらしと呼ばれている。何だか3組を代表しているようでいい響きだ。俺に似合っている。
こんな俺だが,最近辛いことがあった。なんというか,それがあってから生きていく気力がない。
何があったのかって?この俺に質問が出来るとはなかなかに勇気があるじゃないか。そういう奴は嫌いじゃない。いいだろう,教えてやる。
実は,俺は親友を失った。それもたった1人しかいなかった唯一の友だ。その名は田中輝幻星(田中ベテルギウス)。初めて会った時,あいつは俺と同じオーラを放っていた。だから心優しく声をかけてやった。その後俺とベテルっちは親交を深めた。俺にとっては最高の奴だった。しかし,あの闇物語(ダークネスストーリー)はつい一昨日幕を開けた…..
俺が学校へ人生の記録(ライフメモリー)を更新しに行く時のことだった。家を出たら,ナイフを持ったベテルっちが立っていた。そしてベテルっちはこう唱えた。「お前といると人に汚物扱いされて人生の記録が汚れてしまう。早く死んで消えてくれ」と。俺は何が何だかわからなかった。そして息を吸う間もないうちにベテルっちは俺にナイフを振りかざしてきた。幸いにも俺がとっさに生命危機(ライフクライシス)を感じたおかげで避けることが出来た。そして俺はいままで俺のメモリーカードには刻まれたことのないほど全力で駆け抜けた。
その後,ベテルっちは警察に取り囲まれた。どうしようも無いと思ったのか,そのナイフを自分の心臓に刺し,自ら人生の幕を閉じた。翌日ニュースでは「少年はナイフを持って走った。」と取り上げられていた。俺は涙が出た。あの時は恐怖で何も考えられなかったが,今考えると俺はあれだけ人に恨まれていたのかと。ということはベテルっちを殺したのは俺だったんじゃないかと。
そんな訳で,その日から俺は目の光を失い闇に堕ちた。もう生きる気力も何も無い。俺は,ついに自殺を考えた。自分で自分の人生のメモリーカードを破壊するということは,どれだけ辛いことなのか。だが,俺には生きていける未来は考えられなかった。そう考えていたら,おれは既に校舎の屋上にいた。
俺は飛び降りた。そして最後には何も考えていなかった。人の命はこんなに儚く終わってしまうのか。俺はそのまま空を舞い,途中で意識を失っていた。痛みも何も無い。
俺は死後には天国行きか地獄行きかを決める裁判所の様なものがあると思っていた。自殺者はみんな天国には行けないという。俺は地獄に落ちるのか。そう思っていたら,想像とははるかに違う世界がそこには広がっていた….
その世界には、たった一つの瓶と,置き手紙がある。周りを見渡すも,地面は平で凹凸がなく,どの方向にも白い世界が続いていた。空もなかった。俺は状況を理解出来ず落ち着かないまま置き手紙を手に取り,読んでみた。
「この瓶を開ければ,貴方は転生することが出来る。」
ただそれだけ書いてった。転生…そんなことが本当に出来るのか。信じてはいなかったが,他にできることがないから,俺は瓶を手に取りコルクの蓋を外した。
ぽわぽわぽわーんぽっぽっぽー
謎の音と共に目の前が光った。その瞬間,激しい頭痛がした。
気がついたら,俺は公園のベンチで全く知らない女性の横に座っていた。
「裕也,いつもの早口言葉見せてよ」
裕也…?まさか本当に転生したのか。俺は雄也という名前で転生したことが分かった。おそらくこの女性は雄也の彼女だ。ん…でもまて。早口言葉..?裕也は早口言葉が得意なのか..?俺は「なまむぎなまごめなまたまご」すら言えない滑舌の持ち主だったんだぞ?
「ねーえーはやくー!」
ま、まずい。女性,いや彼女がかんしゃくを起こし出した。非常に気持ちが悪いから早く止めなくては。と,とりあえず思いつく早口言葉を言ってやる!
「隣の客はよく柿喰う客だ」
な,なんだって…俺が早口言葉を言えた!?
[完]
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