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「なんで、銀河が、そんな女と、キスなんかしてるのよ!
おかしい! おかしいからっ……!
だって銀河は、私だけの銀河で、他の誰のものでもないのに……なんでよ?
おかしいっ! おかしいから、そんなこと!!」
わめく女性の服には、点々と血が飛んでいた。
彼をナイフで刺したのは、その女性に違いなかった。
捕まえようとして、前に出ようとする私を、
銀河が「ダメだ…」と、制する。
「俺が…俺が話すから……理沙は、俺の…後ろにいろ…」
「でも…銀河…血が……」
ナイフが刺さったままのわき腹を見やる。
「心配…すんなよ……大丈夫、だから……」
失血に青ざめる顔に、銀河が無理やりな笑いを浮かべる。
「いや…いやだよ銀河……ねぇだって……」
体の震えが止まらない。ガタガタと震えるばかりの私を、路地の奥へ隠すようにして立ちはだかると、
「おまえ…ずっと、つけてきたのか…」
銀河が低く問いかけた。
「そうよ…ずっと、ずっと、つけてきたわ。だって、銀河は、私だけのもなんだもの……」
「……俺は、もの…じゃないから……おまえだけのものでも、ねぇだろ……」
諭すように銀河が言うけれど、女性は全く聞き入れずに、
「銀河は、私だけのものって、そう言ってるでしょ!」
叫ぶようにまたくり返した。
「どうして……わかって、くれないんだ…よ…」
銀河の声が、もう切れ切れになってきていた。
「しゃべらないで……もう、しゃべらないでよ…銀河」
支えようとする私の手を振り払って、銀河がよろめきながら通りへと出ていく。
ナイフを刺した彼の姿が、ふいに通りに現れて、途端に騒ぎが大きくなる。
「キャーー! 血がっ!」
「ナイフが、ナイフが刺さってる!!」
「救急車を! 警察も呼ばないと!」
警察を呼ばれることを懸念してか、
「銀河が、悪いのよ! 私以外の女と、キスなんかするから……!」
喧騒にまぎれそう捨て台詞のように吐き出すと、その場から逃げ去って行ってしまった。
「あっ…待って……!」
追いかけようとした私の目の前で、銀河が、ドゥッと地面に倒れて、
「銀河っ…! 銀河……!」
広がった血だまりの中に横たわる体を、夢中で抱き締めた──。