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Mへのありがとう

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Mへのありがとう

1 - 出会いの夏①

♥

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2022年12月27日

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『2021年7月31日』

気温は32度と残暑は厳しく、蝉の声も騒々しく感じる、そんな日だった。

「お疲れ!今日も頑張ろうぜ!」

駅から経営スクールの会場に向かう間で、同じスクールの生徒であるシモから声を掛けられた。

「お疲れ様です!頑張りましょう!」

僕は元気よくそのように返事をした。

僕は話すのが苦手だ。

正確には、得意にすることができるが、めんどくさく、疲れてしまうのだ。

仮面を被ったもう1人の自分が話す時はよく周りから「Sさんは丁寧で人当たりがよく、とても話しやすいです。」と言われる。好印象を抱かれるのは良いことだ。だから外で人とコミュニケーションを取る時は常に”いい人”モードだ。ただ家に帰った瞬間にその疲れはどっと来る。

そんな自分が嫌いだ。



経営スクールの会場に入ると、3人掛けの長机が横3列、縦10列に並んでいた。

真ん中の席は空けるとのことから、1つの机に2人掛けの状態でパラパラと座っている。

今日の参加者は50人ぐらいのようだ。

僕が通う経営スクールは、20,30代の人たちが多く、自分で事業をやっている人から大手企業のマネージャーなど多種多様な人が集まっており、経営について学んでいる。

この環境の中でも際立っていたのは最年少の僕だ。最年少だからか、周りの人に興味を持たれることが多かった。また講師にもよく気にかけてもらっていた。

講師は僕が尊敬する人で、この経営スクールの副代表兼講師である「佐瀬」という名前の人だ。

佐瀬さんは、175cmぐらいでかなり細身で、カジュアルスーツで良く講義をしている。そしてイケメンだ。

「S君、おはよう!週末は何するの?」

いつもこのような形で僕に声を掛けてくれる。

「佐瀬さん、おはようございます!週末は参加の方4人とのアポが入ってます。その他はビジネス書を読んで自己研鑽するつもりです。」

「いいね!頑張って!」

このスクールの卒業要項として、新規の方100人とアポイントを取り、自分のビジネスについてプレゼンをするというものがある。

その一環で僕は、平日の夜や休日を使い、新規のアポとプレゼンを繰り返し行っていた。

「ありがとうございます!最速で卒業いたします」

僕はそういい、佐瀬さんは笑顔で頷いた。

僕は1番右の前から3列目のところに座った。いつもは1番前に座っていたのだが、今日は既に空いていなかった。

受講の準備をするために、リュックサックからパソコンとノートを取り出していると横から声をかけられた。

「お隣座っても良いですか?」

振り向いて見てみると、152cmぐらいで、ノースリーブのワンピースを着た小柄な女性がニコニコしていた。

一目惚れだった。

芸能人で言うと、広瀬すずをさらに幼くした感じだろうか。

「もちろん大丈夫ですよ。どうぞ」

彼女は「ありがとうございます」と小さく会釈をし、隣に座った。

そうこうしているうちに、講義の始まりの挨拶が佐瀬さんからなかれた。

「みなさん、本日もお集まりいただきありがとうございます。…」

正直、隣が気になって話の内容が入ってこなかった。

「それではいつも通り、まずは隣の方同士で自己紹介をお願いします。では始めて下さい。」

佐瀬さんの開始の合図と共に会場が騒がしくなった。

僕も横に体を向けて話始めた。

「よろしくお願いします。まずは簡単に私から自己紹介させていただいてもよろしいですか?」

隣の女性は小さく頷いた。

「では。初めまして、Sと申します。私は現在、独立系SIerでSEとして活動しながら、教育事業を行っております。出身は埼玉の越谷市でレイクタウンをご存知ですかね?その周辺です。年齢は20です。趣味はビジネス書を読んだりすることです。どうぞよろしくお願いいたします。」

僕の自己紹介を終えると隣の女性は一言

「え、20なの!?30代ぐらいかと思った!」

確かにスーツで講義に参加してたため、大人びて見えるのはわかるけど、流石に30代と言われたのは傷つくな〜と内心そう思った。

「あ、はい笑、大人っぽく見えるはよく言われますが、30代ぐらいと言われたのは初めてでした」苦笑しながら僕は言った。

では、自己紹介お願いしても良いですか?と聞くと小さく頷き、隣の女性は話始めた。

「初めまして、Mです。仕事は看護師です。出身は埼玉の西の方で、年齢は24です。趣味は探し中です。何かオススメあれば教えて下さい!よろしくお願いします。」

終始ニコニコしながらMさんは自己紹介を終えた。

看護師やりながら、経営を学びに来てるのは珍しいな〜と思いながら、その日は佐瀬さんの講義を聞いていた。


講義終了後、思い切ってMさんにLINEを聞くと、2つ返事で了承してくれた。

「また後ほどご連絡させていただきます。」

そう一言伝えて、僕は会場を後にした。

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