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自分たちのギャング名は悪魔の名前を冠している。共通で揃えている犯罪実行時の衣装も悪魔の要素を取り入れている。
でもぺん兄のヘリは悪魔ではなく、自分たちを守り導いてくれる翼だ。
─── 屋上にいる人。俺が低く飛んでそっちに行くから警察ヘリを撃って。
─── ボス。そこは、射線が通るから一つ奥の遮蔽に隠れて。
─── 教会付近にヘリが飛んでいるから、ユニオン側に戻って!戻って!
─── こっちサーマルヘリ付いてきている。金持ちフリーだから安心して逃げて。
普段はムードメーカーで弟子たちを気にかけてくれる優しいお兄ちゃんなのに、犯罪実行時は至極真面目な雰囲気になる。失敗しても怒らない。むしろ自分が守れなかったと反省し始める。そして次にどうすればいいのかを教えてくれる。
褒めること、ねぎらうこと、欲しい言葉を全部くれる。
ヘリが強い人は「空の悪魔」と呼ばれるらしい。
でもぺん兄のヘリは悪魔ではなく、自分たちを守り導いてくれる「守護の翼」だ。
「俺たちはお前のヘリじゃなきゃダメなんだよ」
仲間や組織外の知り合いにヘリ乗りについて相談したことがある。が、結論は「乗れるけど送迎程度」がほとんどだ。今のヘリ乗りはレベルが高く、ギャングも警察も「乗れれば良い」わけではない。
アタックとその回避、上空からの状況報告、指揮を執るIGL。ヘリの役割は多い。
アタックするには相手の動きを読むこと、ヘリの弱点を知らないといけない。報告するにはその犯罪の流れと街のランドマークの場所・名称を知らないといけないし、車の動きで今何をしているのかを予測しないといけない。IGLには報告をまとめ優先順位を付ける力がいる。
お前が「空の悪魔」と呼ばれるのを拒む理由も、誰と比べているのかもなんとなく分かる。比べてしまう気持ちも分かる。
でも、そうじゃないんだ。今、俺たちの仲間はお前で、お前は俺たちにとっては唯一無二のヘリ乗りなんだ。
卑下すんなよ。もっと自信持てよ。俺がやったんだって胸を張れよ。合同で他のヤツにヘリ役を譲ろうとするなよ。
俺たちにできない事ができるお前はすげぇんだよ。
俺たちはお前のヘリじゃなきゃダメなんだよ。
自分は「空の悪魔」ではない。
その二つ名を名乗るには、自分の技量はまだまだだ。OLDだ古参だなんて呼ばれているが、他のOLDたちと肩を並べられるほど上手くはない。
犯罪時、自分の役目は上空からの報告を警察ヘリの邪魔、状況によっては仲間のピックやカバーだ。やることが多い。必要性が分かっているから最初のヘリは借金をして買った。
ただ、ヘリ1台で警察ヘリ2台の相手をするのはキツい。しかも相手はこの街でもTOPクラスの面々だ。警察の新人ヘリ乗りも遠慮が無い。ガツガツアタックを仕掛けてくる。
自分は本来アタックヘリが得意だ。地上でもラークの方が好きだ。緊張するし焦ると早口になるし、IGLは向いていないと思う。
今できることをやるしかない。
初めて挑んだ宝石店強盗は中のギミック処理中に外側からどんどん削られ、最終的にヘリの自分とラーク1台、店内の3人だけになってしまった。
警察ヘリは2台。操縦士はよく知っている。遠慮無くアタックしてくる。
ダメージを受けたヘリを修理し、もう一度宝石店に向かう。現場で待ち受けていた警察ヘリに屋上でダウンした仲間が捕らわれているのが見える。
「子供たちを返せ!」
思わず声を荒げた。気付いた仲間の声がする。
なんとかアタックを仕掛けて助けたい。でも1台しかないヘリが落ちたら、店内の仲間が脱出するときにフォローができない。報告をしながら牽制することしかできない。
そのうちまたヘリのダメージがたまった。もう所持金が無く修理もできない。最後のラークも落ちて外は自分だけになった。
爆発するよりましだと地上にヘリを降ろす。徒歩で宝石店に向かったが、あえなくダウンしてしまった。
悔しい。ふがいない。初めての金持ちやギミックのプレッシャーに耐えたボスや屋上に配置した新人たちを守れなかった。
やはり自分は「空の悪魔」になれない。
それからは必死に座学をした。今までやってこなかった車両の検証もした。
ヘリの重要性は重々分かっている。自分のスキルアップのために警察にいるトップクラスのヘリ乗りに教えを請うた。
自分の弟子にもヘリを教えた。日が昇っても終わらない日もあった。
その甲斐あって、パレト銀行や金庫強盗では弟子にヘリを任せ地上で仲間のフォローをした。
ボスを始め仲間全員の技術が上がり、大きめの犯罪で利確したあとにやっとヘリの借金が返せた。レア度は低いけれどスポーツカーも用意してもらえた。潤ったギャングプールから修理費を出してもらえることになった。もう修理できずに何もできなくなるということはなくなった。弟子にヘリを買ってあげることもできた。
失敗した犯罪もあったけれど、ユニオンヘイストもパシフィック銀行強盗も貨物列車強盗も利確できた。MVPと言われることもあったけど、これは自分一人だけではない、仲間の力があったからだ。自分よりすごい人はたくさんいる。
ある日、停めていたヘリが車にぶつけられ横倒しになっていた。
その光景に、昔、「空の悪魔」と呼ばれた友人が同じ目に遭ったことを思い出す。
─── 少しは「空の悪魔」に近づけただろうか。
遠くの空を見上げていると、買い物の終わった弟子に声をかけられた。
どうやらいいものが買えたらしく顔はほころび、買ったものを見せてくれる。
その無邪気な様子に、自分も昔はこんな感じだったことを思いだした。
自分はまだまだかもしれない。
でも、この弟子たちが活躍する未来を見てみたいと思った。
Tyrian Purple
貝から採れる希少な染料で、別名インペリアル・パープル、貝紫色。Dear13ro. 所有フロガーの機体色。
古代では高貴な家柄や権力者、高位の聖職者の象徴であった。
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