テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
### 第七段階――隠すことに疲れて
翌朝。
ダダドゥー卿は、いつも通り部屋を出た。
「……おはよう」
声は出せた。
けれど、以前よりずっと小さい。
シリンジョンが振り向く。
「おはようございます。……今日は静かですね?」
「そうか?」
ダダドゥー卿は笑ってみせた。
「少し眠いだけだ」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥がまた重くなる。
――咳が出そう。
ダダドゥー卿はすぐにその場を離れた。
廊下の角を曲がり、人のいない場所まで来る。
「……っ、げほ……」
小さな花びらが一枚、床に落ちた。
「また……」
拾おうとする。
しかし、指先が止まった。
「……もう、何枚拾ったんだろう」
数える気にもなれなかった。
-–
### 第八段階――日常が少しずつ崩れる
それから数日。
ダダドゥー卿は、以前なら簡単にできていたことにも時間がかかるようになった。
階段では途中で立ち止まる。
話している途中で、言葉が途切れる。
夜になると眠りが浅くなり、朝には疲れが残る。
それでも誰にも言わない。
「大丈夫」
聞かれるたびに、そう答える。
けれど、その言葉を言うたびに――
自分自身にも嘘をついているような気がした。
-–
### 第九段階――小さな証拠
ある日。
シリンジョンが部屋を掃除していると、机の下に小さな花びらが落ちているのを見つけた。
「……花?」
拾い上げる。
この部屋に花など置いていない。
シリンジョンは不思議そうに首をかしげた。
そのとき――
「それは……」
背後から声がした。
ダダドゥー卿だった。
一瞬、表情が固まる。
「……外から入ってきたんじゃないか?」
「そうですか?」
「そうだ」
少し早口だった。
シリンジョンは花びらを見つめる。
「……分かりました」
それ以上は聞かなかった。
ダダドゥー卿は、ほっと息をつく。
けれど――
安心したはずなのに、胸の奥には別の感情が残った。
――本当は、気づいてほしい。
その気持ちに気づいた瞬間、ダダドゥー卿は目を伏せた。
「……何を考えてるんだ、私は」
誰にも聞こえない声で呟いた。
隠したい。
でも、本当は一人で隠し続けるのも苦しい。
その二つの気持ちが、心の中で静かにぶつかり続けていた。
コメント
1件
よかった……!第4話、めっちゃ刺さったわ。 ダダドゥー卿が「気づいてほしい」って思っちゃうとこ、もう胸がぎゅってなった。隠すのに必死で、でも一人は辛くて、その二つがぶつかる感じ、すごくリアルで痛かった。シリンジョンが花びら見つけたときの一瞬の空気、やばかったな……ハラハラした。 続きが気になりすぎる😭 更新楽しみにしてる!
チャンス@ヤンデレ化
129