テラーノベル
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沈黙の中で、心臓の鼓動ばかりが大きく響く。
悠真が何か言いかけて口を開いた、その瞬間――
「おーい、悠真! ビール冷えてるぞー!」
リビングから亮の声が飛んできた。
咲は反射的に肩をびくりと震わせる。
悠真は小さく苦笑し、すすいだ皿を置いた。
「ほら、兄ちゃんが呼んでる」
軽く言い残して、さっさとリビングへ戻っていく。
取り残された咲は、濡れた手を止めたまま立ち尽くしていた。
――もし呼ばれなかったら、何を言われていたんだろう。
胸に芽生えたもやもやは、答えのないまま、じっと咲の中に残った。
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