いちにちめ、ふつかめ。
ライブを終えて、全力で楽しんで貰俺が居なくてもえるように力を尽くしても、まだ足りなかったんじゃないかって1人になると後ろ向きなことばっかり考える。
僕のこと見に来てくれてる人なんかいるのかな、邪魔って思われてないかなって気付けば長い時間シャワーから出るお湯に打たれていた。
元貴も、若井も体調とかいろんな不安なことがあっても跳ね除けて輝くように僕には見える。
2人でアイコンタクトして、阿吽の呼吸で見つめ合って音を鳴らして。
僕は?
僕はできてるかな?
おにもつ、になってないかな。
適当に拭いた髪が肩に触れて少し濡れて冷たくて、あぁなんてだめなんだって、けど気持ちがついてかなくて何にも出来ないままベッドに倒れ込む。
またこんな格好でって、元貴に叱られる。
涼ちゃんしっかりしてよって若井に笑われる。
2人みたいに、キラキラカッコいい人でありたいのに。
僕だけ輝けてない。
2人はダイアモンドみたいにキラキラしてるのに。
···こんな夜は元貴のそばにいたいけど、さっき辛そうな元貴にしっかり休んでね、と笑顔で告げたのは自分だ。
でも笑ってそう言えただけ百点満点かも、と笑おうとしたけど表情が上手く作れなくて深いため息だけが漏れる。
けどその時の元貴は苦しそうな顔をしていて頷いただけだったから、僕の笑顔なんてなんにも意味を成しては無かったのかもしれないとその瞬間がまた僕の心に深くのしかかった。
「···寒い」
髪、乾かさなくちゃ。
いつもなら元貴がしてあげるって優しくドライヤーしてくれるから、僕はその優しさに慣れきってしまった。
元貴が側にいてくれないと息をするのも苦しいと感じる時があるようになってしまった。
「···っ、ほんと、ひとりじゃなんにもできない」
タオルで強く髪を拭いてふかふかだけど冷たい布団に寝転んだ。
出来ないじゃない、やらないだけだろ。
甘えるな。
もっとちゃんとしないと。
置いていかれるぞ。
いらないって、お前なんか。
「····っ、いやっ!」
おもわず飛び起きて、うとうとしてしまっていたとわかる。
寒いはずなのに汗ばんでしまっている身体を自分で抱いてさっきの声、みたいなもの思い出して震えてた身体と心細さを抑える。
コンコン
「······?」
小さく部屋がノックされた気がしてドアをパッと開ける。
「···こら、俺じゃなかったらどうすんの、無防備でしょ」
「も、とき」
「ごめんね、遅くなって···どしたの、汗すごい」
なんで元貴が来たのかわかんなくて、けど彼は体調も良くないはずだったし、とそもそもこれはまだ夢の中なんじゃないか、と頭の中でくるくるといろんなことを考えて固まっていた僕を優しく連れて部屋に入り、ぽふ、とベッドに腰掛けた。
「えと、もとき?何かあった?体調は?」
「うん、薬効いてきたから···何かあった、は涼ちゃんでしょ?ごめんね、さっき聞いてあげられなくて」
収録とか、撮影とかの時の表情とは違う穏やかな顔で僕の額に触れるその手を振り払う。だって汗かいてるし、きっと顔だってボロボロだから、近くで見られるのも嫌だった。
「ごめん、汗かいてるからやめて···僕はなんともないよ、気にしすぎだよ。早く部屋に戻って!休まなきゃ···大事な身体なんだから···」
元貴にこれ以上見透かされたくなくて目線を外し、顔を見ないようにする。
そんな嫌な態度の僕に元貴はそっと手を伸ばしてくれて、温かい、力強い腕の中に抱き込まれた。
「涼ちゃんの汗なんて気にもなんないよ、それより辛そうな顔してる恋人の方が心配···こっち見て、俺の目見て」
まん丸の綺麗な黒い瞳。
やっぱりキラキラしてるその瞳に僕はどううつってる?
「見れない···元貴が、きれいで」
「じゃあ、感じて」
くい、と顔を元貴の方に向けられてそのつややかな唇が触れた。
僕が受け入れてるのをわかって、優しく、けど深い口づけを繰り返す。
はぁ、と漏れたその息遣いがなんだかとっても好きだな、と思う。
「···ごめん、ごめんねぇ、僕のせいで、大丈夫なフリも出来なくて元貴がいなきゃ何にも出来なくて」
カッコ悪いってわかってるのに涙がとまらない。ゴシゴシと袖で擦ろうとする前に手を押さえられてぺろり、と元貴の舌に涙のあとを舐められた。
「汚いよ···それに酷い顔してるから···」
「お顔洗ったでしょ?ノーメイクすっぴんの可愛い顔だよ。っていうか誰がいつ大丈夫なフリしてなんて頼んだ?俺が居なくても何でも出来るようになってってお願いした?」
少し強い口調のに怒らせてしまったかとびくっと反応してしまう。
そんな僕に元貴は優しく頭を撫でた。
「俺がいないと生きられないって言ってくれたのは誰?そりゃ強気な涼ちゃんもなんでもこなせる涼ちゃんも良いけど···一生俺には甘えてて貰わないと、俺が寂しい」
「いいの?こんな僕で」
「そこも含めて愛しちゃってる」
さらりと言ってのけて元貴が僕を押し倒し、シャツの中に手を入れて来る。
指先が胸に触れると思わずヘンな声が出た。
「ふふ、可愛い···」
そのまま服を捲りあげて更にその先に進もうとする元貴の肩を慌てて押さえた。
「ちょっ、ストップ!今日はしないよっ!本当に早く休まなきゃいけないから!」
「···はあっ?今のはどう考えてもする流れでしょ!?」
「だめだめ、僕もしたいよ?けど本当に今日は休んで!ねっ?」
お願い、元貴のため!そう見つめる僕に負けた元貴はわざとらしくため息をついて僕の隣に寝転んだ。
「···まぁ、それがいつもの涼ちゃんか」
そう言って部屋の電気を消したその表情はなんだか少しうれしそうだった。
2人の体温で温もりを持った布団が心地いい。すぐに元貴の微かな寝息がすぐに聞こえてきてやっぱりかなり疲れていたのだと思う。
「ありがとう···大好き···」
また僕はだめな自分を責めてしまうかもしれない。
でもまだ弱い自分もまだ足りない自分もぜんぶその隣で眠らせて貰えるなら怖くない気がした。
何もかもひっくるめて愛してくれる、そんな風に思わせてくれる元貴となら··· もう少し身体を寄せて目を閉じればすべて優しく溶けて夢の中に落ちていけた。
コメント
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リクエストの書いて下さりありがとうございます🙇♀️どの作品を読んでもとっても素敵な文章で憧れます🍀*゜
❤️くんの一生俺に甘えてて貰わないと、俺が寂しい、めちゃ刺さりました〜🥹💓