TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

マッドハッター〜ユナティカ 港町にて〜


「ぺ、ペスト医師!?」

ペスト医師とは、ものすごく簡潔に言うと黒死病というペスト菌による感染症によって病に伏せた患者専門の医師なのだ。しかし、彼らは、私のような呪われた存在を治療と称して命を狙ってくるちょっと変わったペスト医師なのだ。


「<マッドハッター>。新しい仲間を率いて旅をしていると聞いたが。」


医師の中に一人だけごついガスマスクを付けているやつがいた。恐らくこいつがリーダー格のような存在なのだろう。


「いやー人気者は辛いな。どこから情報が入ってくるのか知りたいぐらいなんだが?」


「くく、我々はお前が思っている倍以上の同胞が存在しているのだよ。」


横を見ると、先程私達の料理の注文を受けていた店員がクロスボウを構えていた。


「なるほど、常に身近に潜んでいたのか。」


「言っただろう? お前は我々を甘く見すぎたのだ。」


勝ち誇ったように話すペスト医師。他のお客がまだいるにも関わらず集団でクロスボウを構えているこの状況。一般人がどうなろうと関係なのだろう。


「お前達も私のことを甘く見過ぎだ。」


私は、両手を思いっきり叩く。すると、横にいた店員のクロスボウがあら不思議、綺麗な花束に変わった。


「店員が最初から、本物の店員じゃないことぐらいわかってたさ。ここは海鮮を中心に扱う店なのに、磯の香りが服からしなかった。それに、綺麗すぎる。」


追い討ちをかけるように私は指を鳴らすと、店員が持っていた花束から植物の蔦が伸び始め、それは急成長する。


メキメキ…。


蔦はだんだん巨大化し、店員と目の前にいたペスト医師達はその蔦にあっという間に飲み込まれた。状況がわかっていなかった客は次々と店から逃げていく。

やがて、客がいなくなった頃、蔦は一箇所に集合し、巨大な一輪の花となった。


「す、すごい…。けど、魔力の使い過ぎだよ!」


「正当防衛だ。仕方ないだろう?」


だが、スパイキー達の言う通り、魔力を使いすぎた。おまけに少し…。いや、かなり暴れ過ぎたみたいだ。


「面倒なことになる前に逃げるぞ。」


「あいあいさー!」


巨大な一輪の花に銭をいくつか投げる。蔦の間にペスト医師と店員の手らしきものが見えるが、彼らが生きているかは知る由もない。だが、一応会計はしていく。

私達は人混みに紛れてその場を離れる。初日からこんな騒ぎになるなんて誰が想像できただろう。しかも、まだ友人を見つけていないというのに。


「こんなに騒いでしまったら、友人を見つけるのは、難しそうだ。」


建物の影に身を潜めて様子を伺う。


「どうやって探すの? ハッター。」


「本当はあのカフェで聞き込みをしようと思っていたんだがな。まさか、ヤブ医者が潜んでるとは思わんなんだ。」


以前は変装して町に出たりしていたのだが、ここエスタエイフ地方にくる前にいた地方はペスト医師の本拠地があったので変装が必要だっただけだ。この本拠地より何万メートルも先の地方まで追ってくるなんて予想外だ。


「どーしたもんかな。」


私が頭をフル回転させていると。


「お困りでしょうか?」


「!」


背後から声がしたので、私はゆっくり後ろを向いた。そこには長い黒髪の男性がいた。この建物の影にいるうえに、さらには私の背後に音もなく現れるとは。


「何者だ? 答えによってはここで死んでもらう必要がある。」


私はその男性に狙いを定めるように指を鳴らす準備をする。スパイキー達はその男性から目が離せず、ずっと見ている。


「安心してください。私は主の使いで貴方を探していました。」


「…私を?」


男性は胸に手を当て、軽くお辞儀をする。


「私は、<クロウ>。元は遥か西より存在する寺院のガーゴイルでございます。」

この作品はいかがでしたか?

51

コメント

2

ユーザー

目に止まって一気に読ませていただきました。とても読みやすくて面白かったです!

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚