──────いえもん視点──────
ガブッ
そんな軽い音ともに俺の腕に噛みつかれる。不思議と痛みはない。甘噛みされたような感覚。しかし、次の瞬間頭が重石を乗せたのかと思うほど重くなり、心臓はバクバクと高鳴り、心拍数が上がるのを感じる。全身から血の気が引く感覚。手の感覚がなくなり、酷く冷たくも感じる。
「あー…うぁー…?」
呂律も回らない。身体のあらゆる機能がこの僅かな時間に退化してしまったのではないかという錯覚。上手く、思考することすらままならない。何が起こっているのだろうか?
何も…出来な──────
ふらっと視界が暗転する。目の前の全てがぼやけ、そのまま意識を手放した──────
「──────!!」
なにかの声が聞こえる。遠くから、微かに聞こえる。瞼が重い。目を開けるのがこんなにも大変だったとは。目をゆっくりと開けば視界に光が入る。その瞬間、景色に色が現れる。ぶわりと広がる情景を、俺は。この目で見ることができた。死んだものだと思っていたぶん、生きている、その実感は何よりも素晴らしいことなのだと思えた。
「あ、起きましたよ!」
みぞれさんがそういえば、真っ先に飛びついてくるのは──────ぜんこぱす。ぜんさんであった。俺は一瞬身構える。つい先程、俺はぜんさんによって死にかけたのだ。警戒しても仕方がないだろう。しかし、その警戒は自分の意思でとくことになる。何故ならば、ぜんさんの瞳には薄い氷が張ってあるかのような透き通るほど美しい瞳。その瞳は、瞳の色とは正反対の暖かな色を持っていた。俺の事を攻撃してきたあの黒い瞳とは違う。そのことを確認した後、警戒を解いた。
「ごべん”な”ざい”」
ぜんさんは瞳に大粒の涙を貯め、俺に抱きついてくる。小さなクマの耳はしょんぼりしているように少し垂れていた。お前が攻撃したんだろ、とは言えなくて、無言で頭を撫でておく。何となく、小動物みたいで可愛いと思ったからだ。
「大丈夫でしたか?すみません…気づけなくて…」
めめさんが申し訳なさそうな顔してこちらを見る。なんともない、と言ったら嘘になるが概ね目立った外傷はなかったので大丈夫ということにしとく。
「大丈夫ですよ。俺こそ、逃げれなくてすみません」
少しだけ、和やかな空気が流れる。その空気をぶち壊したのは八幡さんの一言だった。
「で?ぜんさんは人間殺害未遂なわけだけどこのままでいいん?」
そう言いながら俺のことを親指で指す。人間…おそらく俺の事だろう。八幡さんの意見で場に違う空気が流れたのは事実だが、ぜんさんが犯した罪を考えれば当たり前なのかもしれない。
「ぜんさん。弁明はあるのかしら?」
菓子さんはそう尋ねる。すっかりこの場は裁判所みたいな雰囲気に変わりつつある。いや、仕方がないことではあるのだが。
「えっと…無性にお腹がすいて。死の危険を感じて。美味しそうな獲物が目の前にあるわけだから…その…」
「つまり本能だと?」
「うん…まあ、そうなっちゃう…かな?」
…微妙な空気が流れる。種族的な本能。吸血鬼ならば血を吸いたくなるし、人喰い妖怪ならば人を食べたくなる。これは当たり前だった。何故ならばその種族はその本能に抗えない。抗えたものはそのずばぬけた理性で耐えることができているだけでそんな特殊例はほとんど居ないのだ。
しかし、矛盾を感じる。
「なら、なんで今まで大丈夫だったんですか?」
ラテさんが俺と全く同じ疑問を抱いていたらしく、俺が思っていたことがそのまま場に出てくる。ぜんさんは長い事悩んだ後、とうとう打ち明けてくれる。
「実は、少し記憶がかけてるんだよね。その時を境に無性にお腹がすいて…。最初は理性が効いたけどもう…」
記憶が欠けている。それは、嫌な思い出を感じさせられる。記憶を植え付けたり、変えられたりすることが出来るやつを、俺たちは知っているからだ。
「…隠しきれないでしょうから、本当のことを言いましょう。」
先程まで黙っていためめさんが眉をキリッとあげてそういう。俺たちの視線はめめさんに集まる。
「ぜんさん、あなたは本当は死んでるんです。」
「…ぇ?」
突然、ぜんさんが死んでいることが明かされる。到底信じられる内容ではなかった。だって、目の前にはぜんさんがいるのだから。しかし、これにも前例がいる。メテヲさんだ。メテヲさんは偽物が本物のようにこっちとして活動していた。そう考えるとぜんさんは偽物の可能性もある。
「ぜんさん、あなたは偽物ではなく本物ではありますのでご安心を。」
めめさんがぜんさんの動揺、俺たちの動揺を察知したかのように情報を補完する。ひとまず、俺たちは胸をなでおろした。
「じゃあぽれが死んでいるというのは…?」
ぜんさんは冷や汗を大量に流し、唇を震わせながらそう、問う。あぁ、とめめさんはまた、言い直す。
「ぜんさん、あなたは1回死んでるんですよ。」
ここで切ります!ぜんさんほりさげパートツーって感じですね!これ三月中に物語終わるのか怪しくなってきましたね!うん!ここまで言ったら1年続けって思っちゃいますけど。
9万ハート突破しました!!!ありがとうございます!!感謝感激の極み…!!てことで記念イラスト↓↓↓
菓子茶子ペアですね!8万ハートの時、本来は茶子さんのはずだったんですけどガンマスさんに変えてしまったので今回はタッグとして茶子菓子同時にしました!めっちゃ時間かかったけど上手くできたので満足してます!
それでは!おつはる〜
コメント
2件
ちょうど残酷な真実