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明日も出勤。久しぶりのお家映画でもしよっかな~。
お風呂を上がりスッキリした麗三は、1960年代のロマンチックなフランス映画を観て涙。あ~、カタルシス。泣くと何だか、あとが爽やかな心地になるね。
――――その翌日も、高梨さんは来店しなかった。
(あきちゃったかな? はっきり言って、それならこっちは願ったり叶ったりなんだけど……)
*
今日はなおちゃんとお家デート。早く逢いたい。
「お疲れさまっ!」
「あ、ララ姐さん、今日はうちらより着替えるの早いやん!」と安湖ちゃん。
「ウフフ。デートなんだ~」
「わぁ、いいなー」
遥ちゃんもニッコニコ。
「じゃ、お先~」
「ララ姐さん、お疲れさまぁ」
今日は元気いっぱいの帰り道……。でもなんだか、やはり、妙な変な気配を感じる。
今日も、何度も後ろを振り返ったり、キョロキョロする麗三。
(誰も怪しい人居ないな~)
コンビニへも寄らずに帰るんだ。仕事前にカレーを煮込んでおいた。もちろんなおちゃんといただくのだ。ノンアルもあらかじめ買ってあり、冷蔵庫でスタンバっているし。
お風呂も済ませサッパリ。いそいそとネグリジェ姿にエプロンを付けて、コトコトコトコト……お鍋に火を入れる麗三。
ピンポーン。……なおちゃんだ!
扉ののぞき穴確認。愛しきプリンスが立っている。ガチャリ。
「なおちゃ~ん」
「麗三。 あ、おいしそうな匂いがするね」
「ハイ。カレーライスよ、今日!」
「わっ、イイね!」
そしてプシュッ! とノンアルを開け乾杯する二人。
麗三は最初笑っていたが、次第にスマイルに陰りが出てきた。
「……大丈夫? 麗三」
「うん、あのね、 なおちゃん……あたしの気のせい、と思いたいんだけど、きのうと今日の帰り道、誰かにつけられてた気がするの」
「え!?」
「う……ん」
「まさか……いや、怖がらせたくないんだ麗三を。でももしもの為にあらゆる事に備える必要がある。高梨さんか?」
「……あたしもそれを考えたわ。実は、あんなにあたしに熱を上げていた高梨さんが、きのうも今日も、来店されていないの」
「そうなのか……」
「なおちゃん、怖いよ! あ、店長には高梨さんの件、全部話したわ。何かあったら絶対に我慢なんかしないですぐに言ってと話してくださいました」
「そか、良い店長さんだね。それは心強い。しかし……帰り道をこれからどうするかだ。オレのほうが仕事が終わるのが遅いしな」
困り果て怯えている麗三。
カレーを食べ終わり、二人はリビングのソファへ移動した。
「なおちゃん、あたしはどうすれば……」
「麗三、タクシー。駅からタクシーを使うのはどうだろう?」
麗三ははっきり言ってかなりの稼ぎだ。しかし、自分はそれほど使わず、実家のママに仕送りし、息子の葉也途には定期的に食料品を買い込み送ってやっている。華やかな見た目ほどは、お金を持っていないのだ。
「ううん……お金が…続かない」
「ごめんね! 麗三。オレが出してやるべきなんだけど……」
「そんな! そんな事ないわ、あたしの事だもの。なおちゃん、謝らないで」
なおちゃんは娘の早季ちゃんの学費、ご実家への仕送りとなおちゃんの家のローンで手いっぱい。決して裕福ではないのだ。
「いや、申し訳ない……麗三。 麗三、明日は取り敢えずお店を休むんだ。そして、オレに話してくれたまんまを店長さんに相談して、タクシー代を出してもらうようにしようよ?!」
「はい、わかりました」
そして翌日のお昼前、麗三は『夢と黒猫』に電話をし、今日休みたい旨とタクシー代のお願いについて詳しく店長に話した。
「ララちゃん、何にも気兼ねは要らない。身の安全が一番だからね。タクシー代は毎日渡すよ、ね」
店長はそう言ってくれた。
麗三はこれで安心して出勤できる。
「おはよ~、安湖ちゃん」
「あ、ララ姐さんおはようさんですぅ、具合い大丈夫? みんなで心配しててん」
「ごめんね、心配かけて。大丈夫よ、安湖ちゃん。疲れから元気なくしちゃってただけよ」
「あ、ララ姐さんおはよ~」
遥ちゃんと十木恵ちゃんも待機室に入った。今日は里奈ちゃんがお休みの曜日だ。
今日も例の高梨さんは来られなかった。
何だか……かえって不気味だ。
もしも万が一、高梨さんがあたしの事をつけ回しているとしても、お店から駅までは賑やか。そして、隣駅に着いたらすぐタクシーに乗っちゃうし、大丈夫!
退店時、ララは気合いを入れた。
いつものスタッフ用ドアを開け出て行った。お店から数百メートル行き、スクランブル交差点で青信号に変わるのを待っていた。
その時だ。
「ララちゃ~ん……」
物凄い至近距離、背後から……名を呼ぶ声。
この声……高梨さんだ!
「おっと、振り向かないで。僕ちゃん、怖いものを持ってるよ? 命が惜しかったら言う通りにしてね、ララちゃん。わかった? わかったら声を出さずに頷いてちょ」
(コワイ! 助けて! 誰か!)