桃×黒
二次創作。本人様には関係ありません。
息が少しずつ上がる。しづらくなる。
自分の存在が希薄になる感覚。
隣の部屋にいるはずの彼氏には届かないし、届かなくていい、なんて思ってしまった。
なんとなくの気持ちでエゴサをしてしまった。
世界中で万人に好かれる人なんていない。そんなことわかっている。
だったら気にしなければいいのだろう。
でもそんなことできるほどのメンタルは、生憎持ち合わせていない。
こんな時、ないこだったらどうするだろう。どう思うのだろう。
『同じ土俵じゃない』
『武道館に行ってないくせに』
そう笑い飛ばせるのだろうか。
そんなないこが羨ましくもあり、虚しくもなる。
なんで俺なんかが彼女なのだろうか。
みんなの前では自信もって歌のおにいさんとか言えるけど、実際は自信なんか全くないし、周りより劣ってすら聞こえる。
社長やってて、タスクこなしながら歌ってライブして。
そんなあいつよりは特に。
「大丈夫だよ、あにきは。」
そんな言葉と共に、目の前が暗くなった。
「ないこ…?」
「あれ?バレちゃったか〜。」
暖かさを感じる。多分ないこが俺を抱きしめてる。
俺よりめちゃくちゃ背の高いないこは、普通に抱きしめられているだけのはずなのに、視界が遮られる。
でもだからこそ、暖かさを近くで感じられる。
「仕事してたんやないん?」
「あにきが1人で部屋にいる時、思い詰めがちだから心配だったから。」
そんなことを普通の顔で言ってのける彼は、カッコ良くもあり、どこかおかしくも感じる。
やっぱり君は勘が良いのかもしれない。
「なあ、ないこ。」
「なに?」
「俺はまだここにいて大丈夫なん…?」
『ここ』ってどこなんやろう。
いれいすなのか、この家なのか、はたまたネットの中なのか。もしかしたらその中のどれでもないのかもしれない。
俺が聞いた事だけど俺自身にもわからなかった。
でも。
「何言ってんの?当たり前じゃん。」
そう言い切った頼もしい君の声。顔は見えないけど、きっと自信に満ち溢れた顔をしている。
今はまだ、そんな君の暖かさに浸りたいと思った。
久しぶりに。
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