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「ああ〜…二時間正座で説教はもうパワハラでしょ〜…」
肩と腰からゴキゴキとありえない音が鳴る。クソッあの先生…もう嫌いだ…アイツの授業全部サボってやる!!と到底出来ないことを心に誓う。
先生曰くアリサは先に帰らされたらしく、今日は1人で虚しく帰り道を歩く。
ていうか何で私の方が多く怒られてるんだ…
誘ったのアリサなのに…
どうしようもないムシャクシャした気持ちで鬱になる。
明日から食堂のミントアイスは全部私が食べちゃおう____と膨れていたとき、
何処からともなく『う…』という呻き声が聞こえてくる。
え、もしかして幽霊?と体に力が入ったが、どうやらそういう訳ではないらしい。
「あ…熱い…」
「人が倒れてるゥーーーーー!?」
呻き声は少し先の歴史資料室からだった。
その正体は、恐らく幽霊ではなく倒れている病人。
額に手を当てるとすぐに熱が伝わる。
「私が来るまで倒れてたってことは…かなりヤバい…」
呼びかけてもつついても反応しない。 艶のある髪の隙間から汗を流し、ただ苦しそうに息をしている。
これ、急がないと本当にヤバいんじゃないか。
取り敢えず長ったらしい説教のせいでガチガチに固まった背中にその人をかつぎ、走って医務室まで急いだ。
この場合、『廊下を走るな』という校則が適応されない事を信じて。
「ただの知恵風邪だね、寝てれば治るから心配らないよ」
「何だぁ、風邪か…良かったぁぁ…」
「アンタはどうしてタンコブ出来てんだい」
「あはは…転んじゃいまして」
焦りに焦って焦りすぎた結果、
医務室に着くまで派手に五回転んでしまった。
そのおかげで頭には立派なタンコブが5個誕生したのである(
「で、この子は何処の組の子だい?」
「あ、それが知らないんですよね。たまたま見つけただけなので」
「それは困ったね…ちょっと調べておくれ」
私は忙しいから、と【生徒資料】と書かれたタブレットを渡される。
一生徒にこんなの見せていいのか?と疑問になるが早く帰りたいので黙々と手元を操作し、同じ顔の写真を探す。
「…あ、これかな?なんか顔が一緒な気がする」
手早く資料をスライドしていくと、それらしきモノを見つけた。
髪、身長、制服、目…は閉じてるからわからないけど多分この子だ。
「148センチSクラスの推薦特待生…ノクト・ティザーデゲート…
勉学に非常に優れていて優秀な…悪使!?」
「うるさいよ!」
「スィアセン!!」
あまりの事実に、資料とその子を交互に見る。
いや、別にそんな驚くことではないけど、悪使は初めて見るから思わず凝視してしまう。
学院に数名しかいないうちの1人…
しかも推薦特待生…
火照った頬に繊細なまつ毛、なにより光沢感のあるアメジストの髪…
近くで見ると、 なんだか次元が違う生き物のように見えてくる。
そしてちょっとエロい気がする←
サキュバスの色気すげぇ…←
「あの、この人Sクラスのティザーデゲートって人らしいです。悪使の」
「そうかい、ありがとう。その子は親に連絡しとくから、アンタは早くお帰り」
「分かりました、さようならー」
そっと医務室のドアを閉め、小走りで門を目指す。
頭の中であの子の吐息を音を思い出す。
あの子に触れた手に力が籠る。
消えない。あの、赤みを帯びた顔と艶やかなアメジストが。何故か分からないけど、胸が酷くムシャクシャする。
きっと、あの子は、あの子の瞳は______
「…私って、実は変態?」
誰かに話したい気分だけど、誰にもあの子を知られたくない。アリサにだって。
こんなに激しい独占欲抱いた事ない。
たしかSクラスだったよな。明日、顔でも見に行こうかな…いや相手は私のこと知らないか。
感じたことのない鼓動の速さに戸惑いながらも、帰路を急ぐ足は止まらない。
とにかく、今は何処かへ行って、ここを離れたい。でも戻ってもう一度あの子を見たい。
矛盾だらけの心が複雑に絡み合う。
先程まで感じていた苛々はとっくのとうに消え去り、代わりに知らない感情に体を締め付けられる。
なんだこれ…。
もう、一体、どうすればいいんだ。
帰り道の間、頭の中は、ずっとあの子の名前が浮かんでいた。
「…アリサに悪使のパートナー選抜詳しく聞いてみようかな…」
約4000年前に結ばれた天使悪魔修好通商条約。
それは今の世界【種族混合の子供達】誕生の基盤となっている。
生まれた子供たちの大半は天使の遺伝を色濃く受けた。相手を愛し、慈しみ、相手の為なら自分を犠牲にする自己犠牲精神がこの世界の当たり前となっている。
しかしそれが100%とは限らない。99.9%の場合、残りの0.01%は、悪魔のように相手を蔑み、従わせ、屈服させる素質がある。
この世界ができてから、そのような者たちは依然何かを犯し、悪い意味で世間に名を馳せている。
悪魔はそうする。そうするべくして、相手を愛す事しかできない。
もしまだ、 この世界にそのような者がいるならば_____
ペンディメリィ・グレイス。
彼女の名は、彼女の大嫌いな歴史に残る事間違いなしだ。