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第3話 『 ぎこちない距離 』𓂃 ‧₊˚. ⸝⸝
yan「et、ノート貸してくれる?」
その一言だけで、こんなに嬉しくなるなんて思わなかった。
et「うん、いいよ。」
机の上にそっと置く。
指先が、触れそうで触れない。
前なら、わざと触れてきたのに。
今は、ちゃんと距離を取ってくれる。
優しい距離。
他人の距離。
yan「ありがと。」
et「どういたしまして。」
会話はそれだけ。
沈黙が、こんなに重いなんて知らなかった。
——友達でいい。
そう決めたのに。
昼休み。
女子たちに囲まれているyanくんの姿が目に入る。
mob「記憶なくなったってほんと?」
mob「好きな人とかも忘れたの?」
etは無意識にペンを握りしめる。
yanくんは少し困ったように笑った。
yan「好きな人は……」
一瞬だけ、視線が教室の端に向く。
etのいる場所。
でもすぐに逸らされる。
et「今はいない、かな。」
胸の奥が、静かにひび割れる。
——ほらね。
もういない。
放課後。
私は先に教室を出た。
廊下の窓から見える校庭が、やけに広い。
後ろから足音がする。
yan「et。」
振り返ると、yanくんが立っていた。
yan「なんかさ。」
et「うん?」
少しの沈黙が続き
yan「お前、前より俺と距離取ってない?」
心臓が止まりそうになる。
et「そんなことないよ。」
嘘。
yan「気のせいじゃない?」
yanくんは眉を寄せる。
yan「……前、俺らってどんな感じだった?」
残酷な質問。
言えない。
言えるわけない。
“恋人だったよ”なんて。
et「普通だよ。」
etは笑う。
完璧な、友達の笑顔で。
et「ただの、クラスメイト。」
« yan目線 »
その言葉を言われた瞬間、
自分の胸の奥が、なぜか少しだけ痛んだ。
理由は分からない。
ただ。
それが正解じゃない気がした。
でも、思い出せない。
etはただのクラスメイト
のはず。
ただ笑いあって
無駄話して
それ以上は、いらない。
——なのに。
どうして、こんなに寂しいんだろう。
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