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数歩進んだその時。
和葉の足が止まる。
そして——
「滉斗!!」
振り返った。
初めて、自分から。
滉斗も驚いて振り返る。
その瞬間、和葉は走り出していた。
距離が一気に縮まる。
息を切らしながら、目の前で止まる。
「やっぱり、言う」
震える声。
でも、もう止まらない。
「好き」
空気が止まる。
世界が静まる。
たった一言。
ずっと言えなかったその言葉が、ようやく形になった。
滉斗は何も言えない。
言ってはいけないと思っていた言葉が、目の前にある。
和葉は涙をこらえながら続ける。
「ずっと前から、滉斗のことが好き」
沈黙。
逃げ場はない。
でも——
滉斗はゆっくり目を閉じて、それから小さく息を吐いた。
そして——
「…知ってた」
そう呟いた。
和葉の目が揺れる。
「ずるいよ、それ」
少しだけ笑いながら、でも涙がこぼれる。
滉斗は一歩近づく。
でも、それ以上は踏み込まない。
踏み込めない。
「俺は——」
言いかけて、止まる。
その先を言ったら、全部が変わる。
でも、もう——
「俺も、好きだ」
言ってしまった。
ついに。
境界線を越えてしまった。
夕焼けが、二人を包む。
でも、前とは違う。
戻れない場所に来てしまったことを、二人とも理解していた。
それでも——
和葉は泣きながら笑った。
「やっと、聞けた」
滉斗も苦く笑う。
「遅すぎだろ」
「ほんとだね」
二人の距離は、ようやくゼロになった。
でも同時に、新しい“距離”が生まれてしまったことも——
まだ、この時の二人は知らなかった。