数日後。
「なんで……なんでこんな事に!」
ドンッ!
デスクを叩きながら毒づくMr.ブラック。部屋の外では書類を届けに来たマネーがブラックを刺激しないようにと黙って立っていた。
「私なら助けられたはずなのに……!私は大馬鹿者だ……!」
すまないが死んだその日も地面を殴りつけながら全く同じ事を叫んでいた。確か手が大惨事になって、まだ治ってなかったはずなのだが大丈夫なのだろうか。流石に拉致が開かないと思い、マネーはブラックが籠っている情報管制室に入る。
「Mr.ブラック……」
「出て行って下さいっ!!」
「そうして叫んでいても何も始まらないというのは貴様が一番分かっているのではないか?」
「だからなんですか!」
マネーはブラックの手を掴みぐいっと引き寄せる。
「それが分かっているなら今貴様がする事が物へあたる事ではないと言う事も分かるのではないか?」
「何故そうも平然としているのですか!?悔しくないのですか!?」
ブラックはマネーの手を振り解き怒りの声を上げる。それにマネーも珍しく本気の怒りを見せていた。
「悔しくないわけがないだろう。だがいつまでも悔しさに囚われているだけでは駄目だという事は俺も分かる」
声は静かだが明らかに怒っている。
(ブラックに書類届けに来たけど……入れる空気じゃねぇ!どうしろってんだよ!)
情報管制室の外では書類を抱えた銀さんがガタガタと震えていた。外に居ても分かるほど中の空気は険悪だったのだ。
(これは一旦出直すべきか……!?)
銀さんは足音を立てずにそろりそろりと逃げ出そうとした。その時
バンッ!
情報管制室の扉が勢いよく開き、銀さんはビクッと肩を跳ねさせた。そのまま中からマネーが吹き飛ばされて来た。
(おいおいおいおい!?これやべーじゃん!てかここに居たら俺殺されるっつーの!)
銀さんは足音を全く隠さず全力のダッシュで逃げ出した。しかし後ろからゆらぁっと出て来たブラックの殺気とも怒気とも言うものを感じ、思わず竦み上がってしまった。
(いやいやいやいや!怖すぎる!頼むから俺を巻き込まないでくれ!)
ガクガクとぎこちない動きで逃げようとするが後ろが怖すぎて遅々として進めない。ギギギ……と効果音が付きそうなほど緩慢な動作で振り返って、次の瞬間後悔した。ブラックの目が射殺せんばかりの鋭さで銀さんを射抜いたからだ。
「ヒェッ……!ごめんなさい、ごめんなさい!何にも身に覚えねぇけどごめんなさい!」
「おや、銀さん何か用ですか?」
口調は柔らかいが声がド低音なので余計に怖いブラックに、カタカタと震えながら持っていた書類を差し出した。ブラックに渡す書類は元は全て数日前にこの世を去った、ウォーターチャレンジ王国・国王のMr.すまないが担当していた書類だ。銀さん一人が一部終わらせただけで数十センチの高さがある。Mr.すまないの死後、国王執務室に入って幹部全員絶句していたのは言うまでもない。不治の病に罹り日常生活もままならないような日々を暮らしていたのに、仕事だけは恐ろしい量をこなしていたのだから。
「銀さん、書類ありがとうございます。ついでと言ってはなんですが……Mr.マネーを回収してくれませんか?うるさいので」
「……は……はぁ……?」
銀さんは頷けなかった。地位的にブラックの方が上であるしブラックが言いたい事も分かるのだが、今はどちらかと言うとマネーが正論であるからだ。
「……悪いがそれは出来ねえ。俺にどちらが正しいかなんてつけれねぇから、自分達で解決してくれ」
銀さんは出来るだけ平静を装ってそう言い、身を翻した。きっとその声は酷く震えていただろう。銀さん自身も自分が冷静で無い事くらい分かっていた。それでも____いや、だからこそか。今だけはこのド修羅場には居たくなかった。
「……じゃ、また後でな」
そう言ってその場を立ち去った。
コメント
2件
更新ありがとうございます!!めっちゃ面白い……!!確かにブラックの言っている事も分からなくは無いけど…今はマネーの言ってる事が正論に近いね、そうだよ。ブラックなら分かるはずなんだよ、早く落ち着けてあげられれば良いと思うな… 最高で何周もしてしまいました✨無理せずファイトです!!
なんで殴り合いしてんの?すまない先生がそれを望んでいるとでも?バカだなぁ、早くいつもどおりに戻らなきゃ、すまない先生が可哀想だよ。