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20××年、この世界は遺伝子の突然変異により、生まれつき能力をもつセンチネルとガイドが生まれるようになった。しかしこの能力は遺伝することは低いため、希少性が高いのである。
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俺はガイドである。
ガイドはほとんどが国家ガイド支援庁センチネルサポートセンター(通称SSC)に登録している。
高校生から入ることができ、それもちゃんとした給料を貰えるからガイドのみんなはバイト感覚でしているところがある。
俺は部活に入ってなくて、放課後は暇なのでほぼ毎日SSCに行っている。最初は職員の人や所長に苦笑いされてたけど、もう今では俺が毎日入り浸っていることに慣れているようだった。
放課後、俺はローファーを履き、今日も今日とてSSCに向かう。
IDカードをかざして入室すると、職員の佐藤さんが声をかけてきた。
「あら、こんにちは。八尋くん」
「こんにちは、佐藤さん」
「そういえば、所長から八尋くんが来たら所長室に来るように伝言を頼まれていたんだったわ。」
「え、所長室にですか?」
「ええ、…まあ八尋くんが怒られるようなことをしたとは思えないから安心しなよ」
「…そうですよね。ありがとうございます」
所長室の扉を叩くと中から「どうぞ」という低い声が聞こえた。
扉を開けると穏やかそうな顔の所長が座っていたので、説教ではないだろう。
所長の元に行くと座ることを促されたので対面側のソファーに座る。
「やあ。八尋くん、今日も来てくれてありがとうね」
「いえ、俺が来たいから来てるだけなので」
「まあ、それで本題なんだけど、君に依頼が届いているんだ。それもSランクのセンチネルだよ。君くらいにしか頼めなくてね。」
「…Sランク、ですか」
センチネルのSランクのガイディングを今まででしたことはなかったし、出会ったこともなかったので驚いた。
俺はSランクのガイドで、SSCではSランクがほとんどいない。
だから俺の依頼はSより下のAやBランクのセンチネルを相手にすることが多いのだ。
「詳しいことはこの資料を読んでね。相手は結構状態が良くないらしく、家から出ることができないから、八尋くんには依頼者の家に行ってもらうことになる」
所長から手渡された資料を読む。
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【依頼者情報報告書】
■基本情報
名前: 御門 周 (ミカド アマネ)
年齢: 17歳
ランク: S
能力: 五感のうち聴覚が特に異常発達している
■状況概要
当該者は高ランクセンチネルであり、ガイディング適合に著しい問題を抱えている。
これまでのガイディングにおける失敗率は92%と極めて高く、安定した同期状態を維持できていない。
■現在の状態
・精神状態の悪化(錯乱・認識障害の進行)
・慢性的な身体不調
・活動困難レベルの衰弱により、現在はほぼ寝たきりの状態
上記症状は日々進行しており、早急な対応が必要と判断される。
■備考
当該者は現段階、能力の制御が難しいとされる。及び、Sランクのガイドを派遣する必要がある。
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Sランクのセンチネルってこんなに重いんだな。日々進行してるってことは今、俺がこれを読んでる時も進行しているってことで……って、それまずくないか?
「それでね、八尋くん。君に今すぐにでも言ってもらいたいんだけども…」
所長が少し言いにくそうに言う。
まあ、依頼の内容聞いてからガイディングまでこんなに早く動くことなんてそうそうないしな。
「…分かりました。俺、今からそこに向かいます」
「!…ありがとう、八尋くん。本当に急で悪いとは思っているんだけど、こんなに重いセンチネルは初めてだからね」
「私から御門くんのお父さんに今から行くことを伝えるから。それと、山下くんに車の送迎を頼んでるから入口のところに行ってね」
建物からでると車が止まっていて、山下さんだろう人(会ったことがないので)がこっちを見て手を振っていた。
「山下さんですよね。送迎お願いします」
「うん。じゃあ東雲くん助手席に乗って。後ろは荷物があって座れないからさ」
「Sランクのセンチネルだってね」
「はい。俺初めてSランクのガイディングするんですけど、成功しますかね…?」
「うーん。僕からはなんとも言えないけど、東雲くんって確かSランクだよね?」
「はい、そうですね。」
「だったら同じランクなんだし、あとは気持ちの問題だと思うよ。僕が上から言えることではないけど、何事も前向きに考えることは大事っていうし」
たしかに…挑戦してもないのにネガティブに考えるのは良くないか。それに俺、メンタル鋼って言われてるし、うん。大丈夫だよな。
「ありがとうございます、山下さん。なんか自信持てました」
「いえいえ〜、僕なんかの言葉で自信持ってくれるなんてこっちがありがたいよ」
そう言って朗らかに笑う山下さんを俺は初めましてにも関わらず、頼もしく思った。これからなんかアドバイス貰いたくなったら山下さんに相談しようかな。
雑談しているうちに、依頼者の家に着き、玄関前には1人の男が立っているのが見えた。
山下さんが「こんばんは。サポートセンターの山下とこちらがガイドの東雲です」と言ったので、俺も軽く自己紹介をした。
その男、御門さんは17歳の息子がいるとは思えないほど若々しい顔をしていた。息子の症状の悪化に焦っているような表情がよく分かる。
「急な依頼なのに、急いで来て頂いて本当にありがとうございます…! さ、どうぞ。中に入ってください」
お邪魔しますと一言言って入る。
家の中は綺麗に整理されててとても広かった。 ザ・金持ちの家って感じ。
御門さんは今回担当するセンチネルがいるであろう部屋の扉まで俺を案内すると、「周。依頼していたガイドの方が来てくれたんだ、入るよ」と声をかけて扉を開ける。
「では、東雲くん。周をよろしく頼むよ」
「はい」
「…東雲くん、君も無理をしないでくれ。今までガイディングしてくれたガイドの人達はみんな精神が崩壊してしまって……周も自分のせいでって責めてしまっているから…」
「……!、そうですか。俺……精一杯頑張ろうと思います…!」
そう言った俺を御門さんは期待するようなそんな目で俺を見て少し微笑んだ。
俺は意を決して、部屋に入る。少し盛り上がった布団が見え、そこにセンチネル、御門くんが居るのだろう。俺は、そっと近寄って声をかける。相手は聴覚が鋭いため、すごく小さい声で。
「…ガイドの東雲八尋って言います。体調が良くないのはわかってるので返事はしなくても大丈夫です。今からガイディングをします、御門くんの手に触れますね」
そう言って俺は御門くんの手に触れてゆっくり撫でたり、軽く揉みながら御門くんの様子を見る。
さっきまで目をつぶっていた御門くんが目を開けてこちらをぼんやりと見ていたので軽く声をかける。
「…御門くん、調子はどうですか?」
「………っ…?」
「……頭、撫でて大丈夫ですか…?」
御門くんが肯定するような声を小さく出したのを聞いて、俺はそっと頭に手をのせてゆっくりと撫でる。御門くんは撫で心地が気持ちいいのか、もう一度目をつぶってゆっくり呼吸をしていた。
ずっと撫でるのを繰り返してると、混濁していた意識が戻ってきたのか、御門くんが目を開けて俺に驚くような目を向けていた。
「…っあ、え…?」
「調子はどうですか?」
「…な、なんで…」
なんで…??どういう意味だろ、と考えていると御門くんの目からボロボロと涙が溢れ始めた。
え!?…な、泣いちゃったんだけど、どうしよう。
頭撫でた方がいいのか…?
そう思って、止めていた手を再び動かすともっと泣き出した。
「御門くん、大丈夫ですか?どこか調子が悪いとか…」
「…ちが、う。…頭痛いのとか、気持ち悪いのなくなったから…」
「…!ガイディング成功したんですね、良かった。もう少しガイディング続けますか? 」
「うん…もう少し、もっと撫でて…」
ひたすら撫で続けて御門くんが安心したように眠りについたから撫でるのをやめて時計を見る。
1時間ぐらいガイディングしたのは初めてだなと思いながら起こさないようにそっと部屋を出ると御門くんのお父さんがいて、安堵したのか少し涙目になりながらこちらを見ていた。
「ガイディング無事に成功しました。御門くん、今は寝ていますが、意識も会話もはっきりしていたので大丈夫だと思います。身体の不調も消えたと言っていたのでそこのところも大丈夫だと思いますよ」
「ああ…本当かい…?…良かった、ほんとに、本当にありがとう東雲くん。君がガイディングに来てくれてよかったよ」
そう言って深く何度も頭を下げる御門さんを見て俺は心がじんわりと温まるような心地がした。
ガイディングはずっと前からしてきたが、こんな危険な状態のセンチネルを対応したのは初めてだから多少緊張はした。
御門さんに案内されてリビングに行くとソファに座っていた山下さんがニコッと笑って俺に手を振った。
「お疲れ様、東雲くん。上手くいってよかったよ 」
「お疲れ様です、結構待たせましたよね」
「いいのいいの、気にしないで」
「改めて、今日は本当にありがとう、東雲くん。
それで、君にこれからも周のガイディングをして欲しいと思ってるんだけど、どうかな?」
「…あー、えっと……山下さんこれって所長に確認してからですよね?」
「うーん…僕はそこら辺のこと詳しくないから分からないけど、多分そうだろうね。
御門さん、後日返答でも大丈夫ですかね?」
「ああ!もちろん、構わないよ」
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外はもうすっかり暗くなっていた。所長から両親に連絡すると言っていたから、母さんも父さんも心配はしてないだろう。山下さんに家まで車で送ってもらっている中、俺はぼーっと外の風景を見ていた。
ふと山下さんが声をかけてくる。
「今日は疲れたでしょ、家までもう少しかかるし眠っても大丈夫だよ?」
「…んー、じゃあお言葉に甘えて」
「はーい」
たしかに今日は疲れた。初めてSランク、それも危ない状態のセンチネルをガイディングしたから能力を使いすぎてぼーっとする。眠さの限界が来ているのだろう。だからこそ、山下さんの気遣いが嬉しかった。今日初めて会った人の車で寝るなんてやっぱりしにくいというか……
気が抜けたと同時に一気に眠気が来て俺は目を瞑りすぐ眠りについた。
山下さんに声をかけられて目を覚ます。もう家に着いたようだ。山下さんにお礼を言うと「いーえ。ゆっくり休んでね」と言われ俺は車が見えなくなるまで見送った。
家に着いたら母さんと父さんがリビングにいて今日のことを話し、寝る準備をしてから俺はまた眠りについた。
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「八尋くん。昨日はお疲れ様、次の日も学校だったのに…ありがとうね」
「いや、全然。車でも帰ってからもすぐ寝たので大丈夫ですよ」
「それなら良かったよ。あ、そういえば…御門さんから八尋くんを周くんの担当ガイドにしたいと申請 があってね、八尋くんはどう?」
「俺は大丈夫です。昨日もその話が出てて、所長に確認するために保留にしただけなので」
「あ、そうなの?なら、周くんの担当ガイドよろしくね」
「はい」
次の日の放課後、俺がSSCに行くと所長が待っていて今後のことについて話し合った。
今まで俺は担当についたことはなかったので新鮮な感じがした。
次の依頼は1週間後。昨日は御門くんとまともに会話できていなかったから、相手がどんな性格なのか分からない。次会うときは元気になっているだろうか、そう思いを馳せながら俺は次の対面を楽しみにしていた。
御門くんが俺に激重感情を抱き始めているとはつゆ知らずに……
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読んでくださりありがとうございました!!
次回は御門くん視点が書こうと思ってます。
気長にお待ちください!
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