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2年の時、いつも私が吉木さんより成績が良かった……そんなつまらない理由で「それ」は始まった。



彼女が自分のお父さんに言って、うちの父の会社の仕事を打ち切り、あっという間に経営は傾いてしまった。



資金繰りに悩み、走り回ってた両親を見て、私は大学を止めると言った。



でも、2人とも「大変な状況でも、どうしても入りたかった大学に入学できたんだから最後まで頑張りなさい」って応援してくれたんだ。



昔から会社の評判が良かったこと、作る部品の価値を認めてくれた銀行から融資を受けることができ、何とか会社は持ち直した。



それでも、経営は相当大変だったと思う。



従業員もみんなで両親を支えてくれた。



私はできるだけ負担をかけないよう、パン屋とコンビニで必死にバイトし、学費の足しになるよう懸命に働いた。



そんな状況で、私の成績も少しずつ落ちていき、気づけば吉木さんが1番になっていた。



学業とバイトを両立しながら、私なりに頑張る日々。



イヤミを言われるのにも慣れたはずが、私の気持ちは知らぬ間にどんどん闇の中に落ちていった。



こんなの、ドラマではよくある話。



自分の身に降り掛かるまで人ごとみたいに思ってた。



でも、もう限界だった。



彼女の顔を思い出す度、呼吸が苦しくなってしまう。



「私のせいで両親をあんな風に追い詰めてしまった」、次第にそうやって自分を責めるようになり、大学に行くのが怖くなってしまった。



そんな時、あの人が私の前に現れたんだ。



『クロワッサン2つ下さい』



『は、はい』



『ねえ、君。うちの大学の文学部だよね?』



『え?』



『あっ……突然、ごめんね。俺は榊 正孝。経済学部3年』



あまりにも眩しい笑顔。



私のすさんだ心に、まるでひとすじの光が流れ込んだような…そんな温かい気持ちになった瞬間だった。



これが、私と正孝君の初めての出会い。



『経済学部……3年?』



『うん。君がよく食堂にいるのを見かけてたから。でも、最近あんまり食堂行ってない?』



その質問にちょっとドキッとした。



なるべくお金を使わないよう、毎日お弁当を自分で作ってたから。



『あ、あの……』



『どうした? 大丈夫? 顔色……良くないけど』



私の顔を、心配そうに長身の彼が覗き込む。



思わず、目を反らせた。



『あ、いえ……別に……』



『別にじゃないだろ。何かあるなら話せばいいよ。黙ってたって問題は解決しない』



この人は……ちょっと強引。



だけど、不思議だった。



今、会ったばかりの人なのに、この人に全部話してしまいたい、すがりついて泣きたいって……



私の痛がってる心が叫んだんだ。

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