「彼の者らと1年間、共に生きよ」
深く、深く、どこまでも落ちていくような浮遊感。目を刺す眩い光と一緒に頭に響いてきたのは、そんな声。
これは夢なのだろうか?
上手く働かない頭をそのままに、ただ落ちるまま重力へ身を任せる。
やがて光は遠ざかり────────
「あぅっ」
「ぐっ」
「わっ」
「いたっ」
「ぎえっ」
強かに地面へ体を打ち付け、先ほどの出来事が夢などではなかったことを知る。
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「一旦、状況を整理したいのですよ」
そう言って場を仕切るのは、後ろで編み込んだ長い青髪と緑色の目、白いドレスに黒のローブを羽織った賢者。
「…………」
黙したまま頷いて賢者に賛同を示すものの、警戒をまるで隠そうとしない、切り揃えられた紫の髪を腰まで伸ばした、黄色い目に白の上衣、濃紺の袴を履いた剣士。
「整理、と言ってもこの状況じゃ何もかもがどうなってるやらさっぱりですね……はは」
苦笑しながら頬を掻く、黒いとんがり帽子をかぶった灰色のボブカットに水色の目、白のブラウスにねずみ色のスカートを革のベルトで留め、黒いローブを羽織った魔女。
「ええと、ひとまず涼しい場所へ移動しませんか?ここにいては溶けてしまいそうで」
汗を頬に伝わせながら居心地悪そうに移動を提案する、白髪の腰まであるストレートロングに空色の目、真っ白な着物に青い帯を締め、目と同じ空色の羽織を着た雪女。
「…………」
座ったまま気絶している、腿まで伸びる金髪に碧眼、白い大翼を折り畳んだ、これまた白い紐のような心許ない服を纏った天使。
同じ声に導かれ、同じ場所へと落ちてきた5人は今、等しく混乱の真っ只中にあった。
ひとまず辺りを見回してみれば、温かみのある黄色がかった白い壁にやけに柔らかな木板の床(後で知ったが、クッションフロアと言う敷物らしい。捲ると石材らしき床があった)
どうも屋内であるようで、窓の外から日が差し込んでいることから時間帯は朝、あるいは昼間のようだ。
手持ちにあるそれ以外の情報は先ほどの夢で告げられた言葉くらい、それもひどく曖昧なものだ。魔女の言葉通り、状況を整理しようにも何もかもが不明。それでも賢者は認識をすり合わせることから始める。
「私はここに来る前、”彼の者らと1年間を共に生きよ”という言葉を聞いたのですよ。これは他の皆さんも同じと思って構わないです?」
気絶している天使以外の3人が賢者の言葉に頷く。
「他に、具体的には元の場所への帰還について手掛かりになりそうなことを聞いた、あるいは知った人は……」
と賢者は軽く手を挙げてみせるが、明るい反応が無いことを見てダメかと小さく肩を落とした。
「じゃあ、えっと、まずは”はじめまして”と自己紹介から始めるのですよ。」