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〇〇しないと出られない部屋。
3年前に書いたものを持ってきたので、knとsmはまだサシで遊んだことがない状態です
「……なに、ここ。」
「あれ、スマイル…ってかここどこ。」
きんときとスマイルが目覚めたのは、立方体のような形をした真っ白な部屋だった。
◾︎◾︎◾︎
まず起きて目に入ったのは一面の白。
目をぐしぐしと擦ってからもう一度見てみると、その白は壁の色であることに気がつく。
部屋をぐるりと見回しても全て白色で、窓なんかは無い。光源は天井からぶら下がる丸いシーリングライトだけだった。しかし光の強いそれは部屋を隅々まで照らし この部屋にドアはおろか本当に何も無いことを知らせていた。
なぜこんな真っ白な空間にいるのか。それはもちろんスマイルにとっての大きな疑問であったが、さらなる謎が隣で眠っていた。
きんときがすぐ隣ですよすよと寝ている。
なんで、こいつが俺と一緒に2人きりでいるんだろう。
一応ワイテルズとして一緒に活動はしているから仲が良くないという訳では無いが、そのメンバーの中でも俺にとっては一番読めないヤツ、という認識だ。他の奴らはともかく、きんときと2人きりで遊んだことは記憶の限りはないし視聴者からのコメントでも不仲だとかなんとか噂されている。
こいつに遊びに誘われたのか?いや、でもそれだったらなんで寝てるんだ。そもそも今いる部屋に来るまでの記憶もない。
部屋を見渡しながら色々と思考を巡らせているとやっと隣の青色は目覚めたらしく、俺を見据えて「あれ、スマイル…」などと寝ぼけた声を発する。様子を観察していると彼は俺の姿を視認したのちに部屋をきょろきょろと見回し、また俺に視線を戻した。
「…ってか、ここどこ。」
「俺も知らん。」
無言で互いを見つめ合う数秒間の後、部屋を探索する時間が始まった。
◾︎◾︎◾︎
「本当になんもないけど。」
「ここから出る出られない、とかもはやそういう次元じゃないな。何もなさすぎる。」
床から壁から天井まで、見られるところは全てじっくりと見た。2人で部屋を3周ほどしたので見落としはないだろう。
それよりもスマイルが気になったのはきんときの表情だった。スマイルが発した言葉を聞いたきんときは、感情が読めない微妙な表情で口を開いた。
「出られない部屋って……スマイル知ってる?」
「なんか聞いたことはあるけど。」
「……具体的には。」
「えーっと……2人が閉じ込められて、えっと……条件を、達成しないと出られない、みたいな。」
スマイルも話を聞くうちに薄々勘づいてきたのか、決定的な言葉は使わず ゆっくりと説明をする。
2人の間にうっすらと気まずい空気が漂い始めたところできんときがおもむろにポケットや服の中を探り始める。スマイルがその様子をじっと見つめていると「ほら、もしそういう部屋なんだったら司令があるはずじゃん。スマイルも探して」と声をかけられ、スマイルも慌ててポケットを探った。
「……無くね?お前の服探してあげるよ」
「いやいいって、もう脱ぐから」
ぴらり。スマイルがスーツを翻したそのとき、1枚の紙が地面に落ちた。
『30秒間ハグをしてください』
少しぐしゃぐしゃになってしまった紙には、そう書いてあった。
「なんだ、簡単じゃん」
「もっとすごいの来るかと思ったんだけど」
よく漫画やらなんやらで見るような司令を想像していた2人は思ったよりも軽い内容に目を丸くした。
「じゃあ……いい?」
「うん」
いい?と聞いたのはきんときなのに彼は両腕を広げて待っている。俺に抱きつけってことか?まぁこの部屋から出られるならそんな些末なことはどうでもいいか。
ほんの少し逡巡した後にスマイルがきんときの腕の下に手を回し控えめに抱きつくと背中に腕を回される。
暖かい。なんか、爽やかな匂いがする。
普段人とこんなに近づくことがないからなんとなく緊張してしまって、鼓動がはやくなる。きんときに伝わっていなければいいのだが。
「……30秒って、これ数えないといけないのかな。」
唐突に声を発するきんときに驚き肩を揺らしてしまい、少しだけきんときの腕に力がこもる。
「ハグだから離れちゃダメそうじゃない?ほら、30数えよ」
「あー………いち、に、さん、し…
……にじゅきゅう、さんじゅう」
ガチャリ。
2人で声を合わせて30まで数えると、部屋のどこかで音がした。
いつの間に現れたのか、壁の真ん中に金色のドアノブがついた洋風の白いドアがあった。
それを確認した2人はどちらからともなく距離を置きドアに向かって進む。
「……開かないんですけど」
「はぁ?いやお前貸せって。」
ガチャガチャとドアノブを回したり扉を押したり引いたり、色々やってみても開かない。ドアノブには鍵穴がついており、どうやら鍵を手に入れないと開かない状態のようだ。
はぁ、とため息をついたスマイルの目に入ったのは扉の上の1:00と表示されたモニターだった。
「ねぇ、あれ。あれがゼロになったら開きそうじゃない?……そういえばさっき紙出てきたの俺のスーツからじゃん。きんときの服にもなんか入ってんじゃないの」
「いやーそれは明察かもな……あ、あった」
スマイルと同じくきんときが白尾学園のジャージを脱ぐと1枚の紙が落ちてきた。
『互いの体に触れながら1分間見つめ合ってください』
「触れながら……って、なんだ。」
「はい、触れるって手でいいよな。スタート。」
司令を理解したきんときは素早くスマイルの手を取り紫紺の瞳を見つめる。
きんときの行動に驚きながらも、スマイルも目を合わせる。きんときの澄んだ群青に自分が映っていてなんだか新鮮だ。
気恥ずかしい気持ちが浮き上がってくるが、さっきよりは接している面積は圧倒的に少ないし鼓動が届く心配もない。
「きんとき手の震えやばい。」
「発作みたいなもんなんだって」
互いを見つめていないといけないので喋りながらもきんときをじっと見る。手の震えを指摘され苦笑するきんときの表情は、今まで何回も見たことがあるはずなのに、近さのせいかなんとなく見たことのない表情のように感じた。
……にしても、1分ってこんなに長かったか。
「そろそろじゃない?」
「確認できないからわからない。目離したら最初から、とかなったらダルいしもうちょっとこのままで。」
同意の意を示すため手をきゅっと握ったそのとき、チャリ、と何か金属のものが落ちてくる音がした。
互いに頷いてから手を放し、音の出処を探す。
手のひらが久しぶりに外気に触れひんやりと感じる。手を握っている途中から手がほんの少しじっとりと汗ばんでいたことには気づいていたが、どちらのものかわからなかったため指摘はしなかった。
「あった!これ、鍵か」
「ほんとだ。それで開けて早く出よう」
きんときが手に持っていたものは、照明の光を反射しギラギラと光る金色の鍵だった。ドアノブの色と一緒だしこの鍵であのドアは開くだろう。
やっとこの白い空間からおさらばだ。
「……えっ?」
鍵を開け、押すタイプだったらしいドアを半分ほど開けたきんときは素っ頓狂な声を出し、静かにドアを閉めた。斜め後ろから見える顔はかなり焦っているように見える。
ドアから離れお先にどうぞと言わんばかりのジェスチャーで扉を指す。扉の向こうは普通の世界、ってわけではなさそうだ。
意を決しドアノブを回した先にあったのは、この部屋と全く同じ真っ白な部屋…という訳ではなく、部屋の真ん中に白いベッドが鎮座している部屋だった。しかもまた扉はなく、100という数が書かれたモニターだけが壁にある。
ベッド。もしかして、そういうことなのか。
「……スマイル。行くよ。」
ぐるぐると頭を悩ませ始めたスマイルとは対照的にきんときはさっと扉の先へ進んでいってしまった。
慌てて追いかけ扉を抜けるとまた鍵が閉まったらしい、スマイルの背後でカチャン。という音がする。
一足先に部屋に入ったきんときはベッドに乗り上げると、そのまま仰向けにばふっと寝っ転がった。緊張感とかないのかお前は。
「あ。」
「なに。」
「天井に司令……書いてある」
斜めからだとよく見えずベッドに近づいて紙を見る。と同時に2人は目を見合わせ、はぁ……と大きなため息をついた。
『100回キスをしてください』
「あ〜もういいよ、さっさとやろ……」
「じゃあスマイルこっち来て」
自分が座っているベッドの隣をぽんぽんと叩く彼は、至っていつも通りそうだ。
……なんか、ムカつく。なんでだろう。自分はかなり動揺してるのに相手が澄ました顔をしているからだろうか。
よく感情が読みにくいと言われる俺だが、きんときも大概だと思う。いつもにこにこしていて何を考えているか分からない。
しかしそんな彼が真顔でこっちを見ている。いつもの笑顔でなく、真顔で。
実は内心動揺しているのかもしれない。
きんときに言われるまま隣に座ると膝立ちになった彼が顔をゆっくりと近づける。さっきとはまるで違う状況で澄んだ群青に見つめられ、鼓動がばくばくと走り出す。落ち着け、ただ唇を合わせるだけだ。
きんときは俺より少しだけ身長が低いが、そこまでの身長差はない。普通に座っている俺と膝立ちのきんときでは明らかにきんときの方が高い位置にいる。どうするんだろうと考えていると後頭部をそっと手で支えられ、優しく触れるだけのキスをされた。男同士だし嫌悪感があるかも、と思っていたが不思議と気にならない。心臓の鼓動も落ち着いてきた。
「……嫌じゃない?大丈夫そう?」
こく、と頷くとそのままバードキスが繰り返される。きゅっと目を瞑ってしまったため彼の表情は見えない。まあ、もし仮に嫌だったとしても出るには方法がこれしかないんだからどうしようもない。なんならきんときは嫌かもしれないが、こういう状況でそれを顔に出す人間ではないだろうというのは高校の時からの付き合いでなんとなくわかる。
彼はどんな表情をしているのだろう。うっすらと目を開けると、バチッと音がしたかと思うほどしっかりと目が合ってしまった。
「……目、閉じててよ。」
「……モニター見る」
いやお前はずっと目開けてただろ。そんな言葉は何故かうっすらと頬を染めた彼には言えず、目を逸らしモニターに顔を向けた。
88
「この調子ならいけそ……ん、」
言葉を遮られムッとしたが、それよりも気になるのが音だ。
ちゅっ、ちゅ、と唇を合わせるだけでいいのに音を鳴らすのが気になって胸を軽く叩く。
なんだよ、と文句でも言いたげな顔をするきんときに「音出さなくていい。」と言うと「なんで、別にいーじゃん。いやなの?」と言われてしまった。
別に、と軽く返すと彼の機嫌を損ねたのか
「なんか俺ばっかやってる気がするからスマイルもやってよ。」
と言われる。そもそも全部お前がやれと言った記憶はないんだけど。
モニターの75の数字を確認してからきんときの方へ向き直り再開する。
きんときと同じように後頭部に手を添え、軽く啄むキスを繰り返す。
恥ずかしさなど今更ないし、もはや単純作業になってきた。モニターは62を表示している。3分の1が終わったくらいだ。
スマイルが視線をモニターに向けたタイミングでずっと動かなかったきんときが、暇になって飽きたのか空いていた左手を後頭部に回し、右手でスマイルの耳をいじりはじめた。主導権を握ったことで完全に落ち着いていたスマイルの心臓がまた段々と動きを加速させる。
きんときはスマイルの耳たぶをフニフニと触り、そのまま耳輪をついっと撫であげる。
「ちょっと。余計なことしないでいいッ……んっ!?」
耳の中まで触れられそうになったところで顔を離し抗議の声を上げると、その隙に上唇を咥え口を開き 上顎をぬるりと舌で撫でられる。後頭部をがっちりと押さえられているため頭を後ろに退くことはできない。
「んーっ…!!ん゛、…まて、ぅ……ッは、おいき、ん……ッ」
するっと入ってきた舌に抵抗するもやわやわと舌を食まれ力が入らず、背筋がぞくりとする。抗議の声を上げようにも口を開くとすぐに塞がれてしまい息も上手くできない。いつの間にか耳から腰へと移動していた手をゆるく掴む。いやいやと身を捩ってもやめてくれず思わずきんときのジャージをぎゅっと握ってしまう。
なんとか両手で肩をぐいっと押しのけ息を整えながらきんときを睨む。絶対に顔が赤い自信がある。
「っはは、めっちゃ息上がってる」
「お前が舌入れるからだろ」
笑い事じゃないんだけど。はは、と軽薄な笑みを浮かべるきんときは何故か楽しそうだ。
さっき見た時には62だった数字は少し減って58になっている。こんなのでは全然数字は減らないし効率的でない。そして何よりも体力が持たない。
突然の行動に驚きながらもこれ以上きんときに好き勝手させるのはまずい、と判断したスマイルは先程まで考えていたことを素早く提案する。
「ちょっと思ったんだけど、キスって口じゃなくてもいいんじゃないかってのがあって。」
スマイルがきんときの手を取り指にキスをすると、モニターの数字は57になる。ベッドがあるこの部屋の雰囲気に押されてなんとなく口へのキスだと思っていたが、どうやら口以外でもカウンターの数字は減るらしい。
指先から手の甲へと、少しづつキスの回数を重ねていく。途中空いた片方の手で顔にかかった髪を耳にかけられたり頭を撫でられたりはしたが、大して気にせず進める。というか、気にしていたら埒が明かない。
今これでどのくらいだろう。パッと顔を上げると数字はもう30まで来ていた。
「ねーつまんない。俺にやらせて」
「え、いやいいって俺が……まあいいけど」
色々とちょっかいをかけていたきんときはもはやそれにも飽きたのか、俺の手を取ってキスを落とし始めた。やる方が恥ずかしいと思っていたがやられる方にも意外と心にくるものがある。きんときから視線を外し、減り続ける数字を表示するモニターをじっと見つめる。音と共に減っていく数字が7になったところで動きが止まる。
「スマイル。」
名前を呼ばれきんときの方を向こうとすると顔を両手で挟まれ、そのまま流れるように舌を入れるキスをしてくる。
「なに、んぃ…ッ……っぁ、ッふ、ぅ………」
さっきほどしつこくはないがそれでもフレンチキスはフレンチキスだ。息は上がってしまう。
酸素が足りず頭がぼーっとしてきたところでカチャリと開錠音が聞こえ、現実に引き戻される。
またも、白い扉がいつの間にか現れていた。しかしあちらの扉と違う点はドアノブに鍵穴がないこと。つまりそれは鍵を探さずとも出られるということだ。
「ほら、行くぞスマイル」
先にベッドから降りたきんときに手を引かれ扉へと向かう。
また同じ部屋だったらどうしよう……そう思った2人は扉の向こうに見える部屋に安堵の息を漏らした。
謎の白い2部屋から繋がっていた先はいつも実写の撮影で使っているとあるマンションの借り部屋の玄関だった。
この部屋も壁が白いから、一瞬息を飲んだことは秘密にしておこう。
……にしても、なんだったんだあの部屋は。
「あんな部屋もう二度とごめんなんだけど。」
「お前は途中から楽しんでただろ」
あの部屋での様子から絶対思っていないであろう発言にすかさずツッコミを入れると、あはは〜と軽く笑われた。
一通り会話を終え、しん…と静まったところで隣の群青を見ると、いつもの何を考えているかわからない、にこにことした笑顔に戻っていた。
「まぁこのことは……二人の秘密ってことで。」