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10周年おめでとうございます。一生好きです。ということで5年前の文章を加筆修正して持ってきました
付き合ってるけどまだやることはやってないknsm
俺ときんときが付き合い始めたのは4ヶ月ほど前。 互いが互いに対して素直になれない性分のため紆余曲折あったが、なんとか収まるところに収まった。
しかしスマイルは疑問と不安と不満を抱えていた。
きんときも俺も、同性という点を除けばお互い初めての恋人ではないはずなのに、4ヶ月経った今も手を繋いだりハグをするだけという、プラトニックな関係を保っている。
本当はもっときんときと触れ合いたい。キスも、またその先も。しかしきんときは俺に一向に手を出そうとしない。いくらなんでも貞操観念がカチカチすぎて、俺を聖人かなにかと思っているのだろうかとすら考えてしまう。
恋人である俺に対する普段の態度を見る限り、俺が所謂「ネコ」側だとは思うのだが。まぁ、ネコ側だからといって全てにおいて受け身になる必要もない。
……今日こそは。
「きんとき。」
「ん?」
デートの帰り道。声をかけると柔らかい声と視線が返ってくる。
「今日お前ん家泊まってっていい?」
「…うん、いいよ」
……なんでこいつ間があった。
「別に都合悪ければ他の日でもいいけど」
「いや!全然、そんなことない……」
なんか必死だな。なにか隠し事でもあるのか。
きんときの顔をじっと見つめるも、ただ自分の恋人の顔が良いということしかわからなかった。
◾︎◾︎◾︎
「はい、上がって〜」
「おじゃまします。」
あのあと一旦家に帰り、着替えを取って一緒にきんときの家に来た。
部屋の中は至って普通。きんときが入ったあとにすぐ俺も入ったのでなにかを隠す暇はなかった。
となると……なんであんな必死だったんだ?
「すまさん、先風呂入って、後でベッドで映画見よ。」
「あい」
風呂から出たあと、(今日、キスくらいはできるだろうか。)そう思いながら丁寧に歯磨きをする。それはおそらく自分次第だが。
「出たよ」
「あぁこれ、見たい映画選んどいて。じゃあ俺も行ってくる」
リビングにいなかったきんときを探しに寝室へ行くと、リモコンを手渡されて入れ違いできんときが部屋を出ていく。視線の先にはプロジェクターがあり、照らされら壁には動画配信サイトのホーム画面が映っている。
ベッドで観るってことは…… きんときも少し意識してくれているのだろうか。普通なら映画はリビングで見るだろう。
これにするか。選んだのはあえて外国の恋愛映画で濡れ場が多そうなやつ。いつもは興味が無いので飛ばしてしまうが、なんかそれっぽい雰囲気にできるのではないかという算段でもってセレクトした。
◾︎◾︎◾︎
「ただいま、映画決めた?」
「うん、この映画。」
「了解。じゃあ電気消すね」
きんときが電気を消してベッドに入ってきて、再生ボタンを押す。二人とも仲良く壁に背中を預けた体制で見る。
映画ではなにやら男の人と女の人が戦っているみたいだ。ちらっときんときの顔を見ると、視線に気づいたみたいで彼もこちらに目を向ける。なんだか気恥ずかしくて目を逸らしてしまったが、それが気に食わなかったのであろう。指をするりと絡ませてくる。所謂恋人繋ぎの状態になった。しかしそれ以上は何もしてこず、ただ映画を見るだけ。
手を繋いだ状態で映画を見ていると、濡れ場が多くなってきた。まあ俺が選んだんだけど。
さっきまで戦いあっていた男女が仲直りをして激しめのキスをしている。
……時には、俺からアプローチをかけてもいいはずだ。
「ねぇきんとき」
「ん?どうした?」
「きんときはさ、俺とこういうことしたいとか思う?」
「え、あぇ?」
目を丸く見開いたきんときは調子の外れた声を漏らす。
「……女の人の方がいい?」
「や、それは違うけど……だって、スマイルこそ女の人の方がいいでしょ。」
目を伏せて言葉を紡ぐ彼に今度はこちらが目を見開いた。
たしかに、好き同士で付き合ってるとはいえ性的志向が一致しているとは限らない。そこまで思い至っていなかった自分を悔いると同時に目の前の男がそこまで自分のことを考えてくれていたのかとも悦んでしまう。
ここは正直に言った方が気持ちが伝わるだろうか。
「いや、俺はきんときがいいよ。」
「……ほんと?なんかやけに素直じゃない?」
「だって、お前が全然手出してこないから、」
言ってしまった。もう勢いでこのまま行ってしまえ。
「……今ここでああいうキスしてって言ったら?」
「ぇ、いいの?」
「何回も言わせんな。」
「……。」
眼前にきんときの整った顔が近づいてきて、おでこがこつんとぶつかる。目を瞑ると、きんときの唇が俺の唇のに少しだけ触れて、離れていった。
うっすら目を開けるとバッチリ目が合った。こちらの様子を伺ってるみたいだ。
もう一度目を瞑ると、今度は顎に手を優しく添えて唇に触れるだけではなく口内に舌が侵入してきた。
「ん……っふ、ぁ……」
ぬるぬると舌を擦り合わせると鼻にかかった声が漏れる。幸福感が胸にじわりと沁みて何故だか泣きそうになった。
だんだん酸素が足りなくて苦しくなってきて、きんときの胸を叩くと顔が離れていく。
「、ごめん、苦しかった?」
「や…うん、
……でも、きもちかった、かも」
最後の方はかなり小さめの声になってしまったが、きんときはそれすら拾い嬉しそうな表情をする。地獄耳か。
「ほんと…?よかったぁ、嫌がられなくて」
にへ、と笑うきんときの表情に心臓がキュッとなった。やっぱり彼に惚れるのは訳ないことだな、と思いつつ返事をする。
「なんで、嫌がるわけないじゃん」
「ふふ、スマイル顔赤いよ」
「うるさ……ほら、映画見るぞ」
「展開わかんなくなっちゃったね」
「まぁ……ほぼ終わりかけだしいいだろ。」
そもそも映画の中身はあまり興味無かったし。今日はきんときと少し進んだ関係になれた、それだけで俺は充分だ。
「はは、スマイル雑だな〜」ときんときは言っているが、彼も大概な声音だ。
ゆるい甘やかさに包まれたまま、きんときと一緒に夢の世界へと入り込んで行った。