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春、ある大学の門の近く。
生徒達が涙ぐんだり、笑い合ったりなど忙しい中、
私は仲の良い友と話していた。
「ねぇ、さくは音楽関係の仕事につくんだよね!」
「そうだよー。」
「どんなことするの?」
「私は作詞するんだよ!」
「えっ、すご!」
「といってもまだ見習いだけどね。」
そう言いながら、私は苦笑いする。
「でも小さい頃から音楽好きだったから、この仕事につけてすっごく嬉しいんだ!」
「さく、真面目に授業受けてたもんねー。」
「まあね!てかそろそろ時間大丈夫?」
時計の指している時間は、友がデートをする待ち合わせの30分前だ。
「え!ホントだ!ヤバい!ありがとうさく!」
「いえいえ!いいねー彼氏いる人は。」
からかいながら言う私に、友はムッとしながらも心底嬉しそうだ。
「いつかさくにも出来るよ!」
「私22年間も異性から好かれたことないんですけど。」
「……まあまあまあ」
「いやそこは『気づいてないだけじゃない?」とか嘘でもいいから言ってよ。」
私も彼氏は欲しいけど、なんなら頭は恋愛脳ですよ!
こちとら、親が本関係の仕事で家に本が大量にあるから、嫌でもいろいろ妄想しちゃうわ!
「そろそろ行きなよ。」
「そうだね。ありがとう。今度また会お!」
「絶対ね!」
友が一足早く、大学の門をくぐり抜け、私は桜の木の下のベンチに座ってメールを開く。
新着ではなく、開封済みのメールだ。
傍から見たら一人でニヤニヤしてる変人だと思う。
そこには、私の仕事決定の通知について書いてあった。
私はこの春から社会人、今日は大学の卒業式だった。
大学では音楽について専門的に学んでいて、自分で言うのもなんだが、かなり成績の良い方だと思う。
父が昔バンドをやっていたり、母は学生の頃吹部に入っていたりと音楽が好きな両親。自然と私も音楽が好きになっていて、小学校高学年からは合唱団に入っていた。
中学に入ってさらに好きになった。
音楽に関わる仕事がしたい。そう思ったのはここらへんからだった。
幼少期にピアノなど何も音楽を習ってなかった私は、高校になって自分で頑張って勉強した。マジで頑張った。
そして今大学を卒業して、私は夢を叶えた。
年収が少なくてもいい。このことが何より嬉しいのだ。