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カピリスの丘でバルメロイが額を拭う。


「いやぁ、ヒヤヒヤしました。アーカード様は圧がありますね。恐ろしい方だ」

「イリス様の泥人形がなければ、私は一手目で支配されて終わっていました。ありがとうございます」


幼女の姿をとったイリスがふふんと鼻を鳴らしてふんぞり返る。


「とーぜんじゃ! あの程度、朝飯前よ!」

「それで、次は何をするんじゃ? どこを目指す? まさか帝国に戻るわけでもあるまい?」


バルメロイがうろたえる。

なぜ、イリスがここまでしてくれるのかわからないのだ。


「ん、あー。そういや説明しとらんかったな」


女神が放った【神焔よ、焼き尽くせ。《オーバーフレア》】の直撃を受け、黒炭と化したイリスは、しかしそれでも死ぬことができなかった。


かつて母にかけられた呪い「生きろ」という願いを叶える為、イリスの細胞は炭化したオークの死骸を食らい、ゆっくりと再生していた。


炭となったイリスへ、天から声が降るってくる。


「あの、アーカードさん。イリスは」

「奴は元より連続強姦殺人鬼、人類が滅ぼすべき邪悪だ。ここで潰しておくのも悪くはない」


あの邪悪な奴隷商人は一見冷血だが、本当に危ない時は助けてくれる。

そう信じていたのだ。その時までは。


そうじゃった。

アーカード。お前はそういうやつじゃったよな。


お前は役に立つもの、生きているものは大切にするが。役に立たないもの、死んだものは躊躇なく切り捨て、使い潰す。


確かにお前はそういうクズじゃった。


アーカードが奴隷兵に告げる。


「今だ! オークを殺せ! 奴らが正気に戻る前に皆殺しにしろ!!」


ああ、わしは使い捨てられたんじゃな。

夜を共にし、愛を交わしたあの時を、お前はなんと思っていたんじゃ?


これで都合良く動く駒ができたとでも思ったか。

おのれアーカード! わしの心をもてあそびおって!!


許さん! ぜーったいに許さん!!


乙女の怒りは天地を焦がし、憎しみは滾り続ける。

【神焔よ、焼き尽くせ。《オーバーフレア》】によって奴隷刻印は完全に焼き切れ、奴隷契約ごと焼失していた。


「ま、わしがお主に加担するのはそんなとこかの」

「なるほど、そんなことが」


まぁ、それだけじゃあないんじゃけどな。


不死となったバルメロイに待つのは、かの皇帝ジークと同じ結末だ。

その悲惨と地獄を最も近くで見てきたイリスが、バルメロイを放置することなどできはしない。


「わしらは過去に戻れぬ。やり直すことも出来ぬ。だが、絶望の過去を教訓とし。不幸を回避することはできる。誰かの過去は誰かの未来じゃからな」


イリスの胸中でバルメロイとジークが重なる。

今度こそ。今度こそマシな結末にするのだと。静かに誓った。


「それに、それにアーカードは大丈夫じゃろ。あいつはやり手じゃから一人で勝手にしあわせになるわい。だから、わしは必要ないんじゃ」


「そもそも。あんな邪悪で冷血な奴隷商人、こっちから願い下げじゃ。本当、人としてどうかと思うわい。弱者の気持ちがわからんバカに用はないんじゃ! 死ね! 死んでしまえ! あんなやつ!!」


怒りに燃えるイリスはそれでも幼女の姿をとっていた。


誰の願いも受け付けず。

アーカードに求められた理想の姿のまま、心から憤慨していた。


心情を察したバルメロイは多くを語らず。「そうですかそうですか」と頷いている。


「それでは手始めに不老の魔法でも探しましょうか」

「うーん、あるんかのう。不老。あれば一発でクリアなんじゃが」


「もしくは若返りでもいいですな」

「それじゃ! 若返りならジークも元に戻せるかもしれん!!」


「雲を掴むような話ですが、探してみる価値はあるでしょう」

「うむ! うむ!」


幼女と老人が荒野を進んでいく。

その先に何があるのか、何もないのか、それは誰にもわからなかった。

奴隷商人~今更謝ってももう遅い。お前が虐待していたロリ奴隷はオレが全員買い取った。

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