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第1章:沈黙の時間
鉄格子越しに差し込む朝の光は冷たく、独房の空気に溶け込む。
17歳の少年は膝を抱え、壁の十字架をぼんやり見つめる。
声を出す勇気も、感情を表す余裕もない。
胸の奥に小さな火を握りしめるように呼吸する。
独房の生活は日々のルーティンで埋め尽くされる。
冷たいシャワー、簡素な食事、点呼の緊張。
床や壁に映る影は、自分の存在を確認する唯一の手段だった。
遠い日の記憶が胸を揺らす。
雨に濡れ倒れた夜、差し伸べられた手と穏やかな笑み。
「大丈夫か?」
その声は希望の光であり、少年にとって唯一の安息だった。
少年は静かに祈る。
「赦しは、死ではなく、生にある」
孤独、冷たさ、鉄格子の重さ――
それでも胸の奥の火は消えず、揺れながらも小さく燃えていた。
日々の繰り返しの中で、少年は自分の無実を心の中で確かめながら、沈黙の中で呼吸を整える。