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■ポーション屋さんの巧みな調合術(仮)
〈プロローグ〉
「おいおい、どうする。この患者数を俺らで捌くなんて無理すぎない?そもそもヒールが効くかも分かんないのに。」
「何言ってんだよらっだぁ、やるしかないんだよ!!俺は自分の命削ってでも、この人たちを救いたい。」
「うん、そりゃ治癒士として救いたいのは山々だけどさ……。どうぐちつぼ、俺らが救える見込みある?」
「そうだなぁ。こりゃ〜もう、──────。」
遡ること数年前。
王都にある大聖堂では、卒業の儀式が執り行われていた。神聖魔法と霊的知識の基礎を学び、いくつもの試練を乗り越えた者が治癒士(ヒーラー)となれる。 そして本日、今この瞬間。俺ぐちつぼも治癒士の一員となり、この物語の主人公としてやっとスタートラインに立てた訳だ。波乱万丈な見習い研修、血の滲むような努力、自分の情けなさに呆れ濡らした枕。これまで大聖堂で過ごしてきた辛い日々が、走馬灯のように思い出され目頭が熱くなる。
「ぐちーつー!!」
「ぐちつぼ〜。」
しかし、そんなしんみりする暇もないまま、遠くから名前を呼ばれ振り向いた。同じく今日、ここを卒業したペんさんとらっだぁだ。貰ったばかりの【治癒士認定証】を2人して乱暴に振っている。
「ちょっとちょっと〜、あんま乱暴にするもんじゃないでしょこれ。(笑)」
「あ、そうだよね。ぐちーつ見つけて嬉しくて、つい……。」
「え〜別に減るもんじゃないっしょ。」
「いや、どう考えても減るもんでしょ。紛失なんかしたら職失うんだから。」
「はぁ〜い。」
「おいなんでだよ(笑)」
他愛もない会話をしながら俺たちは、王都を出ようと門へ向かっている。卒業後の進路、いわば就職先に行くためだ。就職先は各々の希望に沿って事前に決めることができ、大聖堂の上級治癒師たちがそれに伴って紹介状を送っている。そして卒業当日、ピカピカの【治癒士認定証】を見せに行くことで、俺たちは正式に働けるのだ。
「俺は湖近くの修道院だけど、2人は結局どこに行くんだっけ?」
「あ〜ぺんさん修道院長になるんだっけ。若くして流石ですわ!マジで尊敬するっす!」
「おいそれやーめーろ!もう…こっちは変な汗止まんないし不安で吐きそうなんだから……。」
「あ、俺はぺんさんと同じ修道院勤めにしたぜ。調合室に入り浸って、ポーション作りまくるわ。」
「……えッ!!!!ぐちーつ来てくれんの!?やっだぁ゛ぁ゛(泣)俺マジで院長とか怖くてさ、ぐちーついるなら平気だわ頑張れる!!」
「うぇーい、頑張ろう!」
「ちなみに俺もだけどね。」
「「え?」」
思わぬ人の合流に俺とぺんさんは驚いて顔を見合わせた。そして、辿り着いた答えはお互い同じなようで、少し前を歩くらっだぁに向かって走り出す。
「あれれ〜?フリーの治癒士やるから、修道院とか教会勤めは絶対しないとか言ってたの、どこの誰でしたっけぇ〜〜??(煽)」
「やっぱ寂しかったんだ?らっだぁさぁん、俺らの就職先絶対知ってたよね?ぼっちになるの嫌だったんだよねぇ〜??」
「はぁー??フリーになるにはまず組織に属して働いて、色んな学びを吸収してからのがいいかなーって思っただけですー。別にぼっちになりたくないからとかじゃないですー。」
いずれ別々の道を歩む時が来る。それを分かっていながら、少しでも同じ時を過ごせることに嬉しくなってしまった。そして、その気持ちが3人共通なのも、長年仲良くしているからこそすぐに分かる。大人びたらっだぁが俺たちを見守ろうと来てくれたのも、純粋に喜びつつぺんさんがほんとに来て大丈夫かと心配してくれているのも、つい肌に感じてしまう。そんな優しさに溢れた居場所があって、俺は心底良かったと思えた。口に出さずしまい込んでいた将来の不安は、気付かぬうちに溶かされていく。
(好きなことやろうと思えたのは2人のおかげみたいなもんだしな。いつか恩を返さねぇと。)
ちょうど門を出たところでぺんさんが歌い出し、周囲に誰もいないことを確認した俺も一緒に歌った。肩を組んで意気揚々とする俺らの後ろでは、らっだぁがくすくすと笑っている。治癒士としては沢山の人を助けることがお役目だが、俺としてのお役目はまだよく分かっていない。ただ、好きな奴らと過ごして好きなことやって生きてりゃ分かるだろう、という妙な確信はあった。その信念とこの居場所だけを大切に抱え、ポーション屋を開きたい男の治癒士人生が、今、始まろうとしている!
〇概要(人物設定)
ぐちつぼ
(治癒士だが薬学に特化、ほぼ錬金術師)
基礎魔法は人並以上に扱えるが、回復魔法が2人には劣っていて進路に困っていた。そんな時、薬学(ポーション関連も含む)の講義で衝撃を受け、やりたいことが出来る。
らっだぁ
(後にフリーの治癒士)
基礎魔法は人並以上、回復魔法は威力が普通で速度が異常。冒険者パーティの同行やギルドからの個人的な依頼、誰彼問わず治していた経験から、同時並行して魔法を扱うことと詠唱いらずになった。しかし、その掛け声は少々独特。
ぺいんと
(修道院長)
基礎魔法は人並だが、回復魔法は速度が普通で威力が異常。(※ 通常のヒールでベホマくらいの回復量がある)単体にのみ、損失部位の復活が容易く出来てしまう。その実力と人柄が評価され修道院長を命じられた。
→本編の世界線では蘇生術が禁忌かつそもそも使える者がいないため、ぺんさんの能力がかなり最高上位にある設定です。
王都、大聖堂
(治癒士に対してのみ)人遣いが少し荒く闇はあるが、ちゃんと良い人もいる。ぺんさんの能力が悪用されないよう施しをしまくって、田舎の院長を命じたのはその良い人の1人。らだぐちは色々あって王都、大聖堂をよく思っていないし、本編ではあまり行きたがらない。
またまたお久しぶりです、こんぶです。
ポーションクラフトというゲームが好きで、ぐちさんの配信を見てたのと自分でプレイしていたこともあり、最近創作して描き起こしました。また、3人ともGTAの世界で医者を経験しているので、その要素も入れられたらなと設定を念入りに考えてあります。漁師組合の世界もいいかな?って思ったのですが、長編になりそうなので咄嗟に取り下げました。これも短編にしたいなという思いで、ご本人様方のメタい部分と私の創作が入り交じる作品になると思います。相変わらず恋愛要素は皆無ですが、友情的てぇてぇ要素は過多かもしれません。読む際は諸々ご注意です。
(※)ここでの治癒士と治癒師
回復魔法を使う職業名的な意味では、「治癒士」らしいです。似てはいますが、治癒を専門的に特化して教授する側になる、聖なる祈りや神を信じ経験を重んじると「治癒師」になるらしいです。ソースが正確かは分かりませんが、そもそもファンタジー用語なので一応使い分けている、という感じです。
(※)ゲームのネタバレですか?
ストーリー的には多分ならないと思います。ポーション名とか効果など色々参考にはしますが、無理くり捻じ曲げていくので大丈夫なはずです。ご安心を、そして面白いので是非プレイしろッ!ください。