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■終着まではあなたと。(仮)
こんばんは、こんぶです。
本作品は、最初に補足を入れておきます。
〇概要(人物設定など)
ケインオー
本編では肌装甲、自分の名前やこれまでの記憶、色々思い出せないでいる。(ロボットであること含め記憶喪失)
レダーヨージロー(店長)
見知らぬ男性として、ケインと向かいあわせに座る人物。かなりのヘビースモーカーという設定。
最近、[レダーの帰国]を再度視聴したのですが、リアタイしていた頃を色々思い出しました。ケインとレダーの絡みは観ていて心地がよく、どこか温かい。そんな2人の関係性に、今思えば私はかなり魅了されていたと思います。大いなる捏造ではありますが、とにかく沢山お話しする短編を描きました。諸々注意してぜひ一読してみてください!
〈プロローグ〉
─────ガタンゴトンガタンゴトン
比較的静かに揺れる車内、恐らく旅行列車だろうか。レトロな内装でゆったりとくつろげるような座席、乗客たちはそれぞれの時を優雅に過ごしている。一方私は、自分が誰で何を目的としてこの列車に乗っているのか、清々しい程に記憶が抜け落ちていた。手には、一部文字が掠れて読めない乗車券と切符が握られている。頼りは、この辛うじて読める指定席の号車と座席の数字のみだ。
(とりあえず向かいましょう。このまま通路に立っていては、他の人の邪魔になってしまいますからね。)
ガタンゴトン
車両をいくつも移動し、自分の指定した座席へと辿り着く。先ほどまでの賑わいが嘘のように、この車両には乗客がいない。ここにいるのは自分と、向き合って座る見知らぬ男性のみだった。座る前に軽く挨拶を交わして、会話はそれだけ。お互い無言ではあるが、不思議と気まずさを感じることはない。ただ私は窓の外を眺めながら、この列車はどこに向かっているのか、奥に見える高層ビルが立ち並んだ街はどんな名前か。そんな行き場のない疑問を並べ、列車と時間の流れに身を委ねていた。
「煙草を吸いたいんだけどさ、副流煙とか気にするタイプ?」
「………いえ私は気にしませんが、ここは喫煙可能なのでしょうか。」
「この列車は、きっと何でもありだよ。」
突然話しかけられたのもあるが、何でもありという言葉に少々戸惑う。それが思わず顔に出てしまったようで、こちらを見た彼はふははっと笑っていた。ベストの胸ポケットから箱を取り出し、一本火をつける。何かから開放されたような、心底美味しそうな様子で彼は煙を吐き出した。ふと、テーブルの隅に追いやられた灰皿が視界に入り、彼の前へと差し出す。微かに目を見開いたと思えばすぐさま細めて、気が利くんだねと灰を落とした。このやり取りに妙な既視感を覚えたが、私は気の所為という言葉で片付ける。
「こうして一緒に長い旅をする訳だし、何か面白いことでもしますか。」
「突然ですね。…面白いこと、ですか?」
「うん、じゃあ俺が煙草一本吸うごとに一つのテーマについて話す。吸い終わったらその話は終わり、タイムリミット。どう?」
「なるほど。確かに面白いかもしれません。」
「だろ。お互い素性を知らないからこそ、話の展開が面白くなると思うんだよね。」
突拍子のない提案ではあったが、何もしないよりかは幾分マシだった。加えて、現時点で何も無い自分への刺激にもなるだろう。これをきっかけに何か思い出せたら、なんて考えていたが彼の煙草はジワジワと、すでに紙を焦がし始めている。
「そうだ、もう火つけちゃったんだ。えーっと、…どうしよう。」
「それは普通に吸うでいいんじゃないですか?」
「え、いいの?」
「私は構いませんよ。」
「じゃあ、これはカウントしないってことで。次から俺に付き合ってよ。」
「はい、気が済むまで付き合いますよ。」
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