──お店の外に出ていた、おすすめのお品書きが目に留まって、こじんまりとした京料理屋へ二人で入った。
「……いい匂い。どのお料理も、食べたくなりそうで」
並んで腰かけたカウンターの上には、大皿に盛られた京のおばんざいが幾つも置かれていた。
「少しずつ、みんな食べてみるのもいいかもな。日本酒もちょっと飲もうか」
「日本酒、いいですね。お料理と合いますよね」
辛口の升酒を頼むと、小皿に取り分けてもらったお惣菜に箸を付けた。
「わぁー、この里芋の煮っころがし、甘辛くてほくほくで、最高です」
柔らかく煮込まれた里芋を、お箸で割って口に入れると、その美味しさに思わずほっぺたを手で押さえた。
「うん、本当だな。こっちの揚げ出し豆腐も、だしが効いてて最高だ」
彼に言われて、揚げ出し豆腐を崩して食べると、柔らかな食感がじわりと口の中でほどけて広がった。