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#コメディ
篠宮真宵
272
「少しは寂しい?」
数年過ごした家をぼんやりと見上げると、フレデリックが声をかけてきた。
「別に」
「なんだ。じっと見てるから、少しは思い入れがあるのかと思った」
そう言って屈託なく笑う彼は、私の知るフレデリックではない。
初代である彼の名を受け継いだ子供だ。
彼の出現で、さらに混乱している。
血は争えない。
再来と言われるだけはある。
彼はフレデリックにとても似ていた。
そのマガイモである、レナ以上に。
いつか、この少年が自身とレナは似ていると評したことがあった。
彼女には理解できないようだが、私には理解できた。
祓い手としての能力に恵まれすぎている。
枠こそ人間だが、その中に抱え込むのはむしろ冥使に近い。
そのせいか、どこか冥使に共感を覚える節がある。
狩るだけの存在として、割り切れないのだ。
それは遠いフレデリックを感じていた事でもある。
だからこそ、私たちは隣に立てた。
人間の枠からも、冥使の枠からもはみ出した者。
それが、レナと二人のフレデリックの共通点だった。
けれどどんなに似ていても、彼はあのフレデリックではないのだ。
それでも似ている。
私はこの子が苦手だ。
傍らに立つレナを見やった。
彼女は私たちと違い、家を背に向けたまま頑なに振り返ろうとしない。
まだ幼さの残る横顔に、冷徹な面影が見える。
その冷ややかさに安堵。
彼女はこちらに来た。
央魔として。
「……”村”って、どんなところかしら」
最寄りのバス停まで歩く道すがら、レナがぽつんと呟く。
私たちは”村”へ向かうのだ。
「山奥ですよ。暗い森に囲まれた……」
「行ったことあるの?」
琥珀色の瞳が私を見上げる。
「随分昔に」
そう。
もうずっと昔、私はあそこにいた。
友人と共に。
「あーっ、バスもう来てる!」
前に行くフレデリックが声を上げた。
「二人とも早くっ!あれ逃したら、また一時間待ちだよ!」
大きなリュックを揺らしながら、小さなフレデリックが走り出す。
それにつられて駆け出したレナは、数歩で振り返った。
「ほら、行こ、アーウィン」
そう言って手を差し出すマガイモノに、何かを思い出した気がした……。
コメント
3件
第45話読みました。タイトルの「その後」がもうグッとくる…。アーウィンが「この子が苦手」って認めるあたり、彼女の中にまだあのフレデリックへの想いが色濃く残ってるのが伝わってきて切ない。 「似ているからこそ戸惑う」って感情、すごくわかる気がする。最後にレナが手を差し出して「思い出した気がした」で終わるのも余韻がすごい。続きが気になりすぎる…!