sh.side
「なぁ、今日入学式だって。どんな子来るかな?」
朝学校に向かう途中、一緒に登校していたきりやん…きいちに、そんなことを言われた。
(…どんな子、か。そう言えば須磨も今年高1なんだよな。あいつ、どこ受けたんだろ…)
なんて考えていたら、なかむこと水希が言う。
「俺ら1年とそこまで関わりないじゃんw」
「それに、俺にはしゃけがいるし〜!」
そう、俺はなかむと付き合っている。
「ちょっと、…..ばか、//」
……まぁ、きりやんにはバレてるから良かったけど…、なんて話しているときりやんが不貞腐れたような声で言う。
「俺にはいないの!彼女が!!あーあ、俺も彼女欲しいな〜!!!」
あ、そうだった、入学式の話だったっけ。
「1年に可愛い子いるかもよ?」
俺がきりやんにフォローを入れると、もの凄い顔で見られた。
(俺、何か変なこと言ったか…?)
考えていると学校に着いたので、俺は2人と別れて教室に入った。
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式典中は眠くなるから苦手だ、なんて言い訳でしかないけど。それでも落ちてくる瞼と眠気には逆らえない。
そんなことを考えているとタイミング良く「一同起立」の放送が入った。
(やっば、遅れる…!)
眠気のせいで周りに遅れを取りそうになったけど何とか堪える。それから新1年生と日の丸に向かって礼をした。
やっぱり須磨は別の高校かな…。
ちょっとだけ、期待していた自分を恨もうとしたその時、何となく視線を感じた。
その先にいたのは、須磨のそっくりさん。背丈も雰囲気も、眼鏡をかけている事も何もかも違うけど。
俺はあの子を須磨と重ねてしまった。
…….いや、あれが須磨、か…?!
確かに変わった所も多くあるが、……思い出せ、俺…!!
…….昔、俺と須磨が遊んでいた時に俺のいとこが届け物に来てくれたことがあった。当時白尾高校に通っていたいとこは、制服を着たまま鞄だけ持たず、代わりに届け物を持って家に来た。
その時俺たちは、いとこに向かって言った。
「「その制服、かっこいい!!」」…….
と、ここまで思い出して気付いた。あの時、あれから制服を着させてもらった須磨の姿とはっきり重なる。あの子…..あいつ、やっぱり須磨だ…!!
それから俺は、入学おめでとうの気持ちを込めてあいつに笑顔を送る。これからあいつと同じ高校なのかと思うと、本当に心の底から嬉しかったから。
…あぁでも、思い出すのに頭を使ったせいで眠くなってきた…。やっぱ入学式は眠くなっちゃうものなんだよ、
落ちる瞼と、その奥に須磨の少し赤くなった顔が見えた気がした。