テラーノベル
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部活終わり、練習を終えたやつから各自部室へと向かう。
ひとり体育館で自主練をしていた俺も、先生が帰る前に鍵を返さなければならないので、渋々練習をやめる。
部室の扉を開けようと近づけば、まだ話し声が聞こえてきた。
いつもこの時間まで残っているのは俺だけなのに。
ガラガラと一昔前の音を立てて扉を開ける。
「お!やっと終わったんか!」
声の主は銀島結(通称:銀)。俺と同様、2年の時には既にスタメン入りする程の実力の持ち主だ。
「なんや、まだ帰らんの?」
「侑のこと待ってたんだよ。銀とさ、ラーメン屋寄って帰るから侑もどうかなって。」
こいつは角名倫太郎。1年とき同クラでずっと仲良くしてる。他のやつに言えないような相談も全部聞いて貰っている。もちろん俺の好きな人の話も。
「すまんけど、今日は先客がおるんや」
そういうと銀の眉が少しさがったような気がしたので、 急いで「また今度一緒に行こな」とつけたす。
「じゃあ俺窓の点検してくるわ!」
窓の鍵が全部閉まっているか確認するのも最後の人の仕事だ。
銀が出ていったあと、少しの沈黙をやぶったのは角名だった。
「さっきのさ、先客ってまさか治さん?」
「な、ななんでわかったん!?」
「いや、なんとなく。いつもより念入りにシートで体拭いてんなって。」
いや、勘良すぎやろ。それだけでわかるか?普通。
でも、まあいつもより時間かけてたことは認めるけど。
「新作食べに来んかって言われてん。けどなぁ、行きたいけど、行きたない…」
「なんでさ?治さんに会うの嬉しくないの?」
そりゃ嬉しいに決まってる。けど…
「治の前だと素直になれんねん..だから、嫌われそうで怖いんや」
「まあしょうがないんじゃない?思春期だし。」
「他人事みないに言うなや」
「いや、実際他人事だし」
あと普通に緊張する。年上だからというのもあるけど、単純に好きな人だから。
それに、あのおに宮のオリジナルTシャツ。あれはやばい。現役時代に身についた筋肉(主に胸筋)で、いい具合に服が張って見えて、なんか、えろい。
(前、これを角名に言ったことがあったのだが、がっつり引かれた。)
この他にも、沢山治の惚れ話を聞いてもらい、いいところで銀が戻ってきたので帰ることにした。
─────
「じゃあ俺、こっちやから」
2人に別れを告げ、再び歩き出す。
10分程歩くと、おに宮が見えてきた。
近づけば近づくほど、店に入りたくなくなる。
だが、ずっとこうしている訳にもいかない。意を決して店内へと足を踏み入れる。
「いらっしゃいませー!」
元気なバイトさんの声。
このお店は、カウンターと厨房が一体化しているので、真っ先に治が目に入った。(他にもテーブル席や、畳もある)
「あ、店長ー、侑くんいらっしゃいましたよ!」
「おん、適当なとこ座らせといて」
治は一瞬こっちを見ただけで、また若い女性客との話に花を咲かせはじめた。
はぁ?なんやねん、あの態度。こっちは誘われたから来てあげてんのに!!もう知らん!
俺の指定席にしている、畳にテーブルが置いてある1番端の席にプンプン怒って座る。
俺がいつもここに座るのは、1番治が見えやすい場所だから。これは誰にも言えない秘密。
わがままなのはわかっている。治のアレは、いわば「営業スマイル」というもの。
治も好きでやっている訳ではない..はず。
でもムカつくもんはムカつくんや!!
「侑くん、何かたのむ?」
あの元気なバイトさんだ。
「水、お願いしてもええですか?治に新作の試食頼まれて来たんで、他は大丈夫です。」
「今持って来ますね、ごゆっくりどうぞ〜」
───
コト、とテーブルに水が置かれた。
ちびちび水を飲んでいる間にあの女性客は帰っていたようだ。気づいたら居なくなっていた。
ぼちぼち客足も少なくなってくる頃。
店にはまだ3、4人残っている。
だが、中にはさっききたばかりの人もいる。
これではあと1時間ほどは待つことになりそうだ。
「ふぁ、ぁ..」
食器の音や話し声をBGMにして、俺は眠りについた。
──────
───
「…む…侑!」
「んん…おさむ..?」
目を開けると目の前には治の顔があった。
「待たせてしもて、すまんな。最後の客が中々帰ってくれんかったんや。腹減ったやろ、なんか食べるか?」
まだ錯覚しきっていない頭を働かせる。
「…俺、新作食いに来たんやないの?」
すると治が少し申し訳なさそうな顔した。
「そんことなんやけどな、それ明日でもええ?時間も時間やし」
目線をずらし時間を確認する。既に午後9時をまわっていた。
「久しぶりのお泊まりやな。ゆっくり試食してもらえるしよかったわ」
は? ハ? ha?
お泊まり?いつ誰がそんなことすると言った?
「あれ、おかんから連絡こんかった?急に仕事入ったから、侑を俺ん家に泊まらせろ言うてたで 」
そんなん一言も聞いてへんし!
それに本当に泊まることになったら、家に帰る頃には人の原型をとどめていないと思う。
絶対に泊まってはいけない。
「明日学校やん、家おったほうええから帰るわ!」
「明日土曜日やで」
「お、俺おかんがおらんくても家おれるから帰る!」
「おかんもう家の鍵閉めてもうたらしいわ」
あと何か、なんでもいいから言い訳を..
「さ、明日も早いからはよ風呂入るでー」
会話は強制的に終了となった。
人生最大のピンチ、到来─
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コメント
7件
続き楽しみにしてました!次回も楽しみにしてます😆✨
今回もまじで最高すぎました! てかまじ治のあの大人の腹筋(?)がまじでエロいんはわかる。ていうな泊まりなんて…ッ!笑 500♡させてもらいました!次も楽しみにしてますッ😍