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あの夏が飽和する。

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2022年09月05日

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七月九日



日向「昨日人を殺したんだ」


『…え?』



「昨日人を殺したんだ」


君はそう言っていた


梅雨時ずぶ濡れのまんま部屋の前で泣いていた


夏が始まったばかりというのに君は酷く震えていた


そんな話で始まる




─────あの夏の日の記憶だ。








日向「殺したのは隣の席のいつも虐めてくるアイツ


もう嫌になって肩を突き飛ばして


打ち所が悪かったんだ。」




七月八日、烏野高校階段踊り場にて。



「日向って相変わらずチビだよな〜ᴡᴡ」


《確かに俺はちっちゃいけど…。だからって毎日毎日言う必要ないだろ!!》


「え、なに?ᴡ怒ってんの?ᴡ」


《ッッ〜〜!》


ドンっ






日向「もう此処には居られないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ。」



そんな君に僕は言った



『それじゃ僕も連れてって』




七月十日


財布を持って


ナイフを持って


携帯ゲームも鞄に詰めて



───いらないものは全部、壊していこう。



あの写真も


あの日記も


今となっちゃもういらないさ。



日向「…」


人殺しと


『…』


ダメ人間の


の旅さ。





そして僕らは逃げ出した。


この狭い狭いこの世界から



家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。



『遠い遠い誰も居ない場所で二人で死のうよ。』


もうこの世界に価値などないよ


『(人殺しなんてそこらじゅう湧いてるじゃんか)』


君はなにも悪くないよ



─────────君はなにも悪くないよ。









七月?日



結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。



そんな嫌な共通点で、


僕らは簡単に信じ合って来た。





君の手を握ったとき微かな震えは既になくなっていて、


誰にも縛られないで二人、線路の上を歩いた。





「コラァァァ!!」


日向「やべぇっ!!」


『走るよ翔陽!!』


金を盗んで


二人で逃げて




どこでも行ける気がしたんだ。



今更怖いものは僕らにはなかったんだ。




日向「あっづぅ………。」


額の汗も


『あ”…、眼鏡落とした……。』


落ちた眼鏡も



───今となっちゃどうでもいいさ。


日向「(あぶれ者の小さな逃避行の旅さ)」








『いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら、



汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな。』


日向「そんな夢なら捨てたよ。


だって現実を見ろよ。

シアワセの四文字なんて無かった。



今までの人生で思い知ったじゃないか。」



日向「自分は何も悪くねぇと



────きっと誰もが思ってる。」







?月?日



宛もなく彷徨う蝉の群れに


水も無くなり揺れだす視界に


迫り狂う鬼たちの怒号に


馬鹿みたいにはしゃぎあい


ふと君は



───ナイフを取った。



日向「君が今までそばにいたから、此処までこれたんだ。」



「だからもういいよ。



もういいよ。



死ぬのは俺一人でいいよ。」






















































────────そして君は首を切った。



まるで何かの映画のワンシーンだ。



白昼夢を見ている気がした。


気付けば僕は捕まって



君が何処にも見当たらなくって


君だけが何処にも居なくって。



















そして時は過ぎていった。


ただ暑い暑い日が過ぎてった。



家族もクラスの奴らも居るのに何故か君だけは何処にも居ない。



あの夏の日を思い出す。



僕は今も今でも歌ってる。





君をずっと探しているんだ。


君に言いたいことがあるんだ。



九月の終わりにくしゃみして



六月の匂いを繰り返す。



君の笑顔は


君の虚しさは


頭の中を飽和している。



誰も何も悪くないよ。


君は何も悪くはないから。




もういいよ。投げ出してしまおう。




そう言って欲しかったのだろう?













──────────────なぁ?















カンザキイオリ


あの夏が飽和する。



歌唱

鏡音レン

鏡音リン







end


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