七月九日
日向「昨日人を殺したんだ」
『…え?』
「昨日人を殺したんだ」
君はそう言っていた
梅雨時ずぶ濡れのまんま部屋の前で泣いていた
夏が始まったばかりというのに君は酷く震えていた
そんな話で始まる
─────あの夏の日の記憶だ。
日向「殺したのは隣の席のいつも虐めてくるアイツ
もう嫌になって肩を突き飛ばして
打ち所が悪かったんだ。」
七月八日、烏野高校階段踊り場にて。
「日向って相変わらずチビだよな〜ᴡᴡ」
《確かに俺はちっちゃいけど…。だからって毎日毎日言う必要ないだろ!!》
「え、なに?ᴡ怒ってんの?ᴡ」
《ッッ〜〜!》
ドンっ
日向「もう此処には居られないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ。」
そんな君に僕は言った
『それじゃ僕も連れてって』
七月十日
財布を持って
ナイフを持って
携帯ゲームも鞄に詰めて
───いらないものは全部、壊していこう。
あの写真も
あの日記も
今となっちゃもういらないさ。
日向「…」
人殺しと
『…』
ダメ人間の
君と僕の旅さ。
そして僕らは逃げ出した。
この狭い狭いこの世界から
家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。
『遠い遠い誰も居ない場所で二人で死のうよ。』
もうこの世界に価値などないよ
『(人殺しなんてそこらじゅう湧いてるじゃんか)』
君はなにも悪くないよ
─────────君はなにも悪くないよ。
七月?日
結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。
そんな嫌な共通点で、
僕らは簡単に信じ合って来た。
君の手を握ったとき微かな震えは既になくなっていて、
誰にも縛られないで二人、線路の上を歩いた。
「コラァァァ!!」
日向「やべぇっ!!」
『走るよ翔陽!!』
金を盗んで
二人で逃げて
どこでも行ける気がしたんだ。
今更怖いものは僕らにはなかったんだ。
日向「あっづぅ………。」
額の汗も
『あ”…、眼鏡落とした……。』
落ちた眼鏡も
───今となっちゃどうでもいいさ。
日向「(あぶれ者の小さな逃避行の旅さ)」
『いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら、
汚くなった僕たちも見捨てずにちゃんと救ってくれるのかな。』
日向「そんな夢なら捨てたよ。
だって現実を見ろよ。
シアワセの四文字なんて無かった。
今までの人生で思い知ったじゃないか。」
日向「自分は何も悪くねぇと
────きっと誰もが思ってる。」
?月?日
宛もなく彷徨う蝉の群れに
水も無くなり揺れだす視界に
迫り狂う鬼たちの怒号に
馬鹿みたいにはしゃぎあい
ふと君は
───ナイフを取った。
日向「君が今までそばにいたから、此処までこれたんだ。」
「だからもういいよ。
もういいよ。
死ぬのは俺一人でいいよ。」
────────そして君は首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンだ。
白昼夢を見ている気がした。
気付けば僕は捕まって
君が何処にも見当たらなくって
君だけが何処にも居なくって。
そして時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
家族もクラスの奴らも居るのに何故か君だけは何処にも居ない。
あの夏の日を思い出す。
僕は今も今でも歌ってる。
君をずっと探しているんだ。
君に言いたいことがあるんだ。
九月の終わりにくしゃみして
六月の匂いを繰り返す。
君の笑顔は
君の虚しさは
頭の中を飽和している。
誰も何も悪くないよ。
君は何も悪くはないから。
もういいよ。投げ出してしまおう。
そう言って欲しかったのだろう?
──────────────なぁ?
カンザキイオリ
あの夏が飽和する。
歌唱
鏡音レン
鏡音リン
end
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