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Rsli『全校放送で呼ばれた名前。』
Li視点
文化祭当日。
校内は人で溢れて、音と笑い声が交差していた。
「らいと、ちょっと飲み物買ってくる」
「はーい、迷子ならんでよ」
そう言って別れたのに。
五分後。
十分後。
戻ってこない。
「……遅すぎやろ」
その時。
――ピーン、ポーン。
《迷子のお知らせです》
校内放送が流れ、ざわっと空気が止まる。
《二年○組のロゼくんが、らいとくんを探しています》
一瞬の静寂。
次の瞬間、教室も廊下もざわついた。
「え、名前呼ばれた?」
「今の、ロゼだよな?」
らいとは顔を覆った。
「……最悪」
放送は、まだ続く。
《大変方向音痴なため、現在本人が迷っています》
「ちょっ……!!」
《心当たりのある、らいとくんは——》
一拍置いて。
《ロゼくんの“彼女”ですので、至急迎えに来てください》
らいとは固まった。
周囲の視線が一斉に刺さる。
「……あいつ、殺す」
放送室に駆け込むと、
マイクの前でロゼがにこにこしていた。
「来てくれた!」
「全校放送で何言っとるん!!」
「事実だよ?」
「言わんでいいやろ!」
ロゼは一歩近づいて、声を落とす。
「だってさ、俺迷子だし」
「らいとがいないと、戻れない」
らいとは小さく舌打ちして、
ロゼの腕を掴んだ。
「……ほら、行くよ」
「迎えに来てくれた?」
「うるさい」
でも、手は離さない。
廊下を歩きながら、
ロゼが楽しそうに言う。
「全校に紹介できてよかった」
「二度とやるな」
「次は迷子センター作ろうか」
「やめろ」
文化祭の喧騒の中、
二人の距離だけは、迷わなかった。
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