直接的な表現はありませんが、一部🔞を連想させるシーンがあります。苦手な方はお控えください。
「」葛葉
『』叶
葛葉side
「・・遅い」
俺はリビングでソファに座りながら1人ぼそっと呟く。
今日叶は大型企画の収録が終わり、その後打ち上げがあると言っていた。
遅くても23時頃には帰ると言っていたのに、0時をまわっても連絡一つない。
こんなふうに叶から連絡がないのは珍しい。
さすがに大勢でいるから叶の身に何かあったとかではないだろう、ただあまりにも遅すぎる、、気がする。
連絡してみるのも考えたが、今ちょうど盛り上がっていたら、、とメッセージを打ちかける手が止まってしまう。
先ほどから気晴らしにテレビを眺めるものの、全く内容が頭に入ってこない。
prrrr
そうこうしていると突然スマホが鳴り響き、俺はびっくりしてスマホを落としてしまった。
叶からだと思い、慌てて拾い上げ画面を見ると、叶からではなく、まさかの叶のマネージャーからの着信だった。
「も、もしもし」
マネ『あ!葛葉さん!遅い時間にすみません!今少しお時間大丈夫でしょうか、?』
「え?あ、はい」
マネ『実は今日打ち上げだったんですが、叶さんが酔いつぶれてしまって、、』
「え」
マネ『いやっすみません!突然こんなことで連絡して、、叶さんを家に送るためにタクシー呼ぼうとしてるんですが、叶さんが、”葛葉が来ないと帰らない!!”って仰ってて、、
葛葉さんにご迷惑だなと思って連絡するのも躊躇してたんですけど、いよいよ僕達も本格的に困ってまして、、』
「・・・」
マネ『無理矢理叶さんをタクシーに乗せることも考えたんですが、ご自身の住所を聞いても教えて下さらなくて、送ろうにも送れずでして、、』
「・・・・行きます」
マネ『ほ、ほんとですか?!葛葉さん関係ないのにわざわざすみません、、本当にありがとうございます、、、』
「いえ、別に大丈夫っすよ」
俺は電話を切り上着を羽織る。
・・何してんだ、あいつ。
俺は叶に呆れながらも、ほんの少し嬉しく思ってしまっている自分がいることに気づく。
玄関前の鏡を見ながらマフラーを巻いていると、やはり口元が少し緩んでいる。
いつもしっかり者でみんなから頼られる存在の叶が、ベロベロになって俺を呼んでいる。
なんだか叶に頼られているようで、俺にしか見せない顔を見せてくれているようで、少し嬉しかった。
マネ『無理矢理叶さんをタクシーに乗せることも考えたんですが、ご自身の住所を聞いても教えて下さらなくて、送ろうにも送れずでして、、』
マネージャーの心底困っているような声を思い出す。
叶が自分の住所を言わない理由は明確だ、到着した先に俺がいるからだ。
もしもスタッフが叶を送るためにタクシーに同乗した場合、叶の家のドアを開けたら俺が出てくることになる。
俺と叶は、左右は違うものの薬指に密かにペアリングをしている。たしかに最初につけて行った時は驚いているスタッフもいた。
だが、叶の『別に普通にお互い気にいったんで、買っただけですよ』という一言と、俺と叶のアクセサリーや服が被ったりすることはもともとよくあり、今となってはそこまで深く考えていないスタッフがほとんどだろう。
俺も叶も付き合っていることを公言はしていないし、仮にそう思われていたとしても、まさか同棲までしているだなんて夢にも思わないだろう。
酔いつぶれててもそこはちゃんとしてるんだな、と謎に感心しながらスニーカーを履く。
「・・ふっ」
静かに笑いながら、叶の分のマフラーも持ってマネージャーに言われた場所にタクシーで向かった。
(数十分後)
マネ『あっ!!葛葉さん!!本当に本当にすみません、、ありがとうございます!!!』
俺に駆け寄り、これでもかと言わんばかりに頭を下げる叶のマネージャー。
俺は大丈夫ですと言いながら、マネージャーの後ろに文字通り酔いつぶれて転がっている叶を発見する。
俺は叶の肩を叩きながら声をかける。
「おい、叶」
『んんぅー?・・くずは?』
「ほら、迎えに来たから、帰るぞ」
『くずはぁ、、来てくれたのぉ、』
「そーだよ、お前がうるせーから」
『一緒に帰ってぇ、、』
「はいはい、立てるか?」
『んぅ、、』
叶はちゃんと言うことを聞いて立ち上がるもののすぐによろけて転びそうになる。
「あーもうお前危ねぇなぁ、あ、大丈夫っすよ」
慌てて遠くから駆け寄ろうとするマネージャーを制し、俺は持ってきたマフラーを叶の首に巻いて、叶をひょいっとおんぶして店を出る。
そうこうしているうちにマネージャーが呼んでくれたタクシーが到着し、叶と2人で車に乗り込む。
マネ『本当にありがとうございます、、助かりました、、僕達が何言っても叶さん動かなかったのに、、、やっぱりすごいですね!』
「いや、別に、、むしろ迷惑かけてすみません」
マネ『お疲れ様です!!』
タクシーで俺の隣に座る叶は、俺と反対側の窓に頭をつけて寝ている。車が出発してから、俺はそんな叶の肩を引き寄せ、自分の肩に寄りかからせる。
スースーと静かに寝息を立てて俺の肩で寝ている叶。
自宅に着き、料金を支払ってまた叶をおんぶしてドアを開ける。
そのまま寝室に行き、とりあえず叶をベッドに降ろす。
叶のコートとマフラーをとり、外の匂いのする服をとりあえず脱がせて適当に部屋着を着せて布団をかける。
「・・ふぅ、これでいいか」
俺は脱がせた叶の服を持ち、洗面所の洗濯カゴに入れる。そのまま自分はシャワーを浴びる。
叶side
『・・んん、、え?』
目を覚ますと自宅のベッドの上に寝ていた。身に覚えがないが部屋着になり、布団までかけられている。
記憶を遡っても打ち上げ中の記憶しかない。僕は慌てて横に置いてあった自分のリュックからスマホをとる。
マネ『叶さんが酔いつぶれてしまって、葛葉さんをお呼びして叶さんの家まで送って頂きました、、叶さんからも葛葉さんにお礼を言っておいてください。今日は本当にお疲れ様でした!ゆっくりお休みになってください。』
・・まじか。やばい、、、
・・マネージャーはなんで葛葉を呼んだんだろう、もしかして、僕、、
嫌な汗が背中を伝うのがわかる。
もしかして、、僕、葛葉と付き合ってること、、言っちゃった、、か、、??
失言してしまった可能性を考え、冷や汗をかきながらベッドの上で座っていると、寝室のドアが開き葛葉が入ってきた。
「・・あ、起きた?」
『葛葉っごめん!僕!!』
「え?あぁ別にいいよ」
『・・迎えに来てくれたんでしょ?』
「あぁまぁ」
『・・あの、』
「ん?」
『もしかして、僕、、失言した?』
「失言?」
『だって、、なんで葛葉が呼ばれたのかなって、、』
「葛葉が来ないと帰らないってお前が駄々こねて、めっちゃ困ったお前のマネージャーから電話きた」
『ごめん、、』
「お前を1人でタクシーに乗せようとしたけど、お前頑なに住所言わんくて、送れなかったって」
『え、じゃあ、、』
「そう、失言してねぇよだから」
『あぁぁぁ良かったあぁ、、、、』
「ぷっ、あははは!お前結構気にしてんのな」
『だって葛葉が嫌がるかなって、』
「・・俺はもう別に、いーけど」
『え?』
「だって俺、みんなの前でお前おんぶして帰ってきたし」
『え』
「家からお前のマフラー持って行ったし」
『え』
「だから、なんかもうバレてんじゃね」
『・・ごめん、葛葉』
「いやだから」
『?』
「・・なんか俺のものって感じして、ちょっと嬉しかった、よ、ちょっとだけな」
『・・・』
「でも迎えに行くのだりーから、当分は行かねーからな」
『うんわかってる、ほんとにごめん、ありがと葛葉』
「てかお前、体調大丈夫なの?」
『うん大丈夫、お酒くさいしシャワー浴びてくるよ』
葛葉side
そう言って風呂場に行く叶。
さっき叶に言った言葉は嘘じゃない。
実際、みんなの前で、ぐでぐでながらも俺の言うことだけちゃんと聞く叶が可愛くて、愛しくてたまらなかった。
「俺の叶だ」ってみんなに言ってる気がして嬉しかった、だから、マネージャーの手を借りずにおんぶまでして帰ってきた。
叶のマフラーをわざわざ持っていったのも、、そういうことだろう。
・・俺がこんなことするなんて、、
まるで匂わせのような行為をしている自分に若干引きながらも、こんな俺にそこまでさせる叶という存在が恐ろしくなる。
『ふぅ〜上がったよ〜』
そんなことを考えていると、のんきな声で寝室に戻ってくる叶。
俺はベッドの上で胡座をかき、叶の方に両手を伸ばす。
『・・葛葉?』
叶は不思議そうな、それでいて少し申し訳なさそうな顔をしながらも俺の上に座る。
俺はそんな叶を両腕でぎゅっと抱きしめた。
「・・なんか俺、今日変かも」
『え?』
俺は先ほど1人で考えていたことを叶に話す。
叶は少しびっくりした顔で聞いていたが、嬉しそうに笑った。
「俺、自分が怖えーよ」
『ふふ、でも僕は嬉しいよ』
「やべーファンみたいになってる」
『いいじゃん、事実付き合ってるんだから』
「・・まぁ、」
『てか僕ほんとに変なこと言ってなくて良かった、、』
「お前、潰れてても案外そこはちゃんとしてるのな」
『・・覚えてないけど、葛葉の嫌がることは本能的に避けてるんじゃないかな』
「・・でもお前結構ひどかったぞ、俺が迎えに行った時」
『うそ、、』
「うん、くずはぁ来てくれたのぉってずっと泣いてた」
『・・キモすぎ』
「お前だよw」
項垂れて両手で顔を覆う叶の頭をポンポン叩きながら俺は笑う。
「・・でも、正直バレてもいいかなって俺、本気で思っちゃってた、わ」
『くろのわがビジネスじゃないって?』
「・・うん」
『・・珍しいね、ほんとに』
「俺やっぱ今日変だよなぁ」
『最初の頃なんか、葛葉が意識しすぎて逆に不自然な避け方してたのに』
「・・やめろ思い出すな」
『あれのせいでマネージャーに葛葉と喧嘩したと思われてさ』
「・・あったな、そんなことも」
『あれはあれで大変だったよ』
「たしかに」
『葛葉も変わったね』
「・・お前だろ、俺を変えたのは」
俺がそう言うと叶は一瞬目を丸くしたが、両手で俺の頬を包み、俺の目を見て言う。
『じゃあ、、もっと僕に溺れてよ、葛葉』
そう言う叶の目があまりに美しくて、あまりに色っぽくて、吸い込まれそうになる。
「あぁ、、、お前もな」
俺はなんとかそう答える。
『ふふ、僕はとっくに葛葉の虜だよ』
「・・ほんとに?」
『うん、葛葉しか見てないし、見えない』
「・・・」
『・・僕、葛葉の全部が欲しい』
そう言いながら俺にキスをする叶。
『ねぇ葛葉、、いい?』
叶のそんな言葉を聞きながら俺はベッドに押し倒され、頷いた。
おしまい
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