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床が軋む、軋んで壊れて落ちて落ちてそのまま地面に頭をぶつけてしまうんじゃないかというどうにもくだらない妄想を頭の中で繰り返すと肩を叩かれた。ぶたれるのだろうか。
「ねぇ〜〜〜、ねぇ〜〜〜ってばぁ〜〜」
呑気な声が後ろからした。そんな物体、さっきまでいただろうか??そう思いあの時横にいた物体に目を向ければ、面倒くさいという気持ちが浮き出ていた。
「うげっ、こいつ早速キメたな。はぁ…東根、こいつよろしく」
「助けが必要なのか!?おっしゃ!この俺に任せとけ!!」
そう言ってあやふやなことを言う物体を持ち上げた。いや、正確には担いだ。というのが正しいのか?まあ、どうでもいいか。
そうすると物体を担いだ物体はズンズン奥へと進む。一歩がデカいのか死に急ぎすぎるバカで一歩が早いのか、私には分からなかった。
「あー、ウザ。君もあのくそヤク中に変に絡まれる前に僕に助けられてよかったね。感謝してもいいんだよ?」
ニヤリ、そんな表現が似合うような気持ち悪い笑みを浮かべる物体に対して無言でいれば、物体は面白くないとでも言うかのように再び歩き出した。
しばらく歩くと、ゴーン、ゴーン。と音がした。
「な、何!?うぅ…なんなのよこの家・・・」
今にも泣き喚きそうなくらいに涙を目に溜めた弱い物体は嘆いた。
「うるさいな、嘆いてる暇があるなら早く歩けよブス。ほら、お前に出来ることは何も無いんだからさっさと立てよ。」
さっきまでずっと無口だった物体が弱い物体にそう言った。弱い物体は嗚咽をあげながら立ち上がって歩き始めた。
「・・・ねぇ、アンタ、この家に住んでるんじゃないの?なんか知らないわけ?それともガキすぎて何も知らない無能なの?」
よくもまあ、この物体もベラベラ喋るな。そう思った。出来ることなら今すぐにでも目の前の物体を、潰して剥いで引きずり出して砕いてボコボコにしてやりたかったけれど、その考えとは別に私の口は勝手に動いていた。
「・・・ただ時計が鳴っただけよ、それなのに泣き喚くなんて失礼ね。」
何も感じていないような私の声、まるで体の中にオルゴールのような機械があって、ゼンマイが回されることによって音が出ているような感じがして、中のオルゴールを取り出そうと吐きそうになった。
「・・・確かに、あのブスが勝手に驚いて勝手に泣いただけか。じゃあいいや。」
謝りもせず歩き出す物体に、コイツもあの物体が言っていたクソ野郎なのだと再認識した。
「ね、ねぇ…」
弱々しい声が聞こえた、まさかと思って内心顔を顰めながら、声のした方を見ると案の定そこにはさっきの弱い物体がいた。
「あ、貴方ここの住人なんでしょ…!?は、早くここから出してよぉ…!!」
バチンッ。乾いた音が辺り一面に響いた。見てみれば私の右手はヒリヒリと少しの痛みが感じられて、ああ、この物体を叩いたんだ。分析しながらも若干焦る頭とは別に、口は冷静だった。
「貴方、さっきからずっと五月蝿い。少し、黙ってて。」
そう言うと弱い物体は、あ、とか、え、とか母音だけを発している。
「ここは、私のお家。ここの主人は、私。主人の命令は、絶対。」
そう言うと弱い物体は溜まりに溜まった涙をついに床に汚く垂らした。床に目の前の物体の涙が染みていくのが目に見えて、汚れてしまった床がとても可哀想に感じた。
「あれぇ〜〜〜〜??真衣ちゃん、泣いちゃったぁ!アッハハハ!!!じゃあここで休もう〜〜〜!!」
「おいコラ柳!勝手なこと言っちゃダメだろ!」
キマっている物体を叱る物体、担がれている物体はその言葉を聞くとスン、とした顔で冷静に淡々と、周りを見ろよ。と言い放った。
「このままじゃどのみち、真衣ちゃんは使いものにならない、使えない無能は置いていくしかない。だって今の俺たちに足枷は一番欲しくないものだ。なら、足枷はここで置いていかなきゃいけない、それとも、お前はコイツを置いていくの?」
そう言うと先程まで叱っていた物体は言葉に詰まったのか、助けを求めたいのか、一緒に説得してほしいのか、早く死にたい気持ちでもあるのか、泣いてる物体を無言で見つめている2の物体に目を向けた。それに気づいた2の物体は目をこちらに一瞬だけ向けると、直ぐ様弱い物体に視線を戻した。
「俺はどっちでもいいよ、こんなブス、どうなったって知ったこっちゃない。」
「・・・まぁ、ここで人一人消えるのは惜しいし、少しくらいなら休憩しても良いんじゃない?」
そう言う2の物体に、いや、正確には休憩を勧めた物体に、そんなぁ、と、自分に味方する者はいないのだと分からせられた物体は、それはそれは弱い声をあげた。