テラーノベル
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相変わらずカラスバが家に帰ってくる日はまばらだった。
しかし、今日は珍しく夜遅くにドアが開く音がした。
疲れ切った顔で帰宅したカラスバに、シオンはそっと寄り添って少しだけ話をした。でも、
「お前も疲れとんやからはよ寝や」
と、いつものように軽くあしらわれてしまった。
『カラスバさん、おやすみのちゅーは……?』
布団に潜り込んだカラスバの肩を、ツンツンとつつく。返事はない。
ただスー…スー…と穏やかな寝息だけが部屋に響く。
『寝てる……早いなぁ…』
諦めて自分もベッドに滑り込み、カラスバの背中を見つめる。
今日は珍しく、こちらを向いてくれない。
広い背中が、壁のように遠い。
『余程疲れてるんですね……』
そう呟いても、心のどこかがざわつく。
腑に落ちない。寂しさが、じわりと胸を濡らす。
そっと、カラスバの背中にぴたりと体を寄せる。
───トッ、トッ、トッ……
少し速い鼓動が、背中越しに伝わってくる。心配が募る。
カラスバは幼い頃から体が強くないと言っていた。
色白で、いつもどこか儚げで──このまま倒れてしまいそうで、怖い。
『(色も白いし……このまま倒れちゃいそう)』
仕事を手伝いたいと言っても、「ダメや」の一点張り。
あんなに大変なのに、頑なに拒むのは、きっと自分を心配してくれているから。
でも、それこそ余計なお世話だよ。
『一緒に、居たいのに……』
カラスバのうなじに、そっと唇を寄せる。
小さなキスを落として、目を閉じた。
温もりが、ほんの少しだけ、心の隙間を埋めてくれる。
───1時間後。
『…すー……すー………』
「…………っ!!」
ガバッと体を起こすカラスバ。
ベッドから飛び起き、隣で眠るシオンを凝視する。
「(此奴ほんま危なっかしいやつやな……!」
右手でうなじを押さえ、顔が真っ赤になる
実は、シオンが「おやすみ」と言った頃から、ずっと目を閉じていただけだった。
寝息を装っていただけだった。
まさか、あんなにも可愛いことをされるなんて思っても見なかった
「(こっちの気も知らんで……)」
そっとシオンを横向きに寝かせ直す。
コロンと転がったシオンの顔が、月明かりに照らされて現れる。
〖一緒に、居たいのに……〗
「……オレも……同じ気持ちや……」
掠れた声で呟き、シオンの髪を優しく撫でる。指が、ゆっくりと下へ滑る。
小さな唇に触れる。
少し、乾いている。いつもリップを塗って、ぷるぷるに保湿していたのに 珍しい。
───ドッ、ドッ、ドッ……
「(……少しだけや。キスだけやから──)」
大きく鳴る自分の心臓を抑えながら、ゆっくりと唇を重ねる。
シオンの体温が、じんわりと冷たい自分の唇に染み込んでくる 。
甘くて、柔らかくて、愛おしくて───
「…は……っ」
唇を離すたび、息が漏れる。
シオンの体温が、胸の奥まで溶けていく。
布団を少しめくると、シャツが捲れ上がっていた。
健康的な肌が、誘うように覗いている。
ゴクッ、と喉が鳴る。
カラスバはシオンの上に体を少し乗せ、服の中に手を忍ばせる。
───ドッドッドッ……。
『…っん………』
小さな声が、シオンの唇から零れた。
「!!」
我に返る。
慌てて手を引き、服を直し、布団をかけ直す。息が荒い。
「っは〜〜…………オレはなんしようとして……」
大きく溜息をつき、ズルズルと倒れ込む 。
眠っているシオンにすら欲が出てしまうなんて──なんて男だ。
「……やっぱまだ、一緒に居るべきやないな」
小さく呟いた瞬間、足元で何かにつつかれる。下を見るとアチャモが怒ったようにカラスバの足を突ついていた。
「なんや、主人が襲われそうになっとったから怒っとんか」
アチャモは首を振る。でも、どこか悩ましげだ。
〖ヂャモォ………〗
「安心し、シオンの事は大事にしよう思っとるさかい」
〖ヂャヂャァ……〗
「仕事が落ち着くまでは会わんほうがええかもな……」
〖アヂャ!?ンヂャー!!〗
「痛っ!んな鳴いたらシオンが起きるやろ」
ドスドスッ!と怒り狂ったように突つくアチャモの首根っこを掴み、カラスバはリビングへ移動する。
「とにかく、仕事をはよ終わらさなな~…」
〖ヴヂャー……〗
ゲージに入れられたアチャモを眺めながら呟いていると、隣の部屋からシオンのリザードンとペンドラーが現れる。
「すまん、起こしてしもたか」
〖ギャピ♪〗
〖ギュア!……ギュッ!?〗
嬉しそうに顔を擦り寄せるペンドラーと、ゲージに突っ込まれたアチャモを見て驚くリザードン。
「最近、シオンは家ではどないしとん」
〖ギュ!?ギュア……〗
〖ギャピ…〗
〖ンヂャーッ!!アヂャーッ!!〗
気まずそうにする二匹を見て、カラスバの胸がざわつく。
金もある。何不自由なくさせているはずなのに……シオンは、幸せじゃないのか?
「なんかプレゼントでも渡すか……」
〖ンヂャ!!ヴヂャーッ!!〗
怒り出すアチャモを無視して悩むカラスバに、リザードンがキョロキョロと周りを見回し、あるものを指さす。
「ん?なんや時計……?」
〖ギュア!ヴルル…!!〗
「時計か……また行けそうな時に時計買っとくか…」
〖クルル……〗
〖ヂャーーッ!!アチャーッ!!〗
───それから2日後。
シオンの手元に、高級ブランドの腕時計が届いた。
『……え? なにこれ?』
〖ケッ……〗
〖ヴギュ……〗
呆れたようにペッと唾を吐く仕草をするアチャモと、申し訳なさそうなリザードン。
シオンは二匹と顔を見合わせながら、キラキラと輝く時計を見つめる。
よくわからないけど、カラスバさんが考えてくれたものなんだろう。
円盤に埋め込まれたピンクの宝石──きっと、自分の目の色を思って選んでくれたのだろう。
幼い頃、金銭面で苦労した人だから、高いものを渡せば喜ぶと思っている。昔から変わらない彼の価値観。
『別にそこら辺のでもいいのに……ふふっ、ほんと、優しくて可愛い人』
カラスバからの愛が、ぎゅっと詰まった腕時計を眺めて、シオンは笑った。
ユキは浮気してるなんて言うけど、記念日でもないのにこんな素敵なプレゼントをくれる人が、浮気するわけがない。
『でもこんな高いもの、普段使いできないじゃ~ん』
小さく笑いながら、箱から時計を取り出し、腕に着ける。
その顔は、幸せに満ちていた
そんなシオンに対しリザードンたちは顔を見合わせて、
〖とりあえず……結果オーライなのか……?〗
と、首を傾げた。
コメント
8件
学年末テストの勉強に追われていたらこんな多く投稿されてたなんて…!!!見るの遅れちゃいましたぁ…… アチャモめっちゃ可愛いです笑笑 ポケモンと人が話せたら良いのになぁ…、話せるポケモンもいるんでしたっけ!!
うーんカラスバの分かりずやヤナ… ペンドラー(カラスバの)教えたってよ!
思ったよりいっぱい上がっててびびったすげぇ!!