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気持ちが昂ぶっているから、足元がフラフラした。


雪斗に手を引かれて冬の街を歩いて……気が付けば雪斗の部屋のベッドの上で抱き合っていた。


もう何度もこうして触れ合っているのに、今夜は特別だと感じる。


「雪斗……大好き」


私はもう気持ちを隠さなくていい。


素直に想いを口にしていい。


そう思うと解放された気持ちになった。


だからか雪斗の唇と指先が少し触れるだけで、自分でも驚く位敏感に反応してしまう。


苦しい呼吸の中それでも雪斗の名前を呼ぶと、不意に身体を引き上げられた。


「あっ……雪斗?」


ベッドの上で向き合う体勢になると、雪斗はいつもより少し余裕の無い表情で言った。


「これからは他の男の事、考えるなよ」


「え……」


雪斗が真面目にこんな事を言うなんて初めてかもしれない。


冗談ぽくなら有るけれど、基本的に私の行動や思考に口出ししなかったから。


でも、その束縛の様な言葉が今の私には嬉しくて。分かってるって答えようとしたけど、それより先に雪斗が動き出したから、私は悲鳴を上げる事しか出来なかったのだった。




「美月もここに住めばいいだろ? 会社にもこっちのが近いんだし」


朝の食卓で、雪斗が機嫌良く言った。


昨夜は睡眠時間が少なかったのに、少しも疲れを見せないシャンとした顔。


私は寝不足と疲労で身体が重い。腰も痛いし。


でも、気分は晴れやかで明るい。


一緒に住むって話も昨夜とは違って、素直に聞ける。


「じゃあ、引越しする日を決めないとね」


「週末でいいだろ?」


「うん……」


怖いくらい幸せ。雪斗と付き合い始めた時、こんな風になるなんて思いもしなかった。


最初は半ば勢いで決めたことで、傷のなめ合いと体の関係だと思ってたのに。


これからは自信を持って言えるんだ。雪斗は私の恋人だって。




私たちは恋人になって、マンションで同棲を初めた。


クリスマスもお正月も可能な限り一緒に過ごした。


夢の様に幸せな一ヶ月。


その間、湊と住んだマンションも問題無く解約出来たし、もう心配事なんて無いと思った。


私は今度こそ幸せな恋をしているのだから――。




社会人の冬休みは少ない。


お正月気分はほんの僅かで、あっと言う間に新年が始まり、何事も無かった様に通常業務が始まって行く。


しかも休んでいた分、仕事は溜まってるから慌しい。


月末には展示会も有るし、やるべき課題が山積みだ。



「秋野さんも展示会のスタッフに選ばれたんだってね」


打ち合わせが終わり自席で一息ついていると、有賀さんがやって来た。彼も休憩中のようで手には、コーヒーのカップをもっている。


「はい、初めてなんで心配なんですけど」


「秋野さんなら大丈夫だよ。部長は駄目だと思ったらスタッフに選ばないしね」


「……そうですかね」


彼の励ましの言葉にも、自信を持ってはいとは頷けなかった。


私が選ばれたのは、きっと雪斗の推薦が効いてるんだろうから。自分の実力と胸を張って言えない。


「展示会場では休憩時間を交代で取るから、他社の製品も見れるよ」


「そうみたいですね、私は製品についてまだ詳しく無いのでこの機会に勉強するつもりです」


取り合えず前向きさだけはアピールする。


実際、最近の私はやる気に溢れている。


恋が上手くいっているせいか、仕事にも義務感以上の意欲が湧いて来る。


何ヶ月か前と比べると凄い変化だ。


「それに展示会は藤原と俺で取り仕切るから、気が楽でしょ?」


「あっ、そうですね」


「藤原には真壁さんが付くから、俺のフォローは秋野さん頼むよ」


「はい」


真壁さんと同じ役割。比べられると思うとプレッシャーだけど頑張ろう。



有賀さんはその後少し打ち合わせをしてから外出した。


私は社内で伝票処理や資料の作成を進める。


集中して作業をしていると、真壁さんが私の席にやって来た。


「秋野さん」


「はい」


真壁さんから近付いて来るのは久しぶりだ。あれから何かされた訳ではないけれど、どうしても警戒してしまう。


密かに身構えたが、真壁さんの用件は意外な内容だった。


「秋野さんに来客よ。一階の来客ブースで待ってるわ」


「来客?」


変だと思った。今日は誰かと会う予定は無い。


それにどうして受付担当ではなく、真壁さんが知らせに来るのだろう。


「早く行ってね」


気になったが真壁さんはさっさと自分の席に戻ってしまったため、取り合えず打ち合わせに必要なものを持って一階に向かう。


それにしても誰が来たんだろう。


名前くらい教えてくれたっていいのに。言い忘れたんじゃなくてわざとかもしれない。


「変なセールスだったら嫌だなあ」


エレベーターに他に誰もいないのをいいことに、愚痴を零しつつ、目的地に向かった。


一階の打ち合わせコーナーは予約なく使用できる。広いスペースに幾つかのテーブルが置かれていて、何組かが打ち合わせをしていて、機密性は無いけれど気軽に使える場所だ。


それらしい相手を探そうとしたとき、視線を感じた。


「……どうして」


私は動揺して呟いた。


奥まった席に一人で座っていたのは、湊の彼女の水原奈緒さんだったから。

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