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コメント
1件
魔王覇気の発動シーン、めちゃくちゃ印象に残りました。赤ん坊の体で最大魔力1なのにここまでの力が出せるって設定が面白くて、コントロール不能なのも納得。悪魔王メレスのキャラ変わりようも笑えたし、コメディと世界観のバランスが絶妙ですね。続き、どうなるのかすごく気になります!
第一章 第三話 「魔王覇気」
次の日───
ゴブリン達はいつものように働いていた。
人間界へ行っては食料や珍しい宝石等、いろいろとゴブリンの巣へと持ち帰ってきていた。
(私も早く人間界へ行ってみたいな)
しかしオルティマは魔王だった。
魔王が人間界へ遊びに行っても大丈夫なのだろうか。
そんなことを考えながら、今日も暇な一日を過ごしていた。
すると突然、一人のゴブリンが大慌てで騒いでいた。
「おい!悪魔王が来られるぞ!!」
それを聞いた他のゴブリン達も一斉に慌て出した。
「あ、悪魔王がくるなんて聞いてないぞ!」
「なんでだぁあぁあ」
「鎮まれい!」
長老ゴブリンが声を張り上げた。
「すぐに食事の準備、洞窟の清掃に取り掛かれ!」
その声を聞いた他のゴブリン達は、すぐさま準備に取り掛かった。
(悪魔王ってなんだ?たまにくる悪魔達のボスかな?)
オルティマは働くゴブリン達を見ながら悪魔王の存在が気になっていた。
(どんなやつなんだろ?もしかしてこの魔王である私より偉いんじゃ…)
頭の悪いゴブリン達が失礼なことをしないか、とても不安になってきていた。
__________
「悪魔王が来られたぞー!」
全てのゴブリン達が整列したあと、膝をつき、頭を下げた。
そして洞窟の外から、一人の男性が舞い降りた。
その瞬間、空気が一変した。
圧倒的強者が放つ邪悪なオーラがピリピリと洞窟中を駆け巡る。
整列したゴブリン達の中央で、長老ゴブリンが杖を手に持ち、出迎えていた。
「よくぞ、来られました。悪魔王メレス様」
「久しぶりだな。長老ゴブリンよ」
洞窟の奥でその様子を伺っていたオルティマは、悪魔王メレスをじーっと見つめていた。
その外見は、整った白髪で白い髭を生やした気品のあるおじいさんだった。
(人間じゃないのか?)
人間と変わらぬ姿で、上品な黒い衣装を着こなし、まるで執事のようだった。
「遥々こんなところまでご足労いただいて……。今回は、一体どのようなご用件で?」
長老ゴブリンの言葉は少し、警戒心があった。
悪魔王メレスは、この魔界で一番強い存在だからだ。
「心配するな。魔王であるオルティマ様へ会いに来たのさ。案内してくれ」
「そうですか!わかりました」
長老ゴブリンは嬉しそうに悪魔王メレスをオルティマのところへ案内する。
(まじかよ、私のところにくるの?やばくね?)
殺されるのではないかと不安になるオルティマだったが、産まれてまだ1ヶ月しか経ってないため、逃げることも、歩くこともできなかった。
カタッカタッカタっと悪魔王メレスが足音を立てて、徐々に近づいてくる。
(どうしよどうしよ!詰んだか??いや、あれを試してみるか!?)
悪魔王メレスと長老ゴブリンが目の前まで来た瞬間、オルティマは手を悪魔王メレスに向け、心の中で固有スキルである【魔王覇気】を唱えた。
「!?っ」
次の瞬間、オルティマの体から放たれたオーラがこの洞窟、いや、魔界全域に巡った。
(え、えぇぇぇぇぇぇぇええ!?)
全くコントロールできていないオルティマの魔王覇気は、洞窟内にいた全てのゴブリン達を気絶させ、目の前にいる悪魔王メレスでさえ、膝をつかせるほどの威力だった。
(……これが……魔王覇気!?)
最大魔力は1しかないのにも関わらず、この圧倒的な力を前に、オルティマは改めて魔王としての自覚が芽生えた。
(コントロールできないうちは、使わないようにしないと……)
すると膝をついていた悪魔王メレスがゆっくり立ち上がると不敵に笑い始めた。
「ふふふふ、ふははははははは!」
悪魔王メレスは笑い終わると突然、オルティマを抱き抱えた。
「なんて素晴らしい力!なんて素晴らしい姿!あぁ、まるで天使のように愛しいぃ」
(げっ!?なんだこいつ!キャラ崩壊してる!)
悪魔王メレスはでれでれの笑顔のまま、その顔を私の顔へと近づけてきた。まさか、チューでもする気なのだろうか。
(おい待てジジイ! 顔が近い! 45歳のおっさんにチューしようとするな! 呪うぞ!!)
私は短い手足をバタバタとさせて、全力でその顔を押し返した。
しかし悪魔王メレスは、オルティマを溺愛していた。
だが抵抗虚しく、まるで本当の親のように、オルティマの顔に髭だらけの顔をすりすりしてきた。
(おえぇっ!やめてくれぇえ)
先程使った魔王覇気のせいでMPは0になっており、急激な疲労と赤ん坊特有の強烈な睡魔により、またも眠くなってきた。
(このじじい……いつか……ぶん殴って……や…)
オルティマは不快な髭よりも眠気が勝ってしまい、一瞬で意識を失っていった。
「おや、眠ってしまわれたか。そんなにすりすりが嬉しかったとは」
悪魔王メレスは、そっとオルティマをふかふかのベッドへ戻すと、気絶している長老ゴブリンを起こした。
「……あぁ、わしはいったいどうなって」
悪魔王メレスは、寝ぼけながら起き上がる長老ゴブリンに、満面の笑みで一言。
「また来るぞ、長老ゴブリンよ」
悪魔王メレスは、翼を広げると洞窟から抜け、空高く飛び立っていった。
長老ゴブリンは、なぜ悪魔王メレス様が、あんなにニヤニヤしていたのか、少し薄気味悪く感じた。
「何が……あったんじゃ……」