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包まれるような体温と、その既視感に、雪乃は目を開けた。
気付けばチラーミィごと、抱き締められていた。
「…ごめんな、チミィ」
マッドショットを背中で受けながら、チーノは絞り出すような声で囁いた。
「…ちーら」
チラーミィは2人に挟まれながら、いつもの楽しそうな声とは違った落ち着きのある声で鳴いた。
まるで「大丈夫だよ」と優しく諭すように、土で汚れたチーノの顔をふわふわの尻尾で撫でた。
…大切なんだ。
雪乃は抱きしめられたまま、2人の絆を感じていた。
「そんなに大事なら、もう目離すなよ」
そしてチーノの体を押し返し、体を離しながらチラーミィを受け渡した。
「…分かってる」
チーノは俯き、ギュッとチラーミィを抱きしめた。
「ちらら」
受け渡した瞬間、チラーミィは振り返り雪乃を見た。
そしてふわりと、尻尾で雪乃の頰を撫でた。
「ありがとう」と言うように。
…優しい子。
こんな優しく子を、傷つけようとするなんて。
「ーーお前ら全員、ただで済むと思うなよ」
静かな怒りが、雪乃の周りを漂った。
それを合図に腰から下げたモンスターボールからエーフィが飛び出す。
「よっしゃ、加勢すんで!」
ロボロが腕を振り上げ、雪乃の隣に並び立つ。
「いや、大丈夫です1人で」
「なっ!?まだ言うかお前!!」
「危ないんで下がっててください、天の人」
「こっちのセリフや!てか、天の人ちゃう!俺の名前はーーー」
言い合いをしている最中、男子生徒たちは今だとポケモンたちに指示を出す。
真ん中の男もポケモンを繰り出し、3匹一斉に技が飛んできた。
「ラッタ!ひっさつまえば!」
「ベトベター!ヘドロばくだん!」
「ヘイガニ、バブルこうせん!!」
「エーフィ、サイコキネシス」
「パモ!でんこうせっか!ワンリキー、ちきゅうなげ!」
エーフィが飛来した技たちの軌道を逸らし、相手のポケモンたちを浮かび上がらせる。
浮かんで身動きが取れなくなった3匹に向かって、パモとワンリキーが突っ込んでいき、技を繰り出した。
技を受け吹っ飛ぶ3匹の先には、3人の男たち。
「うわぁぁぁあぁぁ!!!!」
後ろに吹っ飛んできた自分のポケモンたちに押しつぶされ、3人は倒れ込んだ。
「………2年1組柔道部、ロボロや。
気軽にロボロ先輩って呼んでもええで」
覚えとけ、と親指を自分に差しながらこちらを見るロボロを、雪乃は横目で見た。
「…覚えときます」
「ちららぁ♪」
後ろでチラーミィが楽しそうに鳴いた。
気付けば日が登っていた。