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𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸莉犬
ジェル君が入院し始めて早くも1週間が経った頃だった。
何となく、彼は青ざめていて体調が悪いように見えた。
一週間は、仕事をしている時や、食べに行く時とさほど変わらないような様子だった。
しかし、今日は何となく顔は虚ろで、全てを諦めたような。
そんな目をしていた。
莉犬「おはよ、ジェルくん…?」
俺は、話しかけてもいいのか分からず、
届くか届かないか曖昧な声で言葉を発した。
案の定、その声に気付かず、ジェルくんは1点を見つめてそのまま動かなかった。
まるで、人形のようだった。
一点だけを見つめる。その姿。
そして、人間のように気持ちがないように見えた。
中身がない、外見だけの人間。
まるで、化けの皮のようだ。
今まで見た事ない姿を見て、何となく不安になってくる。
莉犬「じぇ、ジェルくん、?」
今度は少し大きな声で話しかけた。
ジェル「…ん…?」
少し時間が経った頃、ようやく言葉を発してくれた。
莉犬「大丈夫、?」
莉犬「えっと、、ッ 」
莉犬「そのッ…」
これは最近の俺の癖。
入院してからというもの、すぐに言葉を発することが難しくなっていた。
別に何か、頭に問題がある訳でもなかったし。
生活に支障が出るほどでも無いため、
大丈夫だという医者の言葉を踏まえたとしてもやっぱり、
何となく普段話す自分からしたら、
これは大変なものだった。
原因は、心因的なものだろうとのことだった。
自分の発した言葉が、どうなるのか。
そう考えているのかもしれない。
もしくは、どこかのタイミングで声が出なくなるかもしれない。
それも心因的な理由になるだろう。
医者はそう言った。
心の問題は、100%そうだと断定することは難しい。
ある程度、
アンケートなどはあるが感性は人にもよるため確実なものだとは確定しずらいからだ。
莉犬「その、、なんか、辛い、?」
ジェル「別に…」
今度はすぐに返事が返ってきた。
莉犬「顔、真っ白だよ、?」
ジェル「寝不足なだけや…」
莉犬「でもね、でも、心配なの…ッ」
ジェル「平気やから…」
ジェルくんは、何を言っても全て否定をしていた。
莉犬「でもねッ…」
俺は心配で心配で仕方がなかったから、ジェルくんが納得してくれるように説得しようとした。
ジェル「うっさいねんッ…!!!!」
莉犬「ヒッ…」
さっきまでは無口だったジェルくんが急に大きな声をあげた。
ジェル「さっきからなんや?」
ジェル「顔色悪い?看護師呼ぼう?」
ジェル「大丈夫言うてるんやから」
ジェル「別にほっとけばいいやん!!」
莉犬「それはッ…」
ジェル「大体なぁ、なんで…」
その言葉の先を聞くのが怖かった。
莉犬「やめて…」
耳を塞いで何も聞こえないようにする。
そして、目をぎゅっとつむんで何も見えないようにした。
続きなんて聞かなくてもわかってしまう。
「なんで、莉犬なんかと同じ部屋じゃないといけないんだ。」
きっと、言葉の続きはこれなのだろう。
俺だって心は万全な状態じゃないわけで、そんな中でジェルくんが俺と同じ部屋になって。
最初はきっと、沢山気を使ってくれて…。
そんなこと、最初っから分かっていた。
部屋をシェアすると言っても、結局迷惑を掛けてしまうのは分かっていた。
分かっていた時に、そういえば良かった。
今更ながらに後悔をする。
しばらくすると、耳を塞いでも聞こえるような大きな音がした。
怖くなって目を開けると、部屋の中を荒す
ジェルくんがいた。
まるで昔の自分自身を見ているようだった。
莉犬「ジェルくんッ…なにしてッ…」
ジェル「うるさいッうるさいッうるさいッ
うるさいッうるさいッうるさいッうるさいッ
うるさいッうるさいッ…」
莉犬「痛いッ…ッ」
ジェルくんは、部屋の中にある棚や花瓶。
全てを倒して壊していった。
そして棚の中にある本などを俺に投つける。
そして、少しずつ俺に近づいてくる。
莉犬「やめてッ…近づかないでッ…ポロポロ」
莉犬「やめてッやめてッ…いやぁぁッ」
目の前には、手が血だらけになっているジェルくんがいる。
ジェル「俺をッ…俺を〇してくれッ…ポロポロ」
莉犬「やッ…!!ポロポロ」
今までの記憶がみるみる頭に蘇ってくる。
〇してくれと、毎日のように俺の部屋のドアを叩きながら泣いているお母さん。
包丁を持って、〇してくれと頼むお母さん。
あなたを〇す。
そう言って近づいてきたお母さん。
今までの全ての記憶がフラッシュバックしてきてしまう。
手が血まみれで、泣きながら近づいてくる。
その姿はお母さんにそっくりだった。
莉犬「いやあッ…やめてッ…やめてッ…」
莉犬「〇さないでッ…、やめてッ…ポロポロ」
ひたすら、近づいてくるジェルくんに謝り続けた。
ジェル「〇してくれへん…?莉犬…」
ジェル「俺、もう嫌やねん…」
ジェル「莉犬も…辛いやろ…」
ジェル「俺と…タヒなへん、、?」
ジェル「寂しくないで…」
魔の手がこちらにおいでと手招きしているようだった。
ずるずると下は沼のようで。
思ったように体は動かなくて。
真っ暗で、何も分からない世界。
莉犬「いやぁああぁぁぁぁぁあッ…!!!」
恐怖のあまりに泣き叫ぶ。
そして、近くに落ちている本をジェルくんに投付ける。
莉犬「やだッ…いやぁぁぁッ…ポロポロ」
莉犬「タヒにたくないッタヒにたくないッ…」
必死に願っていた。
看護師「ジェルさんッ…!!! 」
看護師「落ち着いてください!!」
看護師「莉犬さん、応援呼びましたからね」
看護師「もう大丈夫ですよ…」
莉犬「はぁひゅッ…はぁッ… 」
昔の嫌だったものが少しずつ思い出されていく。
ふたりが危険なことになったら私はお兄ちゃんの方を助けるわ。
そう言って、頭を下げるお母さん。
ごめんね。ごめんね莉犬…。
そう言って泣きながら家を出ていくお母さん。
壁を強くどんどんと叩く、借金取りのおじさん。
嫌な思い出が、滝のようにどんどん思い出していく。
俺はいつまで過去に囚われて生きるのだろうか。
そして、いつ俺は…
普通になれるのだろうか…。
コメント
15件
やっばすぎる まじさいこうです すき
ほんとに最高です🥲🥲🥲
(´;ω;`)