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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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#アクション
それから暫くしても、やっぱり変な感覚は抜けず。
覚悟を決めて、黒沢君のお兄さんから紹介してもらったクリニックへと向かう事を決意したのだが。
「であれば、俺が送るよ! 心配なのもそうだけど……少しでも不安を減らしたいって言うか。俺なんかでも良ければ、協力させて!」
相談させて頂いた黒沢君本人に、送迎してもらう事になってしまった。
そしてそして、なんとバイクに乗せてくれると言っていたのだ。
凄い、私リアルでバイク乗った事無い。
以前のイベントでoctopus8のサイドカーには乗ったけど。
多分今回は、ちゃんと跨って乗るって事だよね?
なんて、ちょっと違う意味でワクワクしていたのだが。
「馬鹿ぁ……私の馬鹿ぁぁぁ……」
休日の朝、クリニックの予約を入れたその日。
ものっ凄くいつもの、というか買い物とかに出る格好で外出する他なくなってしまった。
前にさ、デートがどうとか話してたじゃん。
なのに、滅茶苦茶普通の格好で出て来ちゃいましたけど。
私の私服、ダサい。
知ってる、物凄く理解してる。
だからこそ、彼とちゃんとお出かけする為には服を用意しないと……なんて、思っていた筈なのに。
どうして一つの事に思考が向かうと、他が雑になるんだ私は。
そんな訳で、朝になってから思いっ切り頭を抱え、諦めて集合場所に来たは良いものの。
もうアレです、病院云々の前に姿を見られたくありません。
そんな事を思いながら蹲っていると。
「し、白川さん! 大丈夫!? どうしたの!? 体調悪い!?」
コンビニの駐車場で縮こまっていた私の元へと、バイクがやって来たかと思えば。
視線を上げた先には、物凄く慌ててヘルメットを外している黒沢君の姿が。
え、ていうか、凄い。
二人乗りできるバイクだって聞いてはいたけど、ちゃんと大っきい。
スクーターってヤツ、だよね?
なんか、大人でも普通に乗りそうな格好良いヤツだ。
などと思っている内にも、相手は此方に駆け寄り助け起こしてくれた訳だけども。
不味い、最初からやらかした。
「す、すみません……違います、体調が悪い訳ではないんです。ただ……その、えっと……私がダサ過ぎるのが、原因と言いますか。こんな格好で隣に立ったら、黒沢君に恥をかかせてしまうのではないかと……」
ひぃん、とか泣きそうになりながら、どうにか言葉を紡いでみれば。
相手は、驚いた顔をしながら。
「え、と……? 大丈夫そうなら、良かった。あの、別に……変じゃない、よ? というか、私服の白川さん……可愛いと、思うけど……」
何やらポリポリと頬を掻きながら、視線を逸らす彼。
すみません、本当にすみません。
今度出掛ける時は、もう少しファッションというモノを勉強してから来ます。
そんな事を思いつつ、何度も相手に頭を下げていると。
「と、とにかく行こっか。えっと、コレ。ヘルメット、サイズが合えば良いんだけど。被ったら、後ろに乗って貰って良い?」
物凄く気を使ってもらっている感じで、予備? のヘルメットを渡してくれた。
見る限り、凄く真新しいけど……私が使っちゃっても、良いのかな。
などと思いつつ、頭を防御。
おぉ、凄い。
スポッて被るタイプのヘルメット、というか顔全体が覆われるヤツは初めてだけど。
こういう感じなんだ。
変な所で感動しつつも、彼の後ろへと座らせてもらうと。
「それじゃ、ちゃんと捕まっててね?」
「あっ、はいっ! 本日はどうぞ、よろしくお願いします……」
それだけ言って相手の身体に腕を回し、此方の身をくっ付けてみたのだが……コレ、ちょっと恥ずかしい。
というのと、黒沢君の背中は思った以上に広くて、前が全然見えない。
「そ、そ……それでは、えぇと……動き、ますね?」
「お、お願いします!」
何やら少々固い動きをする彼が再びバイクのエンジンを掛け、ゆっくりと走り出してみれば。
お、おぉ? おぉぉ?
前は見えないけど、周りは見える。
それでいて、ちゃんと“乗っている”と感じられる状態で進むバイクは。
結構……楽しいカモ。
エイトのサイドカーみたいに、妙に視線が低かったりもしないし。
乗物から伝わって来る振動や、進んでいるって感じは、お兄ちゃんの車の助手席では味わえない様な感覚。
自分で運転しろって言われたら、多分ビビるけど。
前のイベントの時、555と4cardの所に行っても結局お話をしただけでバイクの練習はしなかったのだ。
なんだか妙に周りの視線が多かったのと、用意されたバイクが無駄に大きかったので。
そんな訳で、最近の状態だったり、これから病院に行くんだっていう不安が徐々に薄れた様に感じるのであった。
自分でも思うけど、私って物凄く単純な人間だよね。
◆
「なるほどなるほど……これまでに、他のゲームでも似た様な症状が出た事はあるかな?」
「い、いえ! そういうのを感じたのは、全然……ない、です。ホント、今回が、初めて……と言いますか」
バイクに乗ってヒャッハーしていたテンションはどこへ行ってしまったのか。
メンタルクリニックとやらに着いてからは、物凄くビクビクしている私。
しかも、診察の時に付いて来てくれようとした黒沢君は途中で看護婦さんに止められ。
私一人でお医者さんとお話しているという。
この歳になっても、こんな事で緊張しっぱなしというのは如何なものかと思ってしまうのだけれども。
やっぱり、知らない人と喋るって物凄く緊張する……なんて、やっていると。
「少し緊張し過ぎな感じですね? 大丈夫ですよ、リラックスして。気を使ったり、気を張る必要はありませんから」
「す、すみません! 普段からこうなんです……すみません」
なんかもう申し訳ないくらいに緊張してしまい、何度も頭を下げてしまうけども。
これに対して、お医者様は困った様な笑みを浮かべておられる。
ちょっと若いというか、おじさんって感じはしない男の人。
だからこそ余計に緊張したというのもあるのかもしれないけど。
異性相手だと余計に、二人きりで話すという環境に慣れない。
そんな訳で、もはや帰りたくなって来たのだが。
「う~ん……話を聞いた感じだと、あまり問題無いというか。対処法だけ説明して、また違和感があったらおいで、でも良いんだけど。今の状態だと、本来の症状が聞き出せていない可能性が高いというか……」
「スミマセン……お喋り、苦手なので……」
もはや申し訳なくなり過ぎて、相手の前で普段より一回り小さくなった気分で俯いていると。
「こういうのは本来良くないんですけど、このまま帰してしまうのも心配ですから……少しばかり、緊張を解す様な会話から始めてみましょうか」
何やら不思議な事を言い始めた相手だったが、此方としてはもはやゴメンナサイしか言えなくなってしまうのですが。
メンタルクリニックって、こんなにお話するの?
症状を伝えて、お薬出しておきますねーっていう、普通の病院みたいだったらまだマシだったのだが。
ちゃんと話を聞きだそうとしてくれるのが、なんだか申し訳ない。
大丈夫そうだったら、本当に平気ですので。
このまま帰って、自分でどうにかしますので。
とか何とか、すぐにでも退室したい気分になってしまったのだが。
「白川 夢月さん、今やっているゲームは“ガンサバイブオンライン”。ここまでは、間違ってないよね? 他にもやっているゲームがあったりしない?」
「あ、合ってます……それ以外は、最近、全然っていうか……」
ニコニコしながら、此方に気を使ってくれているお医者様が問いかけて来る。
なので、どうにか声を返していると。
「それじゃもう一つ質問させてもらっても良いかな? 本当に、その“足の速い”キャラクターを使ってから、つまり“サブキャラ”を使ってから影響が出たんだよね? もっと前からじゃないんだね?」
「は、はいっ! サブキャラの前は、全然平気だったっていうか。本当にいつも通りで――あれ?」
相手の声に、反射的にそう答えてしまったけど。
私、そんな所まで話したっけ?
「だとすれば、やっぱり自らの身体的特徴に似せた事が原因みたいだね。これまで、他のゲームでは全然違う体格のキャラクターを使っていたのかな?」
「えと……はい、そうです。というか、あれ?」
私の気のせいというか、勘違い?
なんだか、此方が答えていない事まで相手が知っている様な……。
などと、首を傾げていると。
「もう少しリラックスしようか、“シックス”。私達は、既に顔を合わせているよ? 以前運営の顔合わせの際にね」
その言葉と共に、今一度しっかりとお医者様の顔を見上げてみると。
少しだけ、思い出したというか。
本当に最初期、顔合わせの時。
発言していたのがsevenと4cardって感じったので、あんまり記憶に残っていなかったけど。
確かに、見覚えがある男性だった。
多分普通のスーツを着ていたから、運営側のスタッフと見分けが付かなかったっていうのもあるけど。
「んなっ!? え、あのっ!」
「ハッハッハ、思い出してくれましたか? 改めて、自己紹介しましょうか。本日担当させて頂きました、“伊丹”と言います。そしてガンサバの方では……改名してから、“second”と名乗っていますよ」
「しょ、賞金首!?」
「こらこら、白川さん。現代において、しかもリアルで。そんな物騒な単語を叫ばないで下さいね?」
「すみません!」
黒沢君のお兄さんから紹介されたクリニックに、ガンサバの賞金首が居ました。
そりゃまぁ……VRに詳しいお医者様としてオススメしてくれるよね……。
コメント
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第82話、読ませていただきました! バイクに乗るシーンのワクワク感と、その後クリニックでの緊張のギャップがすごくリアルで、白川さんに感情移入してしまいました。「私の私服ダサい」って凹むところとか、可愛すぎます(笑)。そしてまさかのお医者さんがsecondだったとは…!思わず「えっ!?」って声が出ました。黒沢くんの「可愛いと思う」にも胸がときめきました。続きがすごく気になります🌷