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羊と亀のお遊戯会
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#四角関係
柿の木七味
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第四十三話 君のいない文化祭
「そこにいないはずなのに、君はちゃんとこの場所にいた。」
十月初旬。
文化祭当日。
朝から校舎は、生徒たちの笑い声であふれていた。
廊下には色とりどりの装飾。
教室からは音楽や歓声が聞こえてくる。
写真部も、展示室の最終確認をしていた。
「神崎先輩!」
一年生の陽菜が駆け寄ってくる。
「展示、全部終わりました!」
「ありがとう。」
壁には、部員それぞれが選んだ一枚。
その中央には、湊の作品――
『つながる心』
商店街で撮った、何気ない優しさの瞬間だった。
*
文化祭が始まると、多くの人が展示室を訪れた。
「この写真、好き。」
「なんか温かいね。」
「見てると優しい気持ちになる。」
写真の前で立ち止まり、感想を話す人たち。
湊は少し離れた場所から、
その様子を静かに見つめていた。
自分が伝えたかったものが、
ちゃんと誰かに届いている。
そのことが、何より嬉しかった。
*
昼休み。
蓮と美桜が展示室にやってきた。
「さすがだな、湊。」
蓮は写真を見つめながら言う。
「去年より、写真が優しくなった気がする。」
美桜も小さくうなずく。
「紬が見たら、絶対喜ぶだろうね。」
その名前を聞いて、
湊は少しだけ寂しそうに笑った。
「うん……。」
本当は今日も、四人で文化祭を回るはずだった。
そんな未来を、少しだけ想像してしまう。
*
その時。
スマートフォンが震えた。
画面には、紬からの通知。
《文化祭、始まった?》
そのあとに、一枚の写真が送られてくる。
留学先の学校。
写真クラブの展示会だった。
壁一面に飾られた写真の中に、紬の作品もある。
《今日はこっちも展示会なんだ。》
《離れてても、同じ日に写真を飾れるなんて不思議だね。》
湊は思わず笑った。
《こっちも頑張ってるよ。》
そして、自分の展示写真を撮って送り返す。
数秒後。
《やっぱり神崎くんらしい一枚。》
《いつか、この写真を直接見に行きたいな。》
その言葉に、胸が少しだけ熱くなった。
*
夕方。
文化祭も終わりに近づく。
来場者が書いてくれた感想ノートをめくる。
そこには、こんな言葉があった。
「写真なのに、人の声が聞こえてくる気がしました。」
湊は何度もその一文を読み返した。
写真で伝えたいと思っていたこと。
それが誰かに届いた。
その事実だけで十分だった。
*
帰り道。
夕焼けに染まる校舎を振り返る。
今年の文化祭も終わった。
去年とは違う文化祭。
紬はいなかった。
それでも――
写真が、言葉が、想いが。
遠く離れた二人を、確かにつないでくれていた。
湊は空へカメラを向ける。
カシャッ。
秋の空は、高く澄み渡っていた。
📷 Photo.043『離れていても、同じ一日』
撮影日:10月3日
会えなくても、
同じ空の下で笑っている。
そう思えるだけで、
今日という日は特別になる。
コメント
4件
そうなんです! 本当そうなんですよ! ならよかったです! こちらこそありがとうございます!
みぅです🤍🥀 「君のいない文化祭」、すごく沁みました。 紬が留学先から送ってきた写真とメッセージ、湊くんが「同じ日に写真を飾れるなんて不思議」って素直に笑えたところが一番好きです。離れていても、写真と言葉がちゃんと心をつないでる感じがして、胸がじんわり温かくなりました。 感想ノートの「人の声が聞こえてくる」って言葉、湊くんが表現したかったことが伝わってる証拠ですよね。また次も読みたいです🌙