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背後からざわめきが聴こえた。雑草を揺るがす風の集団だった。やがて雑木林の葉を鳴らし、耳元をうなりを上げて通過し、俺を越え、国境を越えて自由共和国側の雑木林の中へ、次々通り過ぎていく。
境界線上の雑草が、向こう側へとなびいている。
大木の陰の位置も大分ずれた。ここで順番待ちしているような俺を、あとからやってきた風がなぜ簡単に追い越せたのだろう。あんな簡単に境界線を越えて行けるのだろう。何も考えず、構えず、無心なままで。
でも、何といっても国境である。ここを越えればルールが違う。文化が違う。考え方が違う。歴史が違う。こっちにも、それなりの心の準備が必要だ。かつては青アザをあちこちにつけて乗り越えたところだ。一歩間違えば転げ落ちる、生死をかけた戦いが繰り広げられたところだ。悩み苦しみようやく乗り越えてきたところだ。