【今日は体調が悪いので少し休みます。】
【いいよ。最近ウイルス流行ってるもんね〜。気をつけてね。】
あの日から約2週間ほど空いた。その2週間の間で起こったことは、ほとんどこれまであった心霊となんら関係なかった。そして今日、本当はまた新しい心霊スポットに行く予定だったが、やっぱりあのことを深堀していきたいと感じた。
「…………」
てゆうか、警察はこの拉致事件について動いているのだろうか。
「………ません。」
入間さんはあんな悲しんでたのに…まぁ他のことで手一杯なのはわかるけどさ。さすがに…
「すみません! 」
「うわっ!」
声のした方向を向くと背丈がずば抜けて高く、目つきの悪いショートカットの女性が僕のことを見下ろしていた。
「あぁすみません。電車内なのに大きな声を出してしまって…。あまりにも気づかなかったのでつい。」
「僕の方そこすみません。気づかなくて…。僕なにか踏んでいました?」
「あーいえいえ、そんなことないんですけど…。スマホをつけたままぼーっとしているので、寝ているのかもと思ってしまって…すみません勘違いでしたね。」
外見とは異なりかなり内気なようだ。車内を見渡すと周りには誰もいない。ガランとした空間に男女2人。僕は沈黙がとにかく気まづくて耐えられなかった。まず他の席が空いているのになぜこの女性は窮屈そうに僕の前に立ってつり革を持っているのだろう。
「あの…なんで座らないんですか?」
徐々に苛立ってしまって、つい厳しい口調で言ってしまった。するとその女性は咄嗟に周りを確認し、僕に困惑した表情を見せた。
「え?そりゃあこれだけ人が沢山いたらさすがに座れませんよ…てゆうか座れるとこないし…」
「………?」
おかしい。周りをもう一度確認したが先程見た景色と変わらなかった。目を擦っても深く瞬きをしても何も変わらない。
「あの…この電車には僕と貴方しか」
<まもなく〇〇に到着します。お出口は…>
喋りかけた途端に電車のアナウンスが鳴り響いた。ガランとしているからかいつもよりも少し大きくはっきり聴こえる。あの人にはどのように聞こえているのだろうか。
車内アナウンスが鳴り終わった頃に、あの人がまた僕に声をかけた。
「今なんて言いましたか?すみませんアナウンスで聞こえなくて…」
「……いえ、何も言ってませんよ。それじゃあ僕はここなんで。」
「あぁ、はい…なんかすみません」
口を開く直前まで言おうか考えたが、言ったらその後あの人が恐怖を覚えることになると感じ取った為、やめにした。
荷物を手に取り颯爽と電車を後にした。電車からでた瞬間、謎の開放感があった。
ーーーーーーーーー
「来てくれたんだ。どうぞあがってあがってー」
僕はあの時と同じように、入場さんの家に行き話を聞きに来た。この間と同じように座布団に座り、彼女と向かい合うようにして座る。前はハーフアップだったけれど今日は下ろしている。そして、今日の煎餅はカリカリで少しあの煎餅の味が恋しくなった。
「…そういえば、入場さんの煎餅すっごく美味しいですよね…市販では中々見かけない形と味ですし…。どこで買ってるんですか?」
「え!美味しいかぁ…ちょっと嬉しいかも。これ実は手作りなんだ。 」
純粋な疑問に対し、首元を触りながら照れくさそうに話した。こうして普通の会話をするのも楽しいなと不覚にも感じてしまった。
「これ、妹と昔一緒にレシピ本見ながら作ったんです。楽しかったなぁ…」
「……あの」
「どうしたの?」
「……………………」
「えなになに?怖いよ〜」
「……後ろの人って知り合いですか?」
「え」
ドンッ
ーーーーーーーー
体が動かない。酷い頭痛だ。
「う…あぁ…」
声が掠れ自分の声じゃないみたいだ。
無理やり身を捩り、体を動かそうとしてみる
「くっ…〜〜〜!!」
足に激痛が走った。膝と足指に変な違和感を感じる。触ろうとするのも躊躇う程に。見ちゃダメだ、見たらさらに痛く感じると分かっていても確かめたくなりウズウズする。
「!これは…」
膝は腐った桃のようにグジュグジュとハエも飛んでおり、足先は親指と小指が切断され、ホッチキスやガムテープのようなもので不格好にとめられていた。血が流れ出ており、感覚がほぼ無くなっている。
「ーーーーーー」
奥の方から何かが聞こえる。女の人の声…
「ーーーーーー!!」
叫び声…?てゆうか意識が…ぼ…ん…や…r
「やっと会えたねずっと会いたかった」
「会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった」
ーーーーーーーー
「はっ! 」
頭が痛くない…足も…大丈夫そうだ。ここは…?うん入場さんの家で、ってあれ?
「入場さん…大丈夫?って」
向かいの座布団の上に、彼女は座っていなかった。周りを見渡しても、誰もいない…
「とりあえず、探しに行くか。家を出ないと!いやでも外は危ないか…でもあの人がいないと何故か落ち着かない。ていうかあの女の人は誰だったんだ…絶対やばいやつだっただろどう考えても!」
とりあえず家を出ることにした。家の中と時計は狂っていて、深夜の2時半を指していた。けど
「開かない…この感じ…あの時と同じ!あの廃校の時と全く同じだ……」
けれどあの時の感情とは全く異なり、落ち着きはあった。
「まぁいい。電気をつけよう」
こうゆう時って大体電気つかないんだよなと思いつつ微かな希望でスイッチを押した。
カチッ
「いやつくのかよ…」
なんか思ってたのと違うが…とりあえず部屋の中にいるか探ろう。あ、そういえば
「ちょっと前にディレクターに入場さんの家の間取り図を貰ったんだよなー…てかディレクターはなんなんだ?」
とりあえず、さっきの場所はいるだけで心が落ち着かなかったから他の場所に行こう。そうだ、2階にはまだ行ったことがなかった。入場さんには悪いけど、この際仕方ないな。
階段を上がろうとした瞬間何か嫌な予感がしたが気にせずに足を踏み入れた。空気はどんよりしていて、田舎特有の澄んだ空気とは全く違う煙たい空気が充満していた。燃えているのか疑う程。
「うっ…またあの匂い…腐敗臭のような…?これは…? 」
そこには【美香の部屋】と律儀に書かれた看板がかけられている扉があった。僕は迷わず扉を開けた。入場さんがいる。しかしそれ以外の人もいる。ディレクターだ。なんで…
「ゲホッ ゲホゴホ」
煙の原因がわかった。放火だ。入場さんが…美香さんが 燃えている。額の汗とパニックの汗が体中に垂れていく。とりあえずディレクターだけでも!
「ディレクター!立ってください!ディレクター!!」
返事がない。僕はディレクターを背負って家をでた。この際嫌な予感などどうだっていい。まずは自分の命が大事だ。
ーーーーーーーーー
〈ご乗車ありがとうございます。こちら〇〇線の〜〉
外は思っていたよりも明るかった。人が沢山居たから僕とディレクターはすぐに帰ることができた。放火の原因も夢の内容も、未だに未解決のままだ。美香さんの生死もまだわかっていない。けど、もうだめだと思う。体半分焦げてたら…さすがに。ね。悪運がいいのか、ディレクターにも僕にも特に目立った怪我はなかった。ディレクターは結局目を覚まさなかったから背負ってきたけど…眠っているだけだとわかり、ほっとした。もう時期秋になってくる。その時にはもう番組も終了するかな。
ため息をついた。もう、疲れた。
僕は眠っているディレクターの肩に頭を任せて眠りについた。
コメント
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ごめんなさい文ぐっちゃぐちゃで。でも全部結構伏線なので読解とか考察とかしてみてください😊