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コトン、コトンと人の歩く音がする。
あたりは暗くて、何も見えない。
そのため誰が歩いているのか、分からなかった。
少しすると後ろの方から足音が止まった。
あれ、もしかして自分…殺される?
そんな考えがよぎった次の瞬間。
ポンポン
自分より少し大きいぐらいの手が、私の頭を撫でた。
その手はとても優しかった。
「大丈夫」
声が聞こえた。
聞き覚えのある、優しい声。
ずっと、求めていたもの。
「気づくのが遅かったね」
「今までよく耐えた、もう大丈夫だよ」
この人からは夏の終わりのようなものを感じた。
自分では到底できない、優しさ。
この人の優しさに、嘘はなかった。
自分とは違って…。
「寒かったでしょ、これからは我慢しなくていいんだからね」
その言葉と共に地は崩れ、雨が降った。
雨が降っても太陽が優しく包んで、自然と寒くはなかった。
自分はその優しさに包まれて、意識を失った。
目が覚めた時、「大丈夫」と言ってくれた人がいなくて。
今自分がいる場所には太陽の光は当たらなかった。
雨も降ってなくて、ただどんよりとした空が広がっていた。
今の空間に優しいものはなく、明るくするための仮面だけが置かれていた。