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「しゅにーん!」
「はいはい、どうしたの?」
「主任の中学生の頃のこと教えてくださいよ」
「えー、んー。」
「わかった、じゃぁ先生が中学生の時に見た不思議な夢の話をしよう。」
俺が中学3年生の時。
勉強が終わってベットで寝た。
疲れていた為、直ぐに寝ることができた。
もう朝かな、と思って目を開けると。
そこは真っ白で、俺の知らないところだった。
その空間はとても寒くて、寂しい場所。
夢なら早く覚めてくれって頼みまくった。
つねったり、自分をビンタしてみたり、色々試したが全部無駄に終わった。
何をしても無駄だってわかったから次は歩いてみることにしたんだ。
どれだけ歩いたからわからなかったけど、歩いていたら突然
「あれ、君…こんなとこで何してるの?」
声をかけられた。
後ろを振り向くと、そこには小学一年生ぐらいの女の子が立っていた。
「…君、名前は?」
「お母さんとか、お父さんとか居ないの?」
こんなところに小学生が1人、きっと迷子に違いない。
そう思った。
でもなかなか的はずれなことを言い出した。
「私は迷子じゃないよ。」
「逆に君が迷子になってるんだよ。」
そう、迷子は女の子じゃなくて俺だと言う。
確かに言う通りだとは思った。
夢か現実かも分からない場所に、目が覚めたらいたのだ。
納得することが出来る。
「じゃぁ君…どうしてこんなところにいるのかな?」
それなら、迷子じゃないこの少女はこんな寒いところで何しているのか。
聞いてみることにした。
「どうして…んー。」
「私の世界、だからかな?」
「ていうか、君と同じ年齢なんだけど。」
「子供扱いしないでもらえるかな?」
「…は?」
容姿も声も小学一年生ぐらいなのに、同じ中学三年生というもんだから、驚いた。
「人を見た目で判断しちゃだめだよ。」
「先生に教えて貰えなかったのかな?」
「バカにするの、そんなに楽しいか?」
「ふふっ、」
さっきからバカにされてる、その時の俺はそう思った。
だから見た目1年生の女の子に怒鳴ったんだ。
「ふざけんのもいい加減にしてくれよっ!」
でも少女は動じなかった。
見た目も、喋り方も、まるで子供なのに。
対応が大人のすることだった。
何にも動じず、表情一つ変えない。
「…はァ。」
「君…鈴木弘世君って言うのかな?」
「だからっ───!」
「んぐっ」
口に人差し指の感触があった。
「シーっ」
「ダメだって。」
「感情的になっちゃ、ダメ。」
「全く。」
「でもそういうところもかっこいい。」
「はァ?」
色々ダメ出しされて、挙句にかっこいいとまで言い出した。
そこで気づいた。
「もういい、そんなことより帰る方法ないの?」
「帰るって、どこに?」
「元々の世界だよ」
「あー、それはね。」
「私の事、忘れなければ帰れるよ。」
忘れなければ、もしこれが夢であるならば必然的に忘れてしまう。
バカにされたことも、かっこいいって言われたこと、少女の凛とした姿も。
「わかった、分かったから帰してくれ。」
「…そう。」
「君がここを出たら、私は君のことを忘れてしまう。」
「なんで?」
「そうしないと耐えれないからだよ。」
「何に。」
忘れないと耐えれない、その言葉に俺は引っかかった。
だってその時彼女は…
苦しそうに笑っていたから。
「…」
「んー、内緒。」
子供のように、だけどやっぱり…どこか儚く寂しい笑顔で彼女は答えた。
「さ、着いてきて。」
「え、どこ行くの?」
「どこって、帰るにはドアから行かなきゃダメだから…そこに案内するんだよ?」
「あ、あぁ。」
「なにか期待した?」
「ここは帰るためのドアしかないから期待してもな〜んにもないよ。」
「わかってるって!」
きっと気のせいだろう。
俺はそう思うことにした。
ドアへの道のりは、ただシーンとしていて。
彼女も俺も喋らなかった。
そこからいくらかして、ドアが見えた。
「あれがドアだよ。」
「開けて通れば多分朝になってると思う。」
「そう。」
「じゃ、帰るわ。」
「うん。」
「また、会えるのを楽しみにしてるね。」
「…もう会わねぇよ。」
「アハハ、そうだね。」
「…気をつけて。」
「おー。」
また会える。
俺はその時思ってなかった。
でも気になって、足を1歩踏み入れたところで後ろを振り返った。
するとそこには…
「ッッッ…」
「…!」
声をこらえて涙する、彼女がいて───
俺は目が覚めた。
「その後は?」
「残念ながら、夢の中で会うことは無かったよ。」
「へぇ…」
「おはようございます。」
「…!」
「…先生?」
「主任?」
「あ、いや、なんにもない!」
「”スカーレット”おはよう」
「はい。」
「どうしたんですかきゅーに。」
彼女とはまた、きっとどこかで会える。
「ううん、あ、ほら、もうすぐチャイムなるよ。」
「うわっ、主任ありがとうー!」
「いいえー、」
俺はそう信じてる。
きっと彼女もどこかで…
「ほらもうすぐ時間だから座っとこー!」
「そうだね〜」
「じゃぁね、」
「…。」
(スカーレットって…)
泣いてないといいな。
「気のせいかな。」